一度詰めたり、かぶせたりした歯でもむし歯になるのですか?

Question  せっかく治したのにむし歯ができて。一度詰めたり、かぶせたりした歯でもむし歯になるのですか?

Answer  きちんと歯をみがいていないと再びむし歯になることがよくあります。

確かに一度歯科医院でむし歯を治したのに、数年たって再びむし歯になると、悔しい気持ちになりますね。

歯科医は、むし歯をできるだけ必要最小限に削って、レジンという接着剤を詰めて治します。大きなむし歯で歯髄という神経を除去したケースでは、型を取り、歯科技工士が作製した金冠や差し歯を、接着剤を用いて、歯にくっつけています。

歯を完全に、そして永久に接着する材料は存在しません。現在、これらの接着剤の耐久性について研究が進んでいますが、口のなかという過酷な環境下では、5年以上たつと接着剤の接着性能が半減することがわかっています。

したがって、治してから数年もすると、詰め物やかぶせ物がとれたり、歯とのあいだにすき間ができることが考えられます。

さらに、毎日のブラッシングが不十分ですと、そのすき間からむし歯菌が再び侵入して、残っている歯質が酸でおかされ、再びむし歯となってしまうのです。

この再度生じた虫歯のことを「二次う蝕」と呼んでいます。

「二次う蝕」の発生頻度は10~20%前後と報告されています。ただ、よくブラッシングされている患者群では、その発生率は10%以下に下がることもわかっています。

むし歯を治したあとも安心せず、毎日毎食後のブラッシングを続けてください。

電動歯ブラシでみがくのは効果的ですか?

Question 自分で歯をみがけない人の歯みがきは、手でみがくのと電動歯ブラシでみがくのとでは、どちらが効果的ですか?

Answer  介護する方が介護される方の歯をみがく場合は、電動歯ブラシが効果的です。

自分で歯がみがけなくても、お口を清潔に保つことは大切です。最近は電動歯ブラシも市民権を得て、たくさんの種類があります。

さて、おたずねの件ですが、ひと言でいうと「自分でみがく通常の使用では、どちらでも同じ。しかし、自分で歯をみがけないため、介護する方が介護される方の歯をみがく場合は、電動歯ブラシのほうが効果的」です。

歯みがきで最も重要なことは、歯面に毛先を当てて、こすることです。自分で歯みがきをする場合は、毛先がどこに当たっているか口の中の感覚でわかります。でも他人の口は目で見ないとわかりません。とくに奥歯は、歯ブラシを動かすために頬を引っ張って隙間をつくり、その状態でのぞきこみながら歯ブラシを横に小刻みに動かさなければなりません。しかも相手は動いたり、文句をいったりするなど、大変な重労働です。みがく人とみがかれる人の双方が慣れるとコツがわかり、少しは楽にできるようになりますが、やはりきれいにみがくのは大変です。電動歯ブラシがおすすめなのは、毛先を歯に当てることだけに専念できるので、小刻みに動かさなくても、楽できれいにみがけるからです。

電動歯ブラシも多種多様ですが、介護されている方の歯をみがく場合は、ヘッドが小さいものが使いやすくておすすめです。最近は、毛先が一列に植毛していなくて、カップ上に丸く植毛してある製品がいくつか製品化されています。

矯正治療は大人でもできますか?

Question 子どもの矯正治療を見て、わたしもしたくなりました。大人でもできますか?費用は大人と子どもとではちがいますか?

Answer  大人でもできます。費用は子どもと基本的に同じです。

当院では「子どもが治ったのをみて私も」「うちの子と一緒に」というお母さまが多くなっています。励ましあって矯正治療をなさる姿はとても微笑ましいものです。

ちなみに当院では永久歯の治療に変わりないので、大人も子どもも同じ料金です。

矯正技術の進歩によりいろいろな矯正治療法がありますので、歯が存在し、それを支える歯槽骨さえあればいくつになっても矯正適応年齢です。アメリカ矯正学会で有名なザクリソン先生は、60代はもとより70代、80代の方の矯正治療例を発表されました。

例えば62歳の女性という方もいます。お孫さんの治療に付き添ううちに昔から気になっていた出っ歯を治したいとはじめました。治療後は、よく噛めるようになっただけでなく、横顔も美しくなって若々しくなりました。現在74歳ですが毎日生きいきとしているそうです。

年をとると食べることがとても重要になります。40歳で噛み合わせに不安があるという方は、平均寿命から考えたらまだ倍以上の年数で自分の歯を使う計算になります。長い人生を素敵に過ごすため、ぜひ矯正治療をおすすめします。ただし、40歳を超えると歯周病にかかっていたり処置歯が多かったりと治療が難しくなってきます。信用できる先生とじっくり話し合ってください。また、子どもの頃に比べ、適応能力が落ちてきますから、矯正装置の違和感がなかなかなくなりません。やり遂げる強い覚悟は必要です。

ホワイトニングをすると歯がしみますか?

Q  ホワイトニングをすると歯がしみると友達から聞きました。痛みがでたら治らないのでしょうか?

A  大体のケースでは時間が経てば治ります。

ホワイトニングは「歯を削らず痛まない」ことが魅力なのですが、残念ながら途中で知覚過敏を経験される方がいます。時間が経てば治まり心配はいりません。ホワイトニング剤の歯に対する安全性は確認されています。

しかし、とくに自宅でホワイトニングをなさっている方は、一時中断し歯医者さんに連絡して指示をもらってください。

さて、なぜ知覚過敏が起きるのでしょうか?その前に、ホワイトニングでなぜ歯が白くなるかですが、ホワイトニング剤の過酸化水素が分解すると、活性酸素分子(フリーラジカル)が発生します。このフリーラジカルが、歯の表面から浸透し、歯の有機着色物質を分解すると説明されています。ですから、歯にヒビやエナメル質の薄い部分があったり、歯肉が下がって歯根が出ていたり、歯と詰め物の間に隙間があると、このフリーラジカルが歯の奥深くまで浸透し、知覚過敏を起こすといわれています。始める前に、歯医者さんのチェックが必要なのはこのためです。幸いなことに、フリーラジカルは、分解・消失が早く、痛みは一時的です。

これとは別に、光やレーザーを照射して漂白効果を高める場合、発熱が一時的な知覚過敏を起こすこともあります。元々歯がしみる方は、別の方法を選択されるべきかもしれませんが、しみる原因に対処し、フッ化物の入ったジェルなどを使用することでほとんどの方が普通にホワイトニングを続けられます。

部分入れ歯と残っている歯のむし歯予防法は?

Q 部分入れ歯の留め金(クラスプ)と接する歯の色が変わってきたような気がします。虫歯でしょうか?

A 部分入れ歯の留め金はむし歯菌が付着しやすく、接する歯がむし歯になることはよくあります。

部分入れ歯の留め金(クラスプ)は維持力を発揮させるために複雑な形状をしており、接する歯(鈎歯)にもクラスプが安定して適合するように小さな溝などが削られたりしています。このため、食後よく洗浄しないで部分入れ歯を装着したままにしておきますと、むし歯菌がクラスプや鉤歯に定着し、食べ物の残りカスを栄養源としてプラークを形成し、酸を出して鉤歯の一部にむし歯を生じることがよくあります。そのためにクラスプに接する鉤歯が着色してきたものと考えられます。

またクラスプが接する鉤歯には噛むたびに大きな咬合力がかかるため、過剰負担となって歯周病が進行する危険もあります。このような場合、歯周病菌も鉤歯のまわりの歯周ポケットという歯肉の溝にたまりやすくなり、歯肉が腫れたり鉤歯が揺れだしたりします。

このようなクラスプに伴うむし歯や歯周病を放置すると、最悪抜歯しなければならなくなり、部分入れ歯に人工歯を追加したり新調する必要がでてきます。

鉤歯のむし歯を予防するためには、まず部分入れ歯を清潔に持つことが必要です。できれば毎食後、部部入れ歯をよくブラッシングし、一週間に一度は義歯洗浄剤に浸しておくことが大切です。部分入れ歯専用の洗浄剤も市販されています。また、鉤歯をよくブラッシングすることも重要です。フッ素入りの歯みがき材でブラッシングするとむし歯の発生が抑えられることもわかっていますので、使用をおすすめします。

ラミネートベニアはどれくらいもつのでしょう?

Q 歯科医院でラミネートベニアを勧められています。どれくらいもつのでしょう。歯に悪くありませんか?

A 条件さえよければ10年をこえる症例も出てきており、信頼性の高い治療といえます。

ラミネートベニアは、〝つけ爪〟のような方法です。自分の歯の上に、セラミックスの薄い板を接着させて、色や形を自由に変更し見た目を変える方法です。表面のエナメル質を、約0.5~1.0㎜ほど薄く削ります。歯肉に近いところではエナメル質が薄いので、下の象牙質が出てしまう場合があり、その際は麻酔の注射が必要なこともあります。

削った後、ベニアを付けるまでの間、冷たいものや温かいものに感じる場合もありますが、さほどではありませんし、不安なく普通に何でも食べられます。

表面だけに人工物を接着しますから、その他の歯面は天然の歯のままです。したがって噛み合わせが、治療前と変わらないという大きな安心感があります。また、歯肉近くのエナメル質は、もとのままわずかですが残します。ですから、歯肉が退縮しても、患者さんはほとんどの場合、継ぎ目が気にならないようです。これらは、歯を全部覆ってしまう冠タイプにはない利点ですね。材料のセラミックスは、歯ブラシでも減らないですし、それ自体の変色もありません。ただし、歯ぎしりの強い患者さんは時としてヒビが入ることもありますから注意が必要です。

昔は神経のある歯だけを対象に行っていましたが、今は接着の技術やベニアを作る材料が進歩し、神経をとった歯にも可能です。

長持ちさせる秘訣は、日常適切な歯ブラシ清掃を励行すること、定期的に歯医者さんで歯石除去、歯面のクリーニング、また噛み合わせのチェックを受けることです。

インプラントの製品の選び方とその理由

Q インプラントにもいろいろあるそうですが、どんな製品を選んでいますか?

A 世界中で広く使用されていて、しかも信用できるインプラントを選ぶようにしています。

現在、多くの会社から歯科用インプラントが販売されていますが、インプラント体に用いられる素材は、そのほとんどがチタンです。そこで、各社さまざまな工夫をして、微妙な違いや特徴を出しているのが現状です。

それでは、どのような点に注目してインプラントを選択しているかというと、まずは今までの実績があること。この実績とは、今までにどれくらい世界中で使われ、その成功率はどの程度なのか、そのインプラントについてどれだけの実験データがあるのか(科学的根拠)といってものです。

また、そのインプラントを作っている会社のありかた、方向性も非常に重要視します。

たとえば、ある会社が新たにインプラントを発売したとします。しかし、この製品にはほとんど使用実績がなく、その会社のインプラント販売という点についての将来性も、すぐに信用できるものではないとしましょう。仮にそのインプラントを使用し、将来何らかの理由で修理が必要になったとき、部品が売られていないと困ります。また、患者さんが転居した際も、同様のインプラントを使用している先生を紹介することもできません。

したがって、私は世界中で広く使用され、しかも信用できるものを選ぶようにしています。それは、価格が安いなど今だけを考えてのことではなく、この先長く関わりあえるものとして、もっとも安心できるからです。

インプラント治療を受ける患者さんは、どのような会社のどういったインプラントを使うかも、知っておく必要があると思います。

当院ではアストラテック社のインプラントを使用しています。

子供用の歯ブラシの選び方は?

Q どんな歯ブラシがよいのですか?痛がって逃げられるので、特に仕上げみがき用について教えてください。

A お子さまの年齢に合わせて、仕上げ歯ブラシを選び、仕上げみがきの達人になりましょう。

仕上げみがき用の子ども歯ブラシの選び方ですね、お任せください。

2歳

2歳くらいのお子さんで、仕上げみがきを嫌がるときは、毛がソフトで密集したタイプを選びましょう。お母さまの手の甲をみがいたとき、マッサージのようで気持ちイイ、と感じるソフト歯ブラシなら、お子さんも嫌がらないはず。2歳くらいでは、仕上げみがきという習慣をつけることが大切です。歯垢を落とす目的の、ふつう歯ブラシでいきなりみがくのではなく、少々、歯垢は落ちにくくとも、まずは柔らかめのソフト歯ブラシで試してみてください。慣れてきたら、ふつうの硬さにステップアップしていきます。

4歳

4歳ともなれば、乳歯列も完成し、大脳新皮質の発達により大人の会話を理解、それに合わせて行動することができるようになります。なぜ仕上げ磨きが必要か、説明すれば理解し、大人しく磨かせてくれるはずですよ。そんな4歳さんには、年齢にあった仕上げ磨き用歯ブラシを選んでください。お店で迷ったときは、次の3つのポイントが、役に立つでしょう。①毛の高さは高すぎるより、低くカットしてあるもの。②ブラシの幅は、狭すぎるものよりも幅があるものの方が磨くとき安定して子どもが痛がりません。③毛先が球状にふくらんだものや切りっぱなしのものは避け、ラウンド処理など歯肉を傷めない加工がしてあるものを選びます。それでも磨かせてくれないときは、みがき方に問題があるかもしれないので、お近くの小児歯科で相談してみてくださいね。

口臭を気にしていますが検査では問題がない場合どうすればいいでしょうか?

Q 16歳の娘が口の臭いを気にして人前に出たがりません。検査では問題なかったのですが・・・どこかに相談したほうがいいかしら?

A 口臭がないのにあると悩む病気の可能性があるので心の専門医へのご相談をおすすめします。

お話からすれば、仮性口臭症・口臭恐怖症の可能性があるようです。いずれも、口臭がないのに「口臭がある」と思い悩む病気です。ただし、このように診断する前に「どのような検査を受けたか?」が問題です。まずは、「朝、起床時から飲食禁止のうえ、歯みがきやうがいも禁止して口臭を検査したかどうか」が重要です。こうすることで、一日のうちでもっとも強い口臭が測定できます。つぎに、口臭検知機器のほかに「正常に嗅覚を持った医師などが官能検査(臭いを嗅ぐ検査)を行ったかどうか」です。このような検査を繰り返しても口臭がないとすれば、仮性口臭症あるいは口臭恐怖症です。

先生が、お嬢さんに「口臭がないこと」を科学的に説明しても「まだ口臭がある」と信じるようでしたら口臭恐怖症です。この状態では、本当の病気は心のなかにあります。一般歯科医師の範囲外です。医師の中には、口臭が検出されないのに「口臭がある」として、いろいろな口臭予防製品や方法をすすめようと考える人もいます。しかし、口臭治療経験が十分にある歯科医師だったとしても、心身医学の専門家である大学病院の診療歯科あるいは心療内科などに転医したほうがよいでしょう。口臭以外の心理ファクターも検討しなければなりません。口臭恐怖症患者には社会恐怖症に罹患している方が多いようです。万一、人格障害が基礎にありますと、専門医といえども治療は非常に難しいのです。基本的には、お嬢さんが何でも話し頼れる「心の専門医」を見つけることです。