日本顎関節学会で新たに学んできたこと

日本顎関節学会2013

 2013年7月20、21日は日本顎関節学会へ参加してきました。
 日本顎関節学会とは、国内外の顎関節に関する研究や診療を行っている専門家たちが集まって、研究成果の発表や情報の交換、討論などを行う場です。
 日本顎関節学会専門医である私(沼尾)も、学会へ参加をして新しい知識と技術を学んできました。

 トピックな話題としては顎関節症の診断基準について、ここ数年世界中でスタンダードになってきている診断基準についての議論がなされました。良い治療を行うためには適切な診断が絶対に必要です。そのため診断基準というのは良い治療を行うための第一歩となります。その診断基準をより良いものにしようと研究者や専門家たちがさまざまな意見を交換していました。このような議論が世界中で行われており、より良い診断基準作りが今後加速していくようです。

 顎や顔面の痛みの原因のひとつになっているだろうとされている食いしばりや歯軋りなどについても研究が進んでいます。そのような痛みの原因となる食いしばりや歯軋りは、無意識のときにやっていることも多いためなかなか気がつかないことが多く、いつになっても痛みの原因が解消されないことがあります。そんな無意識な食いしばりや歯軋りを辞めるような機械の研究も進んでおり、今後この研究は非常に楽しみなところだと感じました。

 通常、何もしていないときは上顎の歯と下顎の歯は離れていることが正常です。極端なことを言えば食事以外で歯と歯が当たることはほとんどありません。咬んだ状態だと話をすることが難しいと思いますが、咬んだ状態が通常は不自然な状態だからです。このように上顎と下顎の歯が接触している状態を最近ではTCHと呼ぶことがあります。このTCHはメディアでも取り上げられることも多くなってきました。

 顎に痛みがあったり、口が開きにくかったりとの症状が出る病気の一つに顎関節症というものがあります。そんな痛みや口の開きにくいときに対応する治療方法のひとつを少人数実習形式で教えていただけるセミナーが学会期間中に開催されたので、参加してきました。国内でもトップレベルの顎関節治療の専門家たちの直接指導を受けてきました。長年の治療経験と蓄積された技術を我々受講生たちに惜しみなく伝え教えてくれました。日頃の疑問をぶつけてみましたが非常に分かりやすい回答をいただき一気に解決いたしました。
 名医と呼ばれる方々の素晴らしい知識と技術に改めて驚かされ、そしてその教えをいただいたために彼らに一歩近づくことができました。この教えていただいたことは今後の毎日の診療に生かして、患者さんへ還元していきたいと思います。

 日本全国の知人の先生たちとも再会をしていろいろなお話をして、意見交換をすることができました。
 二日間という短い期間でしたが、非常に有意義な時間をすごすことができました。

日本顎関節学会2013講演中

夜間の歯ぎしりがひどいと家族に言われました

Question 夜間の歯ぎしりがひどいと家族に言われました。どうしたらやめることができますか?

Answer ストレスを減らすための、生活環境の見直しをおすすめします。

 歯ぎしりをどのようにしたらやめられるかというご質問です。歯ぎしりの本態は世界中の研究者によってさまざまな研究がなされていますが、今のところよく分かってはないようです。しかし、基本的に患者さん自身の本質的な体質、性質と精神的ストレスが大きい要素として考えられております。

 このように、歯ぎしりは病気と認識されておらず、むしろ「個性」として認識されているので、治療という概念はありません。

 しかし、歯ぎしりがあると、周囲に迷惑をかけるばかりか、ご自身の歯や歯周組織、またはかむ筋肉や関節にも負担をかけることになるので、何とかコントロールしたいものです。

 歯ぎしりの原因が個性とストレスということなので、「歯ぎしりコントロール」の要素として、個性の変更とストレスの低減が考えられます。「歯ぎしりをする人」という個性を変えることができれば、非常に結果がよいのですが、実際には個性の変更は難しいので、ストレスの低減が実現可能なコントロール法ということになります。

 職場の上司が退職したとたんに歯ぎしりが消失した症例があります。また、なかには転職と同時に歯ぎしりしなくなった方や、離婚したら歯ぎしりしなくなったという方もおられます。また、歯ぎしりのまったくなかったか方が、生活環境の急変と同時に歯ぎしりが出現した症例もあります。

 このようなことから、気づかなかった精神的ストレスが歯ぎしりの原因になっていることもありますので、ご自分の生活環境を見直してご覧になったらどうでしょう。

 マウスピースを使用することによって歯ぎしりや音が軽減したりするケースもあります。