口が開かない場合、その原因によっては外科処置の可能性もあります。

口が開きにくい、大きく開けない、などの症状のがあるときは、あごの病気の可能性があります。
口が開きにくくなる原因は、様々な病気があります。
まずは原因となっている病気の特定を行い、その病状に合わせた治療を行います。

まずは保存的療法を行うことによって、症状改善していくことが多いです。

しかし、まれに外科療法(手術)を必要とする原因の時もあります。例えば、顎に癌ができてしまい口が開きにくくなった場合です。

先日、日本顎関節学会第45回学術講演会に参加してきました。今回のテーマは「外科療法について」です。
講演内容では、近年研究が進み、口が開かないことに対する治療は保存的治療で改善することが多くなってきましたが、それでもまだ外科療法が必要な場合があります。

 

近年の顎関節治療について

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日本顎関節学会会員なってからすでに17,8年ほど経過します。
その間に、顎関節疾患の診断や治療については年々変化していってます。
20年前に盛んにおこなわれていた治療方法の中には、今ではごく限られた症例にのみ行われているものもあります。
逆に研究が進んだことによって、昔はあまり積極的に行われていなかった治療方法が、最近の治療の中心になりつつあるものもあります。
これらは世界中で行われている日々の研究成果によってより良いものへと変化をしていきます。

このような変化は専門学会に所属しながら、継続的に学術大会へ参加をしていくことによって実感してきました。

医療の基本ではありますが、まず適格な診査をして顎関節疾患の診断をしっかりと行うことが大切です。
患者さんが訴えている病態が、どのようなものが原因で発症しているのかを的確にとらえなければいけません。
それによって適切な治療方法を選択し、患者さんへ提示をして同意が得られることによって、治療が開始されます。

最近の学術大会ではその診断についてのディスカッションがメインテーマとされています。
日本では日本顎関節学会が定める顎関節診断基準がありますが、世界にはそのほかにもいくつかの診断基準があります。
同じ疾患を診断するのでおおよそ類似してはいますが、細かな部分のニュアンスなどの認識がアップグレードされていたりする場合がありますので、
そのあたりも学会でのテーマになっているものもあります。

顎関節疾患の診断が確定すればそれに準じて治療方法が選択されます。
治療方法についてもたくさんの研究がなされており、最初の病態に対して有効な治療方法やあまり有効ではない治療方法はどのようなものがどれくらいの割合であるかなどの結果が出されています。

我々臨床医は、患者さんの病態を的確に診断し、適切な治療方法をいくつか提示し、患者さんと相談をしながら治療方針を決めていきます。
顎関節疾患は慢性的な疾患がほとんどなため、長く上手に付き合っていく必要性があります。

日本顎関節学会で新たに学んできたこと

日本顎関節学会2013

 2013年7月20、21日は日本顎関節学会へ参加してきました。
 日本顎関節学会とは、国内外の顎関節に関する研究や診療を行っている専門家たちが集まって、研究成果の発表や情報の交換、討論などを行う場です。
 日本顎関節学会専門医である私(沼尾)も、学会へ参加をして新しい知識と技術を学んできました。

 トピックな話題としては顎関節症の診断基準について、ここ数年世界中でスタンダードになってきている診断基準についての議論がなされました。良い治療を行うためには適切な診断が絶対に必要です。そのため診断基準というのは良い治療を行うための第一歩となります。その診断基準をより良いものにしようと研究者や専門家たちがさまざまな意見を交換していました。このような議論が世界中で行われており、より良い診断基準作りが今後加速していくようです。

 顎や顔面の痛みの原因のひとつになっているだろうとされている食いしばりや歯軋りなどについても研究が進んでいます。そのような痛みの原因となる食いしばりや歯軋りは、無意識のときにやっていることも多いためなかなか気がつかないことが多く、いつになっても痛みの原因が解消されないことがあります。そんな無意識な食いしばりや歯軋りを辞めるような機械の研究も進んでおり、今後この研究は非常に楽しみなところだと感じました。

 通常、何もしていないときは上顎の歯と下顎の歯は離れていることが正常です。極端なことを言えば食事以外で歯と歯が当たることはほとんどありません。咬んだ状態だと話をすることが難しいと思いますが、咬んだ状態が通常は不自然な状態だからです。このように上顎と下顎の歯が接触している状態を最近ではTCHと呼ぶことがあります。このTCHはメディアでも取り上げられることも多くなってきました。

 顎に痛みがあったり、口が開きにくかったりとの症状が出る病気の一つに顎関節症というものがあります。そんな痛みや口の開きにくいときに対応する治療方法のひとつを少人数実習形式で教えていただけるセミナーが学会期間中に開催されたので、参加してきました。国内でもトップレベルの顎関節治療の専門家たちの直接指導を受けてきました。長年の治療経験と蓄積された技術を我々受講生たちに惜しみなく伝え教えてくれました。日頃の疑問をぶつけてみましたが非常に分かりやすい回答をいただき一気に解決いたしました。
 名医と呼ばれる方々の素晴らしい知識と技術に改めて驚かされ、そしてその教えをいただいたために彼らに一歩近づくことができました。この教えていただいたことは今後の毎日の診療に生かして、患者さんへ還元していきたいと思います。

 日本全国の知人の先生たちとも再会をしていろいろなお話をして、意見交換をすることができました。
 二日間という短い期間でしたが、非常に有意義な時間をすごすことができました。

日本顎関節学会2013講演中

第23回日本顎関節学会に参加してきました

7月23日(金)から25日(日)の間に開催された日本顎関節学会へ参加してきました。その間は臨時休診をいただきご迷惑おかけしました。

学会とは大学・研究機関・病院・開業医などが日ごろの研究成果を発表し、それに対してさまざまな研究者や専門医が議論をしてその妥当性を追及していく場です。

つまり、専門の人間の意見が多数議論されるため、正当性が高く最新の情報が得られる場であります。

口は物を食べたり話をしたりなどを毎日行う場所ですが、それらを行うための軸となるところが顎関節です。顎関節の調子が悪くなれば、話をしたり物を食べたりすることがしにくくなり、日常生活に大きな影響が出てきます。

そんな口の動きの中心となる顎関節について日本レベルで研究発表と議論される場が日本学関節学会です。今回は海外からの研究発表者もいたようでした。

顎関節症などの研究発表と議論をする学会である、第23回日本顎関節学会に参加してきました。

研究成果による新しい発見や、今までの治療に対する研究、現在セオリーとされている基本的な内容確認のためのセミナーなどさまざまな発表がなされました。

日本全国で診療や研究をしている先輩・後輩や友人などとも再会をし、色々な話をすることもとても刺激になります。

ここで学んできたことは最新かつ妥当性の高い治療という形で患者さんへ還元していきたいと思います。

顎関節症は若い女性に多いのですか?

Question 顎関節症は若い女性に多いと聞きました。どうしてですか?

Answer その理由は、「若い女性」を「若い」と「女性」に分けて考えてみると、よくわかります

 顎関節症にはいろいろな病変とそれに伴う症状が含まれますので、その中でもっともよく起こる顎関節と筋肉のトラブルについてご説明します。「若い」「女性」それぞれの特徴をみながら考えてみましょう。

①「女性」であること

 顎関節症の患者さんは女性が圧倒的に多いようです。筋肉や骨格が男性に比べてやや弱い、心理的・社会的にストレスにさらされた場合に不利な面が多い、生理があるので自分のからだに対して関心をもつ機会が多いことなどが関係するようです。

②「若い」ということ

 若い人は顎関節部が成長期にあり、関節の動く部分や受け皿となる骨とその上の繊維層や軟骨部分がまだ弱く、少しの刺激で症状が出てしまいます。子どもは適応能力が高いので変形という方法で刺激に対応できます。

③「若い女性」ということ

 ①と②の2つの働きで、顎関節や咀嚼筋などに症状を示すようになります。私の経験では、大学受験の頃に筋痛や関節痛があったけれど、受験の終了とともに症状がなくなった症例がいくつかあります。

 また、社会人となって会社で必死に働くうちに、生理まで不順となり女性ホルモンのアンバランスが生じ、それによるものか、顎関節部の骨が吸収して関節が変形してしまった症例もいくつかあります。

 ストレスをいかにうまくやり過ごすか。そのコツをつかめれば、多くの場合、発病しないですむようです。

顎が少しカクカクと音が鳴りますが?

Question 顎が少しカクカクします。痛みはありません。今のうちに顎関節症の予防に硬いものをかんで鍛えたほうがよいですか?

Answer いいえ。顎関節に過剰な負担がかからないようにしてください。

 あごがカクカクするのは、口を開くとき、あごを横に動かすときや咀嚼時などいくつかの場合があります。下顎頭とよばれる、あごの関節の端の骨が動くときにカクカクするのです。

 正常な場合はもちろんカクカク感はありませんが、関節を作る組織の形や機能が異常な場合に、あごの動きがスムーズでなくなってカクカク感が出てくることがあります。

 もともと、あごを動かすときには、この杵に相当する下顎頭という骨が下顎窩という骨の臼の中を移動します。移動する道すじは、関節円板とよばれるクッションや靱帯などによっておおむね決められています。

 この道すじに傷ができたり、道を作る関節円板の機能に異常があったりするとカクカクします。この傷がすごく深かったり、関節円板がひどく変形したり、癒着したりするとカクカク感も強くなり、時には口を開くことができなくなるなどの機能障害を起こすことがあります。しかし、おたずねの方は痛みがないということですので、かなり軽症であるといえましょう。

 さて、病状悪化の予防ですが、原因の多くは外傷ですから、これ以上あごの関節に機械的負担をかけないようにしていればよいのです。硬いものをかんであごを強くして病状悪化を阻止しようという考えは、むしろ逆効果です。病状悪化を防ぐには無意識のかみしめやうつぶせ寝などの長時間にわたる関節へに負担をさけましょう。

 繰り返しになりますが、訓練のために硬いものを習慣的に食べるなどということは「百害あって一利なし」にことわざとおりです。

デスクワークでずっと下を向いて作業をしていると、顎関節症が悪化すると聞きました、本当ですか?

Question
デスクワークでずっと下を向いて作業をしていると、顎関節症が悪化すると聞きました、本当ですか?
Answer
その可能性はあります。歯を食いしばることが多く、関節に負担をかけてしまうからです。
あなたが下を向いて、書いたり、パソコンを使ったりといったデスクワークをしている姿を想像してください。その時にあなたの歯はどこにありますか?通常は上顎の歯と下顎の歯はふれあうことはなく、空間を形成していて、その間に空気や舌が入り込むような状態になっています。しかし、すごく面倒な作業や複雑な作業をしていると、思わず歯を食いしばっていることが多くなります。食いしばりが一過性ならとくに問題はないのですが、その状態が長時間、長期間に及ぶと、顎関節症になったり、悪化させたりするのです。これはデスクワークに限らず、炊事など家庭での家事労働でも同じくらい、悪化の原因になりやすいのです。
これらの作業の何が問題なのかというと、実は下を向いて作業していることがいけないのです。うつむき加減で作業をしていると下顎は顔の前のほうに下がっていきます。唾液もよだれとして出やすくなるでしょう。これを避けるために、 歯を食いしばってしまうことが多いのです。この状態が長引くと、関節に器械的、生物学的負担をかけるので、ついには関節組織が壊れてしまいます。さらにかむために使う筋肉も疲労して筋肉痛が起こり、それが顔全体の痛みとして認識されることが多くなります。
予防法は簡単で、デスクワークでも家事でも、たとえばおしゃべりをするとか、歌を歌いながら作業をするとか、場合によってはガムを噛みながら作業をするなど、食いしばらないための工夫をすればよいのです。

噛みしめる癖は要注意 -あごを痛める可能性あり-

口を開けるとき、カクンと音がする。あるいは、口が開けにくかったり、耳の前方にある関節が痛むなどの症状がある人は、あごの関節や筋肉に、何らかに問題を抱えている可能性が強い。顎関節や咀嚼筋などに異常をきたす「顎関節症」の疑いが考えられるからです。
「顎関節症」では、あごの関節や筋肉に痛みや違和感を伴うが、その発症は複雑で、いくつもの要因が関わっているとされています。例えば、あごの関節に負担をかけるうつぶせ寝やほお杖、悪い姿勢、片方の歯だけで噛むといった癖や習慣が原因になることもあります。また、急に口を大きく開けたり、顔を打ったりなどが、発症の引き金になることもあります。
なかでも一番悪いのは、口を固く結んで動かさなかったり、歯を習慣的に噛みしめる癖です。あごの関節や筋肉に負担をかけ続けると、筋肉はこわばり、関節もうまく機能しなくなってきます。
顎関節症の予防と治療に詳しい中沢勝宏院長は「パソコンの前で歯を食いしばっている人は、顎関節症予備軍と言ってもいいでしょう」と警告する。「上と下の歯を接触し続ける」だけでも、あごの筋肉には大きな負担がかかるそうなので、注意したい。
さらに、疲労や精神的ストレスも、「顎関節症」に関係するとされています。これら、いくつもの要因が重なり、その人の限界に達したときに、「顎関節症」は発症します。
顎関節症の症状
1.顎に痛みがある
あごを動かしたときに痛むのが特徴。あごの関節、ほおにある咀嚼筋に痛みを感じる。あごを動かしていないときの痛みは少ない。
2.口が大きく開けられない
下あごの動きが制限され、大きく口が開けられなくなる。指を立てに揃えて2本以下しか入らないと要注意。いきなり口が開かなくなる場合と、徐々に開きづらくなる場合とがある。
3.あごを動かすと音がする
口を開けたり、物を噛んだりするとき、「カクン」「ガクガク」「シャリシャリ」「ミシミシ」といった関節の雑音がする。