自分の歯は抜かれたくないですよね

だれしも自分の歯は抜かれずにいたいし、一生自分の歯を使い続けたいと思っているはずですよね。
しかし、無症状なのに健診などを受けたときに 「歯を抜かないとダメかもしれない」 といきなり言われる可能性もあります。

例えば歯の神経を取った歯は、神経がある健康な歯に比べ膿が溜まりやすいという統計結果があります。
(この場合の「膿」とは専門用語では「病巣」というものですが、イメージしやすいように便宜的に「膿」という言葉で説明します。)
(ちなみにここでいう「歯の神経」は専門用語では「歯髄」といいます。)
その膿みは症状がまったく出ないまま大きくなってしまい、ある程度大きくなってしまうと 「歯を抜かないとダメかもしれない」 という事になってしまうかもしれません。

ではどうすればそうならずにすむのでしょうか?

歯の神経を取らなければ膿みも溜まりにくいのです。
それならば神経を取らないようにすればいいのですが、
むし歯が神経まで進行してしまうと激痛の恐れがあるため、
むし歯が進行してしまってからでは、歯の神経を取らなくてはなりません。
裏を返せばむし歯にならなければ、歯の神経を取らなくてすみます。
だから、むし歯にならないように、むし歯予防をしておけばいいのです。

・・・・・・というのは、あくまでも理想のお話です。

成人の方ならもう既にむし歯になったことがある方やむし歯の治療をしたことがある方がほとんどではないかと思います。
さらに進行したむし歯があればすでに歯の神経がない歯もあると思います。
(結構、歯の神経を取った事実を知らない方や忘れてしまった方もたくさんいらっしゃいます。)
そうなると、膿が溜まってしまうリスクがあることになります。
知らず知らずのうちに進行して膿が大きくなってしまい、最悪の場合抜歯をしないと治らない場合もあります。

そんな事態になることは、ご本人も嫌でしょうし、我々歯科医療従事者も避けたいところです。
ではそうならないようにするにはどうすればいいのでしょう?
順番に説明します。

第1段階です。
むし歯にならなければ歯の神経を取ることはかなりの確立で回避できるため、まずはむし歯予防が大切です。
むし歯予防の方法はいろいろありますので、主治医やかかりつけに歯医者さんに相談するといいと思います。
それでもむし歯ができてしまった場合は

第2段階です。
大きなむし歯になる前に処置をしたほうが良いです。
そして処置した歯にまたむし歯が再発しないよう、ここでも虫歯予防が大切になってきます。
歯を治療しても安心せず、第一段階に戻って虫歯予防を継続してください。
でも、うっかりむし歯が歯の神経の近くまで進行してしまった場合は

第3段階です。
できる限り歯の神経を温存する処置を施します。
その結果、歯の神経が温存できればここでも第1段階に戻って虫歯再発の予防を行います。
しかし、不幸にも歯の神経が温存できなかった場合は

第4段階です。
残念ですが歯の神経を取る処置を行う必要があります。
更なる感染の防護をした状態で、きれいに歯の神経を取って、
神経を取ったあとにできた空洞をしっかりと消毒をして、
ばい菌が入り込まないようしっかりとパッキングをし、
それによって膿が溜まるのをできるだけ予防します。
ここまで処置が終わったら、またむし歯の再発をしないように第1段階へ戻ってむし歯の予防を行います。
でも残念ながらここでどんなにしっかり処置をしても、膿が溜まることを100%防止することはできません。ある程度の確立で膿が溜まってしまうことがあります。
もし、膿が溜まってしまった場合には

第5段階です。
神経を取った後にできた空洞にパッキングをした薬を取って、再度膿を無くすべく消毒を行います。
つまり、第4段階の処置をもう一度行います。
ここでの消毒が奏効すればもう一度パッキングをして第1段階へと戻ります。
残念ながらこの処置でうまくいかないときは

第6段階です。
歯肉から切開をして溜まった膿を取り除く外科処置(局所麻酔の手術)を行います。
今までのこの手術の成功率は50%台といわれていましたが、この時に歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)を使用して処置をすることによって90%以上の成功率を達成することができるとの研究結果があります。
この手術が成功すれば、抜歯を回避することができます。そして第1段階へ戻ります。
しかしながら既に、この手術ができるような状態・症状の場合は

第7段階です。
残念ながらここまでくると抜歯しかありません。自分の歯を失ってしまいます。
この段階に相当するものが
むし歯が進行しすぎて歯がボロボロになってしまっている場合。(歯の神経を取っているとむし歯が進行しても痛みを感じないため、気がつかないうちにボロボロに
なってしまうこともあります。)
歯の根が折れてしまっている場合。(骨と違い歯は折れてしまうと、つくことはありません。)
手術でも取りきれない膿が溜まってしまった場合。(歯ごと抜いて膿を取り除かないといけない場合です。)
などがあります。

ここで話しは最初に戻りますが、無症状のまま第7段階になっているときは 「歯を抜かないとダメかもしれない」 と言われてしまいます。
果たしてあなたはどの段階の処置を受けたいと思いますか?

一生自分の歯を使い続けていくために、より初期の段階の処置を受けるよう歯医者さんへ相談してみましょう!

クリーンでドライなラバーダム防湿法

ラバーダム防湿法というものをご紹介します。

治療をするときにゴムのシートをかけて目的とする歯だけを露出させしまう方法です。

ラバーダム防湿法を行うメリットとしては

・唇や頬、舌を保護するため、歯を削るドリルから守ることができる。

・薬品や消毒薬の漏洩を防止できる。

・唾液の混入を防ぐことができるため感染予防ができる。

・ゴムのシートで水分をブロックして乾燥した状態を作ることができる。

などで、またそのほかにもさまざまなメリットがあり、治療を行う上で必要なときが多々あります。

口を開いたときの写真です。通常この状態でしか治療を行います。by栃木県日光の歯科、沼尾デンタルクリニック 

上の写真がそのまま治療をするとき、下の写真がラバーダム防湿法を行ったときのものです。

ラバーダム防湿を行って、確実な治療を行います。by栃木県日光の歯科、沼尾デンタルクリニック

下の写真はラバーダム防湿を行った歯の部分を拡大して撮影したものです。治療をする1本の歯を隔離することにより、上記のメリットが有効に働き治療効率や予後などにいい効果をもたらします。

ラバーダム防湿をした歯の拡大写真です。唾液の混入や薬剤の漏洩も防止でき視野も確保できます。by栃木県日光の歯科、沼尾デンタルクリニック

歯科用マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)や歯科用ルーペ(歯科用拡大鏡)を使った治療のとき、また歯の神経の部分を治療する根管治療などをするときに多用しています。

マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)で歯が割れているところを見て、更に録画してみました。

顕微鏡をつかって小さな歯を大きく拡大して、細部までよく見た状態で治療をしていくことが顕微鏡歯科です。
顕微鏡歯科の詳細はこちら→ 「顕微鏡歯科のススメ
そのときに使う歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)にはCCDカメラが搭載されており、術者が見ている映像をそのままカメラに収めることができます。それを録画することも可能です。録画しておけば治療後に自分の歯がどのような常態になっていたかその動画を見て確認することができます。まさに「百聞は一見にしかず」です。
実際に当院で治療した患者さんの動画で説明をしてみます。患者さんには動画を使用することに対して快く承諾をしていただきました。
これは歯肉が腫れてきたために当院に来院した方です。歯肉は腫れており膿も出ていました。レントゲン診査で中に膿がたまっているのも確認できたため根の治療をするべく原因となっている歯の銀歯をはずしていくことになりました。銀歯をはずす前に歯が割れている可能性もあることもご本人へ説明してありました。

肉眼では見えない細部まではっきりと見ることができるのが顕微鏡(マイクロスコープ)のメリットです。
そのため小さな歯の小さな病変やむし歯まで見逃す可能性がぐっと低くなります。
(栃木県日光市の歯科 沼尾デンタルクリニックで実際に行われた治療例です。これらの写真は患者さんご本人の承諾を得て公開させていただいております。もちろん個人を特定できるものは一切掲載しておりません。)

顕微鏡歯科の実習セミナーに参加してきました。

顕微鏡歯科とは歯科用の顕微鏡(歯科用マイクロスコープ)を使って対象となる歯や歯肉を大きく拡大した視野の中で治療や処置を行うことです。
倍率は機械にもよりますが5倍から30倍まで拡大できます。小さな歯をそこまで大きくして治療することは、肉眼より正確な治療をすることが可能となります。
そのためには拡大した視野の中で治療を行うのですが、そのためにはやはりこのようなトレーニングが必要となってきます。
ここは顕微鏡歯科の治療トレーニングができる実習室です。東京にあるメーカー本社の一室にあります。
ここで神奈川歯科大学の石井教授に1日中、講義と実習を行っていただきました。
歯科用顕微鏡(歯科用マイクロスコープ)がたくさんある実習室で、大学教授のレクチャーを受けます
歯科用顕微鏡(歯科用マイクロスコープ)がたくさんある実習室で、大学教授のレクチャーを受けます。教授の治療が映し出されます。
石井教授にいろいろな質問をすることができ、最新の情報などを得ることができました。
マイクロスコープの実習ももちろん有意なことでしたが、
大学教授という専門医の最前線で研究や診療において日々仕事をしている人に、色々な質問をぶつけられたことは非常に勉強になりました。
今回のセミナーでも得たことはクリニックへフィードバックしていきます。

顕微鏡歯科のススメ

顕微鏡歯科というものはご存知でしょうか?マイクロスコープや手術用顕微鏡などとも言われています。
その顕微鏡歯科についてセミナーを受講してきました。講師は顕微鏡歯科学会副会長で東京で開業されている三橋純先生です。
よくテレビでスーパードクターと紹介されすばらしい手術をしている映像などを見かけることはあるかと思いますが、そこで手術をしながら覗いているものが手術用顕微鏡です。血管などが細かく入り組んでいるところは顕微鏡で見ながら丁寧に手術をやって、必要最小限な部分だけを切除することができます。
それと同じように顕微鏡を見ながら細かい歯科治療を行うことが顕微鏡歯科です。顕微鏡を使用することによって肉眼では見ることのできない細かなところまでよく見ることができます。
たとえば人間の歯は約1cm四方しかない小さなものです。そこに小さなむし歯ができたり、小さな歯石がついたり、歯にヒビが入っていたりなどの状態になった場合でも、肉眼では確認することができなかったそれらが、顕微鏡だと見えて確認することができます。確認したものに対して顕微鏡を見ながら必要最小限で適切に処置を行うことによって、肉眼では不可能なレベルの早期発見早期治療が可能となります。更にレベルの高いミニマム・インタベーション(MI:最小限の治療という意味)が実現可能となっています。
顕微鏡のもう1つのメリットは、CCDカメラが装備されているので動画としてモニターに映し出すことができたり、録画することが可能となります。それによって今まではドクターしか見えなかった治療最中の状況がそこにいるスタッフや患者さんなどへ見てもらうことが可能となり、医療サイドのチームワークの向上や患者さんが治療内容を把握しやすくなるとのメリットもあります。当院ではまだモニターの設置を行っていないので今後対応していく予定です。

外傷を受けて歯が折れたり抜けたりしたときはどうする?

転んだりぶつけたりして、不運にも歯を折ってしまったり歯が抜けてしまったときは非常に驚くと思います。

そんなときにはどうすればいいでしょう?

まずは抜けてしまった歯や折れてしまった歯の一部を見つけてください。

そして見つけたものは汚れていても水で洗ったりしないでください。

できれば牛乳の中にその見つけた歯を入れて、できるだけ早くに歯科医院を受診してください。

牛乳がないときは生理食塩水でも可能です。それもないときはサランラップに包んで持ってきてください。

そんな歯の外傷に対する対応と診断・処置方法について世界外傷歯学会の現会長でもある月星光博先生よりレクチャーを受けてきました。

歯の外傷に対する対応と診断・処置方法について世界外傷歯学会の現会長でもある月星光博先生よりレクチャーを受けてきました。

今までもそのような歯の処置を行ってきましたが、今回は歯や歯の神経を保存する方法をいくつか学んできました。

その中には私は知らなかった処置方法もあり、これからは今まで以上に歯を保存していくことができると思います。

できることなら歯が折れたり抜けたりすることは避けたいものです。

スポーツをするときにはスポーツマウスガードを装着しておけば、歯の外傷はある程度は予防してくれます。

まずは怪我をする前に予防として、自分の歯を守ってみませんか?

テレビ東京「カンブリア宮殿」に栃木県にある手術針メーカーの社長登場

平成22年1月25日の夜10時からテレビ東京で放送されるカンブリア宮殿という番組に「マニー」という医療メーカーの社長松谷貫司氏が登場します。

地元栃木県(宇都宮市・塩谷郡高根沢町)にある会社ですが手術針で日本国内や世界のトップシェアを持っている会社です。

手術のときに縫う針のほかに歯科の器材も提供しており、歯の神経の治療をする細い針金のような器材や、歯を削るときに使う研削研磨器具ダイヤモンドバーも製作しています。私はそのどちらも研修医時代から愛用しています。

手術用の縫い針が有名だと初めて知ったのは、私が麻酔科研修時代でした。自治医科大学の麻酔科で研修していたときに外科用(手術用)の縫合針にこのマニー社の製品があることをしり、そこの現場では多くの外科医から信頼され使用されていました。

地元企業であり製品の品質がすばらしいことから開業した今でもマニー社製の手術用縫合針・ファイルという根管治療器具・歯を削るダイヤモンドバーは十数年以上愛用しています。

「針金屋」と言われているそうですがマニー社製の器具は本当に粘りがあり信頼して毎日の治療に使用することができます。安全な医療を提供するにはこのようなこだわりのメーカーがあることは非常に心強いものです。

歯の麻酔の注射のときの痛みを少なくするために

歯医者が嫌いな人はたくさんいると思います。

「歯を削るドリルの音が嫌い」 とか 「歯医者独特の薬の臭いがキライ」 などさまざまなキライな要素があると思います。

その中で麻酔の注射が痛くてどうしても嫌いという方もたくさんいると思います。

今まで当院では歯の麻酔の注射のときの痛みを少しでも和らげるために、注射をする部分の歯肉表面を麻痺させる表面麻酔薬を塗ってから注射をしてみたり、麻酔のときに使う注射の針を33ゲージというもっとも細い針を使用したりしていました。(ちなみに、点滴や採血をするときに使用する針よりもずっと細いです)

さらに今回、麻酔の痛みを和らげるために新しい機械を導入しました。電動の麻酔注射器です。

電動麻酔注射器アネジェクトです。 

麻酔の注入する量をコンピューターで制御しているので痛みを感じにくい設計になっています。

まず最初にお試しの機械を一度借りて使用しました。その都度患者さんに注射の痛みの具合を聞いてみたところ痛くなかったとの声を聞かさせていただいたので、今回導入することに決めました。コンピューターで麻酔の量をコントロールしているため痛みを感じにくいようになっています。注射をしているときに薬が中に押し込まれるような圧力を感じなくて痛みもないとの患者さんからの意見も多くあります。

借り物の機械だったので一度返却してから納品までの間は、従来どおり通常の麻酔の注射を使って診療をしていましたが、前回機会の麻酔で注射したお子さんに

「え?今日は機械じゃないの?なんで?この前痛くなかったのに・・・・・機械の方がいいなー」

と、思いっきり残念そうなお子さんもいました。

今はもう新しい電動注射器がありますので、治療で麻酔が必要なときはこの機械を使っています。

虫歯が大きくなっても歯を抜かずに残す治療

経験された方も多いかと思いますが、むし歯が歯の神経まで進行するととてつもない激痛が起こります。(できることならその前に治療してしまえばこのような痛みは回避できるのですが・・・・)

また、神経が死んでしまっても歯の奥深くに虫歯のばい菌が進行してしまい、根っこの奥のほうで膿をもってしまうこともあります。

むし歯がどんどん進行してしまうと痛みや腫れを繰り返したりして、抜歯するような場合も少なくはありません。

そのようなときに歯を抜かずに何とか治療をして使えるようにする治療方法があります。その治療方法は歯内療法といい、その字のとおり歯の内部を治療する方法です。

歯の内部には神経が通っていた小さな管がありますが、その太さは数十~百ミクロン程度の太さしかありません。その細かいところの治療するときに最近使われ始めているのが顕微鏡です。理由単純で「細かいところまで良く見える」からです。

その新しい機械である顕微鏡(マイクロとも言われます)の使用について実習のセミナーを受講してきました。

歯科用顕微鏡がずらりと並ぶ実習室です。

歯科用の顕微鏡がずらりと並ぶ実習室で二日間朝から晩までカンズメで実習を行ってきました。机の上においてあるお茶のペットボトルの本数がそれを物語っていると思います。この写真は二日目の朝、1時間早めに行って練習をしようとしたら、すでに先着がいました。受講生全員やる気はものすごかったです。

歯科用顕微鏡、外科手術で使用するものと同じつくりです

これが歯科用の顕微鏡です。脳外科など医科の手術でよく使われていることはテレビなどで見ることがあると思いますが、基本的にはそういったものと同じ仕様だそうです。倍率は約3~20倍まで調整できます。通常私は4.5倍の拡大鏡(ルーペ)を使用していますが、見え方はその比ではありませんでした。表現は適切かどうか分かりませんがパチンコの玉がバレーボールくらいの大きさに見える感じです。それくらいあの小さな歯が大きく見えます。

それだけ拡大して行う治療なので細かいところまで丁寧にできるため治療の精度を上げることはできますが、そのぶん治療時間もかかります。もちろん歯科用顕微鏡を使うだけでは治療成績はよくなりません。そのほかにも今回の二日間のセミナーでも、歯の根っこの治療を成功させるための手技や知識がたくさん学べました。そのようなところから治療方法を改善して、1本でも多くの歯を抜かずに残していけるよう治療の精度を上げて行きたいと思います。

それにしても歯科用顕微鏡はいずれ当院にも導入していきたい最新機器であることは間違いないと思います。