カテゴリー: むし歯治療
歯の根が知らぬ間に折れていることがあります
骨が折れるように、歯も折れます。特に歯肉の中にある歯の根が折れていることは、実は良くあります。
骨が折れた場合、きちんと元の位置に戻して固定をしてあげれば、くっつけられることがほとんどです。
しかし、歯が折れた場合には骨のようにくっつくことはないため、ずっと折れたままになっています。その結果、折れた部分からばい菌が進入して、歯肉の中に膿がたまってきて、痛みが出たり腫れたりしてきます。
そのため歯の根が折れた場合には、残念ながら原則として抜歯となってしまいます。
上の表示してある動画は、歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)で拡大して見た、折れている歯の動画です。ばい菌に汚染されている様子が分かると思います。
では、どんな歯の根が折れやすいのでしょうか?
それは、神経を取ってしまった歯の根が折れやすいのです。神経のある歯の根に比べて、圧倒的に神経のない歯の根のほうが折れます。
つまり神経を取ってしまった歯は、ある程度は歯の根が折れる可能性があることは覚悟をしておかなければなりません。
神経を取るともう痛むことがなくなると思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、しかし、実際には歯の神経を取っても、骨のほうまで化膿したりして、痛みが出ることはありますし、歯の根が折れて抜歯となり歯を失うこともよくあります。
今のところ残念ながら歯の根が折れるのを確実に予防する方法は今のところありません。
神経を取ることになる原因のほとんどが、虫歯が進行して神経までばい菌に汚染されてしまったときや、神経の痛みが出たときです。
つまり、虫歯の進行を食い止めておけば、神経がばい菌に汚染されず、神経を抜く可能性はグッと低くなります。
結果的に虫歯予防をしておくことが、歯の根を折る危険性から回避してくれる一番の方法なのかもしれません。
歯の神経は歯の中にあります。神経を取るときには、歯に大きな穴を開けて細い針金状のヤスリを使って神経を取ります。
写真は神経を取る治療の練習用模型です。歯の上から挿入した針金状のヤスリが、根の先から飛び出しているのが分かりますか?
根の先までしっかりと綺麗にして、ばい菌に汚染された部分を取り除くことが、歯の神経の治療になります。
25mm前後しかない歯の中にある神経をとるため、神経を取る治療は非常に細やかな治療になって行きます。
写真の針金は先端が約0.1mmという細さのもので治療を行っています。
そのため上の動画にもあったような、歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)というものを使って大きく拡大した状態を見ながら、治療を行うこともあります。
こののように丁寧で繊細な治療を行ったとしても、歯の根が折れてしまい、抜歯となるケースはたくさんあります。
できる限り神経を取らなくてもいいように、虫歯にならないために、歯医者さんや歯科衛生士さんと一緒に、あなたの歯を守る対策を相談して下さい。
痛くなってからは手遅れなのです。
歯の治療中に苦しくなったら
これは沼尾デンタルクリニックの待合室に貼ってあるポスターです。少し古くなってきて色あせてきていますが・・・・。
歯科治療中は口の中をいじられているため、「言葉」という意思表示方法を奪われています。
そのためなかなか言い出せない状況が続くこともあるかと思います。
そんなときは軽く手を上げていただければ治療を中断します。
もちろんできるだけこのような不快症状が出ないよう十分に注意を払っております。
治療前に痛みが出そうな場合は麻酔使用の有無をお伺いし、麻酔を行うときは麻酔をしっかりと効いてから治療を行いようにしています。
治療中に水や唾液などがたまらないよう随時吸い取り続けるようにしています。
口を開けていることがつらい場合は、口を開けておく器具がありますのでご要望により使用しています。
歯医者が怖い方の場合できる範囲のところから行います。初めて受診時には、口内の診査をして今後の治療方針などをお話をするだけで終わる方もいらっしゃいます。
歯科治療はつらいことと思いますが、しっかりと治療を行えば快適になりますので少しでも治療のハードルが下がってくれればと思います。
自分の歯を残せる時と抜かなければならない時
痛くもかゆくもない歯や、まったく自覚症状がない口の中で
「いやぁ、かなり進行していて重症ですよ」
「もう抜かないとダメかもしれませんね」
と、言われた経験はありませんか?
このような経験をされた方、このような経験をしたくない方へ解説をしていきたいと思います。
先日に参加してきたセミナーに関して内容を普通の方に分かるように噛み砕いて表現してみます。
このセミナーは海外の大学院を卒業者で組織されている団体が主催しています。これに参加している先生は留学経験者で歯周病の専門家・歯を作る専門家・インプラントの専門家・歯の根の治療の専門家などが多数集まって討論を行います。私は留学経験はありませんが、オブザーブ参加が認められているセミナーでした。
虫歯や歯周病などの歯の病気が進行してきた場合(ただし進行しても痛くなるときもあればほとんど痛みを感じないときもあります)
自分の歯が残せるのか?それとももう抜かなければならないのか?
患者さんも歯科医師も歯科衛生士もみんな歯は抜きたくはないものです。しかし、病気が進行してしまってはそうも言っていられません。
それを決めるのにはその歯の状態をさまざまな角度で見て、最終的に歯科医師が5段階に分類していきます。
その5段階をざっくりいうと「いいね」、「まあまぁ」、「微妙」、「厳しい」、「希望なし」のような感じになります。
「いいね」 ならここで治療をしておけばまだまだ使えるだろう
「まあまぁ」 程度なら歯を残しておいてもしばらく大きな問題は起こらないだろう
「微妙」 は今はいいけどそのうちだめになるかもしれない
「厳しい」 は歯を残しておくと問題が起こりそうなので抜かないとダメかもしれない。
「希望なし」 は残念ながら手遅れで手のほどこしようがないため抜歯になります。
といった感じですね。
さて、これはあくまでも医療サイドから診査をして判断した結果の分類です。
では患者さんからみるとどう感じるのでしょう?
実は「希望なし」の状態でも、痛いとか腫れたとかの自覚症状がまったくない場合も少なくはありません。
つまり痛くも痒くもない歯が実はもうダメになっているということも起こりえるということです。
そういった歯があると、一番最初に書いたような
「いやぁ、かなり進行していて重症ですよ」
「もう抜かないとダメかもしれませんね」
というような結果になってしまいます。
痛くも痒くもないのにいきなり「ダメ」出しをされてしまうのなら、皆さんはどうすればいいのでしょうか?
その答えは
歯科医院で定期的なチェックを行い、「希望なし」にならないように歯のメンテナンスを行っていくことが必要になってきます。
定期的なメンテナンスを行えば虫歯や歯周病の進行を抑制することができます。病気の進行が抑制されれば、それだけ長期間自分の歯の健康を保つことができ抜歯するような事態になりにくくなっていきます。
これはさまざまな研究がなされており、歯のメンテナンスを行うことにより自分の歯を長期間使っていけることは科学的に証明されています。
これ以外にも歯のメンテナンスを行う必要性を裏付けるものがまだあります。
例えば虫歯になって治療を行いました。そして治療した歯がしばらくたって、またむし歯が再発すれば再治療を行わないといけなくなります。
これは非常に悪いサイクルになっています。なぜなら再治療を行うことは上に出てきた5段階の分類が、最初の治療のときからさらに悪い方へと移動します。
例えれば、最初の治療で「いいね」の状態だったものが、再治療後は「微妙」に変わってきます。ひどい場合は「いいね」だったものが、再発の進行が急すぎて「希望なし」に変わることもあります。
これは「むし歯になったらまた治療すればいいや」と思っており、またむし歯になって再治療を繰り返すことは、どんどんと抜歯する状態へと近づいていってしまいます。
そのためむし歯の再発は防がないといけませんので、そのために歯のメンテナンスが必要になってきます。
理想は最初から虫歯を発生させないように、予防やメンテナンスを実践していくことです。
結論としては
「希望なし」まで進行してしまったら、痛みが出るのを待つか抜歯するしかない。
そうならないよう定期的な歯のメンテナンスをして、虫歯や歯周病の予防をすること
究極的な意見ですが、生まれたときから予防やメンテナンスを行って、理想的には虫歯や歯周病と無縁で一生過ごすことができれば素晴らしい!
皆さんはどう考えますか?
自分の歯を長く使うために、皆さんに知ってほしいこと
自分の歯をだめにしないようにして少しでも長く使っていくためには、知ってほしいことがいくつかあります。
その中のひとつに 「人間の体の中で歯というものは、他の部分と違って非常に特殊な部分であること」 ということがあります。
それではどんなふうに特殊であるかを解説します。
例えば、手を怪我をして傷ができ血が出たりした時に適切な治療を受ければ、その傷はだんだん治っていき最終的には傷口は綺麗にふさがり治っていきます。
歯の場合、歯の表面に穴が開いてしまった時に適切な治療を受けたとしても、その穴は一生ふさがることは無く金属やプラスチックなどでその穴の部分を補修しなければなりません。
実はこの差は非常に大きなものがあります。
なぜなら、「傷が治る」とその傷は大きなものでない限り傷つく前とほとんど変わらない状態まで戻ります。そして何事も無かったように生活に支障がなくなります。
しかし歯の場合は一度傷ついたり穴があいてしまった場所は、もう元には絶対に戻ることはありませんので、一生治ることはありません。そのため金属やプラスチックなどの人工物で傷ついた穴を覆わないといけなくなり、覆った状態でその後一生を過ごしていかなければなりません。
これは傷に例えて言うなら、絶対に治らない傷に一生絆創膏を張っているようなものなのです。
それでは絶対に治らない傷に一生絆創膏を張ってあることは、日常生活の中でどこに支障が出てくるのでしょうか?
その理由は、絶対に治らない傷があることは、バイ菌が入りやすい状態が一生続いていることになるからです。
傷口にバイ菌が入ればその場所は、腫れたり、痛みが出たり、化膿したりしてそのうち腐ってきます。
つまり、非常にバイ菌が侵入しやすく腐りやすい状態であることが一生続いているため、後々の生活で支障が出てきやすいのです。
ここで皆さん思い出してもらえませんか?
「以前に虫歯を治したところが、また虫歯になってきた」
こんな経験をした覚えはありませんか?
その理由は上に説明したとおりなのです。
治療後の歯はばい菌が非常に入りやすいため、むし歯菌が入り込み、また虫歯になってしまうのです。
そのため歯は非常に特殊な部分ということなのです。
怪我をして病院へ通いその傷が治ったら「もう来なくていいですよ」といわれると思いますが、
歯に関しては治療をした後もバイ菌が入りやすい状態が続いているため、ずっとバイ菌が入らないようにしていくことが推奨されています。
歯の治療をして綺麗な歯になったとしても、それは傷が治ったことではないので、またばい菌が入り込んで汚染されないように更なるお手入れや定期健診が必要になってくるのです。
歯の治療をした覚えのある方はご注意ください。
上記の内容は、知人から紹介してもらったこの本に記載されていたことを、患者さんにも分かりやすく私がアレンジをしてみました。
ちなみにこの本は「歯を残すための治療方法」の専門書です。
自分の歯は抜かれたくないですよね
だれしも自分の歯は抜かれずにいたいし、一生自分の歯を使い続けたいと思っているはずですよね。
しかし、無症状なのに健診などを受けたときに 「歯を抜かないとダメかもしれない」 といきなり言われる可能性もあります。
例えば歯の神経を取った歯は、神経がある健康な歯に比べ膿が溜まりやすいという統計結果があります。
(この場合の「膿」とは専門用語では「病巣」というものですが、イメージしやすいように便宜的に「膿」という言葉で説明します。)
(ちなみにここでいう「歯の神経」は専門用語では「歯髄」といいます。)
その膿みは症状がまったく出ないまま大きくなってしまい、ある程度大きくなってしまうと 「歯を抜かないとダメかもしれない」 という事になってしまうかもしれません。
ではどうすればそうならずにすむのでしょうか?
歯の神経を取らなければ膿みも溜まりにくいのです。
それならば神経を取らないようにすればいいのですが、
むし歯が神経まで進行してしまうと激痛の恐れがあるため、
むし歯が進行してしまってからでは、歯の神経を取らなくてはなりません。
裏を返せばむし歯にならなければ、歯の神経を取らなくてすみます。
だから、むし歯にならないように、むし歯予防をしておけばいいのです。
・・・・・・というのは、あくまでも理想のお話です。
成人の方ならもう既にむし歯になったことがある方やむし歯の治療をしたことがある方がほとんどではないかと思います。
さらに進行したむし歯があればすでに歯の神経がない歯もあると思います。
(結構、歯の神経を取った事実を知らない方や忘れてしまった方もたくさんいらっしゃいます。)
そうなると、膿が溜まってしまうリスクがあることになります。
知らず知らずのうちに進行して膿が大きくなってしまい、最悪の場合抜歯をしないと治らない場合もあります。
そんな事態になることは、ご本人も嫌でしょうし、我々歯科医療従事者も避けたいところです。
ではそうならないようにするにはどうすればいいのでしょう?
順番に説明します。
第1段階です。
むし歯にならなければ歯の神経を取ることはかなりの確立で回避できるため、まずはむし歯予防が大切です。
むし歯予防の方法はいろいろありますので、主治医やかかりつけに歯医者さんに相談するといいと思います。
それでもむし歯ができてしまった場合は
第2段階です。
大きなむし歯になる前に処置をしたほうが良いです。
そして処置した歯にまたむし歯が再発しないよう、ここでも虫歯予防が大切になってきます。
歯を治療しても安心せず、第一段階に戻って虫歯予防を継続してください。
でも、うっかりむし歯が歯の神経の近くまで進行してしまった場合は
第3段階です。
できる限り歯の神経を温存する処置を施します。
その結果、歯の神経が温存できればここでも第1段階に戻って虫歯再発の予防を行います。
しかし、不幸にも歯の神経が温存できなかった場合は
第4段階です。
残念ですが歯の神経を取る処置を行う必要があります。
更なる感染の防護をした状態で、きれいに歯の神経を取って、
神経を取ったあとにできた空洞をしっかりと消毒をして、
ばい菌が入り込まないようしっかりとパッキングをし、
それによって膿が溜まるのをできるだけ予防します。
ここまで処置が終わったら、またむし歯の再発をしないように第1段階へ戻ってむし歯の予防を行います。
でも残念ながらここでどんなにしっかり処置をしても、膿が溜まることを100%防止することはできません。ある程度の確立で膿が溜まってしまうことがあります。
もし、膿が溜まってしまった場合には
第5段階です。
神経を取った後にできた空洞にパッキングをした薬を取って、再度膿を無くすべく消毒を行います。
つまり、第4段階の処置をもう一度行います。
ここでの消毒が奏効すればもう一度パッキングをして第1段階へと戻ります。
残念ながらこの処置でうまくいかないときは
第6段階です。
歯肉から切開をして溜まった膿を取り除く外科処置(局所麻酔の手術)を行います。
今までのこの手術の成功率は50%台といわれていましたが、この時に歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)を使用して処置をすることによって90%以上の成功率を達成することができるとの研究結果があります。
この手術が成功すれば、抜歯を回避することができます。そして第1段階へ戻ります。
しかしながら既に、この手術ができるような状態・症状の場合は
第7段階です。
残念ながらここまでくると抜歯しかありません。自分の歯を失ってしまいます。
この段階に相当するものが
むし歯が進行しすぎて歯がボロボロになってしまっている場合。(歯の神経を取っているとむし歯が進行しても痛みを感じないため、気がつかないうちにボロボロに
なってしまうこともあります。)
歯の根が折れてしまっている場合。(骨と違い歯は折れてしまうと、つくことはありません。)
手術でも取りきれない膿が溜まってしまった場合。(歯ごと抜いて膿を取り除かないといけない場合です。)
などがあります。
ここで話しは最初に戻りますが、無症状のまま第7段階になっているときは 「歯を抜かないとダメかもしれない」 と言われてしまいます。
果たしてあなたはどの段階の処置を受けたいと思いますか?
一生自分の歯を使い続けていくために、より初期の段階の処置を受けるよう歯医者さんへ相談してみましょう!
初期虫歯って聞いた事がありますか?
テレビ、新聞、雑誌、ネットなどでもここ最近目にするのがこの「初期虫歯」です。
皆さんは初期虫歯ってどんな病気なんだろうって思われているのではないでしょうか?
初期虫歯とはさまざまな見解はあると思いますが、ザックリいえば
「 健康な状態ではないけど、削って詰めるほどでもない 」
という状態だと思っていいのではないかと思います。
それでは自分の歯が「 健康な状態ではないけど、削って詰めるほどでもない 」 だった場合どうしたらいいと思いますか?
1.痛くないから放っておく → 初期虫歯とは健康から虫歯という病気の途中経過の状態です。放っておけば残念ながら虫歯という状態へ進行してしまい痛みが出てきます。
2.痛くなる前に削って詰めてしまう → 削って詰めるほどでもないものを削ってしまうのはもったいない。最小限の治療が歯の寿命を延ばします。
3.それならどうする? → 初期虫歯が削って詰めるところまで進行しないような対応策をとることがいいと思います。
あなたならどの方法を選択しますか?
初期虫歯の対応策は様々な方法があります。そのような方法の最新の情報収集のために定期的にセミナーに参加しています。
今回は景山正登先生のセミナーを受講してきました。スタッフと数年前に受講した事はありましたが、以前から進歩しているところもあり、新たな知識を身につけることができました。
初期虫歯の対応策としては、これもまたザックリ言えば
1.歯ブラシ・歯間ブラシ・フロスなどで歯についている汚れをきれいに毎日落としていくこと
2.定期的に歯科医院で初期虫歯のチェックを受け、歯のメンテナンスをしてもらうこと
このふたつが絶対に必要なこととなってきます。
そのほかには個人個人の生活習慣、虫歯になりやすさの虫歯リスク、フッ素などの使用状況などが影響してくるため定期的に歯科医師や歯科衛生士と相談していくことが大切になってきます。
初期虫歯の新しい診断方法で削らない虫歯が増やせるかも?
虫歯とひと言でいっても、進行具合によって分類されています。一般的なものとしてはCO、C1、C2、C3、C4と分類されています。今まで使われていた分類方法なので非常に使いやすいものなのですが、初期虫歯の診断については少し悩むところもあることは実際の診療でもあるところでした。
初期虫歯とはザックリ言えば予防を徹底して経過観察をしていくか、削って詰め物をするかのギリギリの状態の虫歯のことを言います。歯はできるだけ削らないほうがいいのですが、やはり虫歯が進行してしまった場合は削って詰めたり、歯の神経をとったり、最悪の場合抜歯をしたりなどの処置が必要になってきます。削らずにいたために虫歯が大きく進行してしまうとかえって歯に対するダメージが大きくなってしまいます。このあたりが世界中の歯科医師の大きな悩みとなっていました。
そこで、欧米の虫歯研究グループが初期虫歯の新しい診断方法を考案しました。「ICDAS」という診断基準です。これは初期虫歯を新しい基準の7段階のコード分類にしています。これによって診断することにより削らないですむ虫歯を増やすことができるかもしれません。そんな可能性を秘めた新しい診断方法なのです。
ここで一番重要なことは初期虫歯で削らなくてもいいと診断をしても、そのまま放置していては必ず虫歯は進行していきます。初期虫歯のまま維持していくためには、毎日自宅で行う適切なホームケアをして予防することと、定期的に歯科医院を受診して初期虫歯が進行していないかどうかのチェックの2つは必須となります。自分自身の歯を守るために是非実践して欲しいものです。
このICDASの同じ研修を受けた歯科医師のブログがありますのでご参考に閲覧してみてください。
むし歯予防先進国でのむし歯予防方法とは?
北欧のスウェーデンは国民のむし歯予防に成功した国のひとつです。どれくらいむし歯予防を成功させたかというと、一人当たり平均15本もあった12歳の子供たちのむし歯を、数十年後には一人当たり平均1本以下まで減らすことに成功しました。ちなみに現在の日本の12歳児では一人平均2~3本のむし歯があります。
12歳児といえば大人の歯(親知らずを除く)が28本全部だいたい生えそろってくる時期になります。昔のスウェーデンは大人の歯28本中平均15本も12歳児にはむし歯がありました。しかし、国をあげてむし歯予防に取り組んだところ一人平均1本以下のむし歯に予防することに成功しました。これだけ虫歯の数を減らせたので、むし歯が1本もない12歳児もたくさんいます。スウェーデンの12歳児の60%以上がむし歯ゼロなのです。これは3人中2人はむし歯がない子供たちということです。
そのためスウェーデンでおこなわれたむし歯の予防方法は世界各国で認められスタンダードとなってきつつあります。そのスウェーデンのなかでむし歯の予防方法発信の中心となった大学のひとつに「イエテボリ大学」というところがあります。(日本の歯科業界内でもかなり有名なスウェーデンの大学です。)そのイエテボリ大学の教授が2名来日して二日間のセミナーを開くとのことだったので、むし歯予防の本場で世界基準となりつつある予防方法を学ぶべくセミナーへ参加してきました。
とは言うものの、スウェーデンやイエテボリ大学のむし歯予防方法は世界的に有名になっているだけあって、その方法は日本でもかなり浸透してきています。大体の方法はすでに知っている内容でした。しかし、本や論文で読んだだけではうまく伝わりきれない細かな方法論や、ここ数年で研究が進みまた違った見解になっているところなどがあり、むし歯予防先進国のむし歯学(正式にはカリオロジーといいます)の教授から直接話を聞くということは今まで以上にむし歯予防方法について深く理解をすることができました。
深く理解できた内容のひとつに 「イエテボリテクニック」 というスウェーデンイエテボリ大学で行われているむし歯予防するための歯磨きのやり方があります。この歯磨きの仕方を直接指導してもらい、詳しいところまで教えていただきました。
ここで、むし歯予防に大切なことを要約して列記してみます。
1.「できる限り歯を削らない」ことであり、そのためには自宅で毎日行うその人に合った適切なホームケアと年間数回行うデンタルクリニックでの定期的なメンテナンスケアが必須になってきます。それによりむし歯の進行を止めることができ、結果的に削ることが回避できるようになります。
2.しかし、それでもむし歯で穴があいてしまった場合はそれ以上にむし歯の穴が大きくならないよう、できるだけ早期に削って詰める必要があります。詰めた後も虫歯が再発しないよう適切なホームケアとメンテナンスが必須です。
3.むし歯予防に年齢は関係ないこと。歯が生えてきた乳児から全部の歯がなくなるまでの人すべてがむし歯予防の対象になります。つまり、自分の歯がある人は全員むし歯予防が必要になります。
主にこのようなことを守ることによってスウェーデン国民のむし歯予防に成功しました。今回、学んできたイエテボリ大学の方法を患者さんへ還元することにより、患者さんのむし歯予防をより強化していきたいと考えています。
また歯周病とむし歯・矯正治療とむし歯・ブリッジやインプラントとむし歯・口臭とむし歯・高齢者とむし歯・全身疾患とむし歯・などの関係についても詳しく話をしていただきました。口のなかのことなので虫歯以外のことも十分考慮していかなければならず改めて幅広い知識と技術、そして日々進歩している歯科医療の情報を常に入手していかなければならないと強く思いました。
今回は東京都町田市にある宇藤歯科医院の宇藤院長、岐阜県岐阜市にあるノアデンタルクリニックの渡辺院長と一緒に参加してきました。この間、セミナー内容についてはもちろん普段の診療などについても意見交換をしていたので、色々なことを学べた有意義な二日間を過ごすことができました。
80歳で歯が20本以上も残っていると元気?
8020運動とは「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。厚生労働省と日本歯科医師会が提唱している運動です。
なぜ、80歳でも20本以上の歯を保とうという運動が提唱されているかというと、健康寿命が延びる可能性があるからです。
健康寿命とは健康で明るく元気に生活する期間のことで、寝たきりや痴呆にならないで生活していける期間のことです。
では、どうして自分の歯が残っていると健康で生活していけるのでしょう?
その答えは8020の調査研究がされた結果があります。
ひとつは20本以上歯が残っている人は、総入れ歯の人より4倍も良く噛め、QOL(生活の質)を高めているとの結果があります。
ふたつめは20本以上歯が残っている人のほうがバランス能力、俊敏性、脚力などの運動能力が高く、自力歩行ができたり転倒しにくいということがいえます。
みっつめは視覚や聴覚も歯が残っている人のほうが良好であったとのことです。
これらのことより20本以上歯を残しておくと健康寿命が長くなります。
先日、日光歯科医師会主催の健康フェスタで80歳で20本以上歯が残っている方の表彰式を行いました。そのときに参列された方は80~90歳とご高齢の方々でしたが皆さん元気で、一緒に見ていた職員の方々も「とても80歳以上の集団には思えないほど若々しい!」と絶賛しておりました。
しかし、80歳で20本以上歯がある人の割合はおおよそ10人のうち1人程度です。若いうちから虫歯や歯周病などによってどんどんはがなくなってしまう方が多いため、80歳になったときは10人中9人は自分の歯が20本未満になっています。
80歳でも自分の歯を20本以上保つには今から虫歯と歯周病の治療と予防をしっかりとやっておかないと、達成することは難しいものになります。