総入れ歯で苦労していたけど、新しい入れ歯で今は支障が少なくなりました。

「上の入れ歯が落ちて困る」
「咬むと入れ歯が動いてずれる感じがする」
「話をしていると入れ歯が飛び出しそうになる」
「咬みにくいのでお粥みたいのしか食べられない」
総入れ歯ではこのようなさまざまな悩みをお持ちの方がいらっしゃると思います。
入れ歯を支えている歯がすべてなくなると、今まで使っていた部分入れ歯が使えなくなり、総入れ歯になってしまいます。
入れ歯を安定させるために支えになる歯が1本もないため、部分入れ歯とちがい総入れ歯はとっても不安定になります。
不安定になれば今まで部分入れ歯で食べられていたものが、総入れ歯だと食べにくくなってしまうこともあります。
そのため総入れ歯で食べにくく苦労されている方も、たくさんいらしゃるのが現状だと思います。
そこで、少しでも総入れ歯を安定できるような特殊な作り方をすることがあります。いろいろな方法がありますが、そのうちのひとつを紹介します。
歯がなくなり総入れ歯を使っていましたが、土手が平坦になっており安定せず、入れ歯が使いづらくなっていました。 治療用の入れ歯を使って新しい入れ歯作成を行います。
左上の写真は歯が1本もなくなってしまった方の口の中の下顎の写真です。
歯肉の土手がほとんどなくなってしまい平坦になっています。
今までも総入れ歯を使ってはいましたが、土手が平坦な状態だったので入れ歯は安定せず食べる時や会話する時に苦労していました。
そこで「治療用の入れ歯」を使った新しい入れ歯の作成をこの方へ提案させていただきました。その治療方法に納得していただいたために承諾していただき、治療用の入れ歯を使った治療を行いました。
右上の写真が治療用の入れ歯を口の中へ入れた状態です。
ここで「治療用の入れ歯を使った入れ歯作成方法」について説明します。
まずはじめに上顎と下顎の両方に治療用の入れ歯を作ります。
治療用の入れ歯の下顎の奥歯は写真のように歯の形ではなく平らになっています。平らなため自分の咬みやすい位置で自由に咬むことができます。
この状態で毎日使ってもらうと、平らな部分に自分の咬みやすい位置の跡がついてきます。
また、使っているうちにあたってくる場所を削ってみたり、足らない部分はプラスチック部分を足してみたりなどをして調整をしていきます。話をしたときに舌が気になるところがあれば足したり削ったりして調整していきます。
それによって咬みやすい位置を確立し、使いやすい入れ歯の形を調整しながら、そしてまたしばらく使ってもらい、また調整して、また使って・・・・と繰り返しながらその人に合った入れ歯の形を作っていきます。
治療用入れ歯を用いて使いやすく安定した入れ歯へと作り込んでいきます。
上の写真はしばらく使いながら調整を繰り返した治療用の入れ歯です。
自分の咬みやすい位置に跡が付いているのがわかりますか?最初は平坦だった部分が毎日使うことによって磨耗してくぼんできます。白く抜けている部分がそのくぼみの跡になります。(写真で分かりやすくするために跡以外の部分を黒く塗りました。使っているときは黒くありません。)
また、ピンクのプラスチック部分も調整を繰り返しているため、つぎはぎになっていますが咬んでも痛みがなくなるところまで入れ歯の形が出来上がってきています。また、会話でも気にならないようにも入れ歯の形態を調整してあるため、以前使っていた入れ歯より飛躍的に使用感はよくなりました。
つまり、時間をかけて患者さんご本人が治療用入れ歯の使い込みをして、そのつど不都合な部分を解消してきたため、治療用の入れ歯が咬みやすくて話しやすい入れ歯になってきたということです。
しかし、咬みやすく話しやすい入れ歯にはなってきましたが、咬むところは平坦のままですし、ピンクの部分は補修を繰り返していますのでツギハギになっています。補修に使用したプラスチックは長期間使えるほど耐久性がありません。
そこでこの安定してきた治療用の入れ歯を元に、最終の入れ歯を作成していきます。
安定した治療用入れ歯を元に、最終の入れ歯を咬合器を使って作成しています。
安定してきた治療用の入れ歯をそのままコピーして模型を作り、かみ合わせに合わせて入れ歯を作る機械に装着します。
その模型を装着した機械の上で、新しい入れ歯を作っている途中の工程が上の写真です。
余談ですが、この機械は「カプカプ」と咬む動きを再現できる機械で、「咬合器」といいます。歯のお化けみたいでチョット不気味ですか?(笑
さらによく咬めるように治療用の入れ歯では平坦だった奥歯から、新しい最終の入れ歯は凸凹のある硬いプラスチックの歯にします。
ツギハギだったピンクの部分も、舌触りも滑らかで綺麗な仕上がりになるよう作っていきます。
これらの工程を経て完成した最終の入れ歯を患者さんに使ってもらいます。
治療用の入れ歯で何ヶ月と時間をかけて調整を繰り返してきた入れ歯をコピーして作ってあるので、この最終の入れ歯はほとんど調整することなく使うことができました。
患者さんもいろいろなものが食べられて嬉しいといっていただき本当に良かったと思います。
以前の入れ歯では苦労されていましたが、今の入れ歯に代わってからは話すことやそのほか日常に大きな支障はなく過ごせているとのことです。
ただし、「レバーは硬くて咬みきれそうにもなかったので無理をしないで細かく切ってから食べました。」 とのこと。
入れ歯でも食べられないものを無理をして食べないようにして、食べ方に工夫をしていただくコツも掴んできたようです。
自分の体の一部として入れ歯を上手に使いこなしている感じでした。
ご家族の方からも
「前の入れ歯ときは食べられなくて苦労していたけど、今の入れ歯になってからは何でも食べられてバッチリだよ」
といっていただき、家族みんなで楽しく食事ができると笑顔で話していただきました。
これからは定期的に入れ歯やお口の中の状態をチェックして、日頃の食事や会話などがなにも気にせずできるような生活を続けられるようにしていきたいと思います。
最後に、この患者さんへ今回治療の途中で撮った写真を元にほかの方々への説明用に使わせて欲しい旨をお伝えしたところ、快諾していただきました。
写真を提供していただいた患者さんへ感謝しております。ありがとうございました。