歯の矯正治療はいつ開始すればいいのか?

歯並びや咬み合わせが気になる場合、歯の矯正はいつごろはじめればいいのでしょうか?

答えは 「歯科医師にそのタイミングを見極めてもらうことが一番正確」 だと思います。
その理由はいろいろな状態や条件があるので、その判断は簡単にはいかず難しいからです。
治療開始時期が早い場合は適切な時期まで待てばいいですが、なかには自己判断で待っていた為に適切な治療開始時期を逸する場合もあります。

歯ならびやかみ合わせの異常はその程度によってさまざまな種類があり、その種類によっても治療方法が変わってきます。
・前歯が1本だけ内側に入ってしまったもの、または外側に飛び出しているもの
・歯が前後に重なってしまいガチャガチャになっているもの
・全体的に出っ歯になっているもの
・下顎が前に出てしまい受け口といった状態になってしまっているもの
・上の歯と下の歯がかみ合わず隙間が開いてしまっているもの
・八重歯になってしまっているもの
・いつもポカンと口を開いていることが多く、唇が閉じにくくなっていること
・上の歯の中心と下の歯の中心がずれているもの

また、乳歯から永久歯への生え変わりの状態や年齢によっても治療開始時期や治療方法が変わる場合もあります。
・まだ乳歯しか生えていない頃
・乳歯が抜けはじまり、前歯や六歳臼歯が生え始めた頃
・前歯が大人の歯になってきたけど奥歯に乳歯がまだ残っている頃
・大体の乳歯が抜けてしまった頃
・12歳臼歯が生え始めてきた頃
・大人の歯がほとんど生えそろい、体の成長も止まってきた頃
・成人を向かえ20代の頃
・生活が落ち着いてきた30代以降

そのほかにも
・むし歯の状態やむし歯のなりやすさやむし歯のリスクリスクの問題
・歯周病や歯肉炎がある場合、また歯の重症度によっても変わります。
・顎の関節の状態が矯正治療を行っても大丈夫かどうか
・学校や仕事の都合
・転居や転勤の可能性
・全身的な病気があればその影響

などなど、さまざまなことが矯正治療には関連してきます。このほかにも状況によってはいろいろな条件が発生する場合もあります。
これらをすべて一つ一つチェックして、それによって矯正専門の歯科医師がおおよその治療を開始する時期を決めています。
まだ治療開始の時期ではないと判断した場合は、3~6ヶ月間隔で定期的に経過観察を行い適切な治療開始の時期を判断していきます。
その後に精密検査を行ってからより正確な開始時期と治療期間、治療方法などを決めていきます。

歯並びが気になり、矯正したほうがいいかどうか悩まれている場合は、まずは歯並びの矯正治療が必要かどうかを歯科医師に判断してもらわなければなりません。
矯正治療が必要と思われる場合には、矯正治療を開始する時期を定期的に受診しながらその時期を待つことが、最小限の治療で最大限の効果を得られます。
悩み続けるくらいなら早めに相談してみてください。必ずそのほうがメリットが大きいのです。

おしゃぶりが歯並びに影響しないでしょうか?

Question  うちの孫はおしゃぶりが大好きで、いつも手放せません。歯並びに影響しないでしょうか?

Answer  4歳までに止めさせないと永久歯に影響がでます。ご家族が一丸となって卒業させましょう。

お祖母ちゃまから、お孫さんの歯のことで質問をいただくなんて、「子育て歯科」の理想の姿です。

おしゃぶりや指しゃぶりは、奥歯を噛んでも前歯が噛み合わない開咬(オープンバイト)という不正咬合の原因になります。開咬は、前歯でものが噛み切れない、反対に使いすぎる奥歯がむし歯や歯周病になりやすい、という問題のおおい噛み合わせです。

おしゃぶりや指しゃぶりは、永久歯に影響が出るので、そろそろ止めさせたいですね。

止めさせ方は、とても簡単。おしゃぶりの卒業イベントをお家で開き「○歳になったので、おしゃぶりにはバイバイしましょう」といって、おしゃぶりをポイッと捨ててしまいます。すかさず、全員で拍手でおめでとうと、ほめてあげると、たいてい止められます。多くの患者さんが成功したといっていますから、本当です。これが、おしゃぶりのよいところ。指しゃぶりではこうはいきません。身体の一部なので、隠れて再開する、爪噛みに変わるなど、後をひきやすいのです。

とはいえ、おしゃぶりや指しゃぶりをする子の深層心理は、もっと遊んでほしい、もっとかまってもらいたい、などの精神的欲求の解消手段として使われることが多いのです。親子のふれあいが不足していないか、一人で遊ばせる時間が長くないかなど、周囲の大人も生活を見直していただきたいのです。

「舌側矯正装置」というものがあるそうですが、どういう装置ですか?

Q 「舌側矯正装置」というものがあるそうですが、どういう装置ですか?舌を傷つけたりしませんか?

A 表側にする装置にくらべて料金が高くなりますが装置が見えないのが利点です。

舌側矯正装置とは、通常は歯の表面に付ける装置を、歯の裏側につける方法です。25年ほど前に日本の先生が世界に先駆けて開発、米国の先生も違う形の舌側矯正装置を考案し世界中に広がりました。とくに日本、韓国、ヨーロッパで広まり、日本の歯科医の多くはトップレベルの技術でたくさんの患者さんの治療をしています。

この装置の一番の利点は見えないこと。矯正をしたいけれど装置に抵抗がある方には福音となりました。モデルさん、タレントさんなど多くの芸能人や有名スポーツ選手もこの方法で治療を受けています。

ただ、違和感が表の装置にくらべて強く、しゃべりにくい、歯みがきしにくいなどの問題点もあります。舌を前に出す癖が改善されやすいという利点があります。

技術的に難しいので誰でも治療できるわけではありませんし、下側矯正装置を得意にしている先生が近くにいない場合もあります。また料金も表の装置に比べ、1.5倍から2倍高くなるのが一般的です。治療期間は歯並びの状態によっては舌側矯正装置の方が早いときもありますが、通常は長くかかるとお考えください。装置にはそれぞれ利点欠点があります。目立ちやすさ、値段、治療期間、お手入れ、治り方など何を一番に優先させるかをよく相談してみましょう。

歯並びの治療には、どうしてあんなに長く時間がかかるのでしょうか?

Question 歯並びの治療には、どうしてあんなに長く時間がかかるのでしょうか。

Answer  歯に無理のない力をかけ顎の骨のなかを少しずつ移動させるからです。

歯並びの矯正治療とは、矯正装置で歯に無理のない力をかけ、歯槽骨(歯の根が生えている顎の骨)のなかで少しずつ移動させる治療です。

骨代謝を利用してゆっくりと正しい位置にまで持っていくわけですから、どうしても時間がかかってしまいます。髪の毛が1ヶ月で何センチも伸びないように、は1ヶ月で数ミリ動くだけです。同じ年齢でも個人差によって移動量は異なりますが、1ヶ月に動く量には限度があることを理解してください。

矯正装置は4~6週間に1回チェックを行い、歯の動いた状況に合わせて調整します。

年齢や不正咬合の状態にもよりますが、矯正装置をつける機関は抜歯をする場合、一年半~2年かかります。その後は歯がもとの位置に戻る(治療後の後戻り)のを防ぐため、取り外しのできるリテイナーという保定装置をはめます。リテイナーは、はじめの1年くらいは1日中、その後は夜だけというように、徐々にはめる時間を減らしていきます。

リテイナーをはめる期間は矯正装置をつける期間と同じくらいかかるので、完全に矯正治療が終わるまで治療期間と保定期間をあわせて3~4年は必要だと考えてください。

矯正治療は期間も長くかかり、歯みがきのトレーニングなど治療中の患者さんが努力を要するたいへんな面もありますが、その努力の分確実に美しさと健康な歯を手にすることができるのですから、ぜひ頑張ってほしいと思います。長い人生のほんの数年のことと思えば、たいした期間ではないと思いますよ。考え方をポジティブにしてみてはいかがでしょう?

矯正治療は大人でもできますか?

Question 子どもの矯正治療を見て、わたしもしたくなりました。大人でもできますか?費用は大人と子どもとではちがいますか?

Answer  大人でもできます。費用は子どもと基本的に同じです。

当院では「子どもが治ったのをみて私も」「うちの子と一緒に」というお母さまが多くなっています。励ましあって矯正治療をなさる姿はとても微笑ましいものです。

ちなみに当院では永久歯の治療に変わりないので、大人も子どもも同じ料金です。

矯正技術の進歩によりいろいろな矯正治療法がありますので、歯が存在し、それを支える歯槽骨さえあればいくつになっても矯正適応年齢です。アメリカ矯正学会で有名なザクリソン先生は、60代はもとより70代、80代の方の矯正治療例を発表されました。

例えば62歳の女性という方もいます。お孫さんの治療に付き添ううちに昔から気になっていた出っ歯を治したいとはじめました。治療後は、よく噛めるようになっただけでなく、横顔も美しくなって若々しくなりました。現在74歳ですが毎日生きいきとしているそうです。

年をとると食べることがとても重要になります。40歳で噛み合わせに不安があるという方は、平均寿命から考えたらまだ倍以上の年数で自分の歯を使う計算になります。長い人生を素敵に過ごすため、ぜひ矯正治療をおすすめします。ただし、40歳を超えると歯周病にかかっていたり処置歯が多かったりと治療が難しくなってきます。信用できる先生とじっくり話し合ってください。また、子どもの頃に比べ、適応能力が落ちてきますから、矯正装置の違和感がなかなかなくなりません。やり遂げる強い覚悟は必要です。

矯正装置をつけると痛いですか?

Question 矯正装置をつけると痛いですか?歯を抜くこともあると聞きましたが、抜かずに矯正することはできますか?

Answer 歯を移動させるわけですから、多少に痛みはともないますが、数日食事がしにくい程度です。

 矯正装置は、歯に力を加えて歯を移動させるわけですから、多少の痛みはともないます。痛みには個人差がありますので、ほとんど痛みを感じない方もいれば、痛く感じる方もいます。ただし、常に痛いということはなく、硬いものや歯ごたえのあるものを噛むと痛みがあり、最初の2,3日食事がしにくい程度のことだと思ってください。

 最近は非常に弱い力で歯の移動を行う方法もあり、痛くない治療が主流になってきています。我慢できないような痛みはありませんので、ご心配なく。

 矯正治療の過程で、歯を抜くことはあります。日本人は急速に「小顔」になってきていて、それにともなって歯の生える場所(歯槽骨)も小さくなってきています。しかし、歯の大きさや数は昔と変わらないため、人によっては歯の数を減らさないと歯が生えきらないことがあるのです。

 ただし、すべての人が歯を抜く必要はありません。要は、顎の大きさと歯の大きさのバランスが非常に悪い場合に抜く必要があるのです。少し悪い場合は、歯の生えてくる場所を拡大したり、歯を後方に移動させたり、歯を治すことも可能です。抜かなくてもきれいに治る人は大勢います。

 人の顔がすべて違うように、歯や顎の形、大きさなどは十人十色。常に最適な治療を心がけていますので、まずは矯正を専門に行っている歯科医師に相談してみてください。

矯正中にスポーツをするときに気をつけるポイントを教えてください。

Question 矯正中にスポーツをするときに気をつけるポイントを教えてください。

Answer 口元にボールや打撃を受けて矯正装置が壊れないように気をつけてください。

 スポーツ選手にとっても歯ならびは重要です。世界の一流アスリートの多くは矯正治療をして歯並びを治しています。噛み合わせを治すことで、体のバランスがとれるうえ力が入るからです。テニスボールを打つときなど、力を入れるときは知らず知らず奥歯に力が入るもの。この噛み合わせが悪ければ歯に負担がかかり、歯の寿命を短くすることにもなりかねません。

陸上のカール・ルイス、ゴルフのタイガー・ウッズ、テニスの杉山愛、スケートの岡崎朋美などスポーツのジャンルを問わず矯正治療経験者はいっぱいです。矯正経験の有無は分かりませんが、テニスのシャラポワの歯ならびも取ってもきれい!「一流アスリート=歯並びがいい」という公式は世界共通のようです。残念ながら、日本においてはこの公式は当てはまらないようです。いまだ「歯並びの重要性」に気がついてくれないスポーツ関係者にがっかり。日本が「歯並び後進国」と呼ばれるゆえんでしょう。

 さて、矯正中にスポーツをしてもまったく問題ありません。でも、サッカー、バレー、野球などのボールが口元を直撃する可能性があるスポ-ツはご用心、衝撃で装置が壊れたり、まれに口の中が切れたりすることもありますのでマウスガードを装着しておくと怪我の予防には効果があります。ラグビーのように激しいスポーツにはマウスガードを必ず装着するとよいでしょう。

 もっとも注意が必要なスポーツはボクシングなどの格闘技。装置で口の中が切れてしまうのはマウスガードを装着しても避けられないかもしれません。

矯正装置をつけている間は、どんなことに気をつけたらよいでしょうか?

Question 矯正装置をつけている間は、どんなことに気をつけたらよいでしょうか?

Answer お口の中を清潔に保ち、硬い食べ物はなるべく避けましょう。

矯正装置は自分で取り外しのできないものがほとんどで、治療開始から終了までの1~2年間、ずっとお口の中に入りっぱなしになります。しかもとても複雑なつくりですから、装置装着中はとにかくお口の清掃状態に気を配ることが重要です。

 「食べたらみがく」というのは当たり前のことですが、装置がジャマして上手にみがくのが難しいのです。矯正治療中は歯ブラシだけでなく、補助歯ブラシやデンタルフロスなどを駆使して、時間をかけてみがくがひつようです。

 また、毎食後完璧にみがくのは、時間的制約のある現代人には大変です。時間のない食後は簡単でもかまいません。少なくとも一日一度は時間をかけて、ていねいにみがきましょう。

 きちんとみがかないと、むし歯や歯周病になってしまいます。何のために矯正治療をしているのかを考えて、とにかく口腔清掃に注意してください。フッ素塗布や洗口剤の利用を補助的に行うのも良い方法です。

 矯正装置は、強力に歯の表面に付いているわけではなく、ある程度の力が加わると外れるようになっています。

 治療中はナッツ類、おせんべい、フランスパンなど硬い食べ物をかじるのは避けましょう。硬いものは小さくちぎって、奥歯でかむようにします。そうしないと、装置が壊れる可能性があります。

 チューインガムは、装置に慣れてきたら、100%キシリトール入りなら食べても大丈夫です。このガムはむし歯菌を抑制することでも知られていますので、ときには積極的にかんでもらうこともあります。

子供の歯並びをよくするにはどんなことに気をつけたらよいか?

Question 子供のかみ合わせや歯並びをよくするには、小さいころからどんなことに気をつけたらよいでしょうか?
Answer よくかむこと、むし歯にしないこと、悪習癖を止めることが重要です。
不正咬合の原因には先天性原因と後天性原因があります。遺伝などの先天性原因の不正咬合を防ぐのは難しいですが、後天性原因は日常生活に注意すればある程度予防できます。
① よくかむこと
乳歯は2歳半くらいに完成し、6歳臼歯が生えるころまでが一番成長する時期ですので、この時期によくかむことが重要です。乳歯間に隙間ができて、永久歯の場所が確保されます。
「一口ごとに30回以上かんで」などといわれますが、私は一口でいつもより3~5回分余分にかむことから始めてもらいます。そして毎食一品はかみごたえのある食材(ごぼう、レンコンなど何でも)を食べてもらうよう指導しています。
②むし歯にしないこと
乳歯をむし歯にして抜いてしまうと、永久歯のための隙間は減少してしまいます。乳歯間に十分な隙間が確保されれば、ガタガタの歯ならびは防げるはずです。むし歯になったらすぐに治してもらいましょう。
③悪習慣をやめること
指しゃぶり、異常嚥下癖、舌前突癖などは、よい歯ならびの妨げになります。また、ほおづえや寝る姿勢(うつぶせ寝や同じ向きで寝る)も顔面非対称の原因となります。口呼吸も歯ならびの大敵です。鼻炎や扁桃肥大などで、鼻呼吸ができない場合もありますので注意が必要です。
お子さまの歯みがきをときどきチェックするとともに、かみ合わせも常に注意してみましょう。受け口や出っ歯などはわかりやすい不正咬合です。乳歯がいつまでも残っていたり、かみ合わせが気になっている場合は矯正医に早めに相談してみましょう。

矯正中の歯みがきでは、ふつうの歯みがきとはちがった注意が必要ですか?

Question
矯正中の歯みがきでは、ふつうの歯みがきとはちがった注意が必要ですか?
Answer
矯正中は歯みがきが難しい状況になるので、時間をかけて1本ずつみがくようにします。
一般的な矯正装置は、治療中は取り外しができず、歯に装着されたままになるので、一時的にせよ歯みがきが難しい状況になります。そこで、次の①~⑤に注意して、時間をかけて1本ずつみがくように指導しています。
① 最初、歯みがき剤はつけずにみがく。最初からつけると泡がでてさっぱりした気がするので、実際はみがけていなくてもみがいた気になってしまいます。最後に歯みがき剤をつけて仕上げみがきをするように。
② 手鏡を見ながらみがく。洗面台のような大きな鏡では、奥のほうがよく見えません。自分専用の手鏡を使うとよいでしょう。
③ 補助歯ブラシの使用。矯正装置は複雑な装置です。人によっては普通の歯ブラシだけでは上手にみがけない場合があります。細かいところは、インタースペースブラシなど小回りのきく小さなブラシを使います。
④ デンタルフロスの活用。歯と歯の間(隣接面)はなかなかみがけない場所。面倒でもフッ素つきのデンタルフロスを利用しましょう。
⑤ 洗口剤の利用。本人はちゃんとやっているつもりでも、残念ながらみがけていないこともあります。そこで、寝る前にフッ素含有の洗口剤でブクブクゆすぎましょう。
おすすめ歯ブラシは、小回りがきくようにヘッドは小さめで、毛の硬さはやわらかめ。硬いものは歯肉を傷めるので避けましょう。握り方は必ず鉛筆もちで、ていねいに1本ずつ磨いてください。矯正中の歯ブラシは装置のせいですぐ傷み、寿命がはやいのでこまめに取り替えましょう。