最近の医療の動向 2007

病気治療の医療から健康づくりの医療へ

国立の研究機関の方の講演に行ってきました。
そこで聞いてきた内容を分かりやすく書いていきたいと思います。
今までの病院のかかりかたは、病気になってから治療をするといった方向性でした。
みなさんも風邪を引いて熱が上がったから病院に行くとか、頭が痛いから病院に行くとか、フラフラするから病院に行くなどと何か症状があってから病院を受診していたと思います。
しかしそれでは、症状が悪化してから治療するので治るまでに費用と時間がかかってしまったり、ひどい場合は病気が進行しすぎていて手遅れな状態になってしまったりと、後手後手の処置になってしまうことが多くあります。
後手に回らないようにするために、病気になってからではなく、健康診断を定期的に行い病気の原因になりそうな因子を早めに治療しておくことが推奨されています。
例えば、
血圧が高いのを放置しておくと、脳卒中や心筋梗塞になってしまうので、そうなる前に血圧をコントロールをしておく、とか
血糖値が高いのを放置しておくと、腎臓や網膜などに障害が出てきてしまうので、そうなる前に血糖をコントロールしておく、とか
血圧や血糖をコントロールすると聞いてピンときましたか?
これはメタボリックシンドロームという名前で盛んにPRされているものです。
「病気を治療することよりも、病気にならない治療を優先する」
といった考え方に基づき、そのようなことになるのです。
もちろんこの考え方は歯科領域にも適応できる話です。

栄養と歯

健康でいるためには栄養を必要かつ十分に取らなければなりません。
(もちろん取りすぎればメタボリックなどの危険にさらされますが・・・・)
しかし歯が悪いと健康を維持するための栄養摂取に大きな影響を与えることは、既にデータとして出されています。
70歳以上の方を対象に、残っている自分の歯と栄養摂取状態の統計を取ったものがあります。
そこでは20本以上自分の歯が残っている人は、魚や野菜の摂取量が有意におおく、バランスよく食事を食べられる結果が出ています。その方たちは栄養状態も非常によい結果も出ました。しかし、その一方、自分の歯が少なくなればなるほど、栄養状態は偏っていくそうです。
最近は食育という言葉もよく聞かれますが、食べることの重要性はここで説明するまでもないと思います。健康に大切な栄養が、歯の残っている数で左右されるという結果となりました。
そしてもうひとつは、同じ70歳以上の方で咬む力を測定した結果があります。そのなかで自分の歯の数が28本ある人(永久歯は親知らずをのぞいた総数は28本です。つまり、永久歯が1本もダメになっていない方です)の咬む力は、若い人とほぼ同じ力がだせるとのデータも立証されました。もちろん咬む力が強ければ食べたいものは何でも食べられますので栄養も偏らなくなります(食べすぎには注意ですが・・・・)。
自分の歯がなくなってしまい、部分入れ歯や総入れ歯などで28本に歯の数を回復した方の場合では、咬む力はそこまで回復することはありませんでした。自分の歯には及ばないということがここでも立証されています。

運動と歯

体を動かすことも健康には大切です。そして、体が動かなくなれば健康に影響が出てきます。
そこで体を動かすことと、歯の関係について実験したデータがあるので紹介いたします。
バランス感覚をみる「片足立ち」で何秒立っていられるかという試験を行ったところ、自分の歯の数が多い人ほど長時間たっていることができたそうです。さらに、物を咬み砕く力が高い人ほど長く立っていられたそうです。
バランス感覚が鈍れば、高いパフォーマンスが出来なくなるばかりか、体勢を崩して転倒などによる怪我の可能性も高くなります。これはトップアスリートはもちろん一般の方でも起こっては欲しくないことだと思います。
同様にジャンプ力についても試験をした結果、歯の数とジャンプ力にははっきりとした傾向は出なかったそうですが、物を噛み砕く力が高い人のほうがジャンプ力の成績はよかったとの結果も出ています。
握力については、歯の数も物を噛み砕く力についても、明らかな傾向は今回の実験ではなかったそうです。
数年前のことになってしまいますが、マウスピースについてのデータもあります。通常マウスピース(マウスガードといわれています)は、コンタクトスポーツにおける口腔内の怪我防止のために装着します。
パワー系の筋肉では、マウスピースを入れたほうがパワーアップするというデータがありました。例えばウエイトリフティングなどゆっくりと力をかけることに関しては有効であるとの結果が実験で得られたそうです。しかし瞬発系の筋肉に対しては明らかな違いはなかったとのことです。スピードアップに有効とは実験的にはいえなかったそうです。
しかし、このマウスピースに関するものは数年前にデータなので、最新の研究ではどのようなデータが得られているかは、。。。。。すみません、勉強不足でまだ私は把握していません。最新データが分かったらここで書き込みをしたいと思います。
余談ですが、部分入れ歯が必要なほど自分の歯がなくなっても、マウスガードの作成は可能です。全部歯がある方も、何本か歯がなくなってしまった方も、スポーツ事故でこれ以上歯をなくさないようにするために、是非コンタクトスポーツを行うときには、歯科医院で自分の口にぴったり合ったマウスガードの作成と装着をお勧めいたします。既成のものと比べると装着感は断然違うので、いいパフォーマンスが出来ると思います。

休養と歯

先日の講演でお話をしてくださった、 国立の研究機関の方の最新の動向についてできるだけ分かりやすく書き込みをしています。今回はその第4弾です。
体を休めることは健康を維持するために必要なことです。特に毎日のことである睡眠が重要になってきます。
そこで睡眠と歯の関係について研究を進めているそうですが、なかなか難しいそうです。
まず睡眠のデータを取るためには、寝ているときのデータが欲しいので、その実験に参加してくれる方は1泊していただける方でないといけません。そして実験をするほうは深夜の仕事になります。そうやってコツコツとデータを集めるのですが、傾向が分かるほどの数がまだ集まらないそうです。そのためにはっきりとした結果がまだでていないのが現状だそうです。
これについてはもうしばらくお待ちください。それにしても研究者って大変です。頭が下がります。こうやってコツコツと積み上げていった優秀な研究者のデータを、現場の私たちが患者さんに対して有効に使わせていただけることはとてもありがたく思っています。

こころの健康と歯

こころの健康とは、いきいきと自分らしく生きるための重要な条件で、「生活の質」に大きく影響するものです。
こころの健康には、個人の資質や能力の他に、身体状況、社会経済状況、住居や職場の環境、対人関係など、多くの要因が影響し、なかでも、身体の状態とこころは相互に強く関係しているといわれています。
こころの健康と歯については、あるアンケートによる結果があります。その結果には
・歯並びが悪かったり、歯の色が気になって、人の前で笑うことが出来ない 。
・口臭が気になって、他人と話すことが出来ない。
・歯の痛みや入れ歯などのために、食事が思うようにできず、ほかの人と食事ができない。
・顎の痛みがあり、うたを歌ったり食事が思うようにできない。
などの悩みが多くあり、それがストレスとなってこころの健康によくないとのことです。
上のアンケート結果でも分かるように、口の悩みは日常生活に密着していることが多く、ストレスとしてもかなり大きく負担となるようです。
海外で行われた別のアンケートでは次のような結果がでています。
人生のイベントでどれだけ苦痛があるかを点数化してもらうアンケートです。
その中でもっとも苦痛が大きいと点数が高かったものは「肉親の死」です。
「義歯を入れるようになる」ということも高得点だったそうです。やはり入れ歯は相当なストレスを感じるということであり、「義歯を入れるようになる」ことより「勃起不全になる」(このアンケート項目が海外らしいですが・・・)というイベントのほうが点数が低かったそうです。
果たしてあなたはどちらのほうがショッキングな出来事ですか?(男性限定の質問ですね)

たばこと歯

たばこに関しては現在、禁煙運動も盛んですね。確かに肉体的には悪いことばかりです。
たばこは、肺がんをはじめとして喉頭がん、口腔・咽頭がん、食道がん、胃がん、膀胱がん、腎盂・尿管がん、膵がんなど多くのがんや、虚血性心疾患、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、歯周疾患など多くの疾患、低出生体重児や流・早産など妊娠に関連した異常の危険因子であります。
恐ろしい病気がずらずらと並んできます。その中に歯周疾患も含まれています。
確かにたばこを吸っていると歯肉の健康を保つことは難しくなり、歯周病が悪化していくリスクがぐんと上がります
愛煙家の方も「散々吸っているのだからいまさらやめても・・・」と思っている方も多いかもしれませんが、禁煙に成功すれば、喫煙を継続した場合に比べて、上に書いてある疾患の危険性は減少するとの報告があります。
さらに、たばこによる疾病や死亡のために、1993年には年間1兆2000億円(国民医療費の5%)が超過医療費としてかかっていることが試算されており、社会全体では少なくとも4兆円以上の損失があるとされているとのデータもあります。
私も昔はたばこを吸っていたので、愛煙家の気持ちはよく分かりますが、残念ながら愛煙家に対しては厳しいデータしかないのが現状です。

アルコールと歯

アルコールも皆さんの生活の中にいろんな形で密接に関係していることと思います。最近は飲酒運転による事故でいろいろ問題となっていますが・・・・・・
アルコールを飲むことによってその慢性影響による肝疾患、脳卒中、癌などの臓器障害があります。
口腔内に関しては大量にアルコールを摂取していると歯周病のリスクが2倍になるとの報告があるそうです。
よく勘違いしている方もいますが、「お酒でアルコール消毒してバイ菌をやっつける」ことは決してできません。お酒を飲んで、つまみを食べて、歯に汚れをたっぷりつけて、酔ったまま寝てしまうことは、やっぱり歯周病にも虫歯にもなってしまいます。
できることなら、そういうときも歯を磨いてもらったほうがいいです。酔ったときに歯を磨くことが難しいことは重々承知ですが・・・・・・

口の中にもピロリ菌

ピロリ菌はヘリコバクターピロリと呼ばれる、人間の胃の中に住んでいる細菌です。この細菌が胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因になっていることが最近の研究で分かってきています。そのため潰瘍を再発する方に対してピロリ菌をやっつける除菌療法も行われるようになっているそうです。
胃の中にいるピロリ菌ですが、実は口の中にも存在しているそうなんです。
歯垢(デンタルプラーク)と 呼ばれている歯の汚れの中に、34.1%の割合でピロリ菌が存在するとの研究データがありました。
またピロリ菌をなくす除菌療法を行うと、90%の方の胃の中からピロリ菌がなくなるそうですが、口の中のプラークの中には除菌療法を行っても60%が生き残っているそうです。
プラークとは細菌が出したネバネバするものと、その中に含まれる大量の細菌とで出来ています。分かりやすく言えば細菌のすみかです。
細菌はそのプラークの中で増殖をしてさらにすみかを大きくしていきます。細菌にとってプラークは居心地がとてもいい場所になるのです。その中には虫歯のバイ菌や歯周病菌などが大量にあります。
ピロリ菌もその細菌がすみやすい環境に守られて、除菌療法を行っても生き残ってしまうようです。
細菌が大量発生するプラークをしっかりと取り除くことが出来れば、虫歯や歯周病の予防歯もちろんのこと、そのほかに胃潰瘍の予防にもなるのかもしれませんね。

食育は歯の健康から

-子どもの食習慣-

こどもたちの食環境が変化しています。1人で食べる、家族それぞれが別のものを食べる、同じものばかり食べる、高タンパク・高脂肪の食事が好き、濃い味付けを好む。そんな子どもたちが増えています。
子ども達が豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身につけていくには何よりも「食」が大切です。そこで食育を生きるうえでの基本、知育・徳育・体育の基礎と位置づけ、家庭や学校、地域における教育を推進するために食育基本法が制定されました。
幼児期からお箸を使って食べ、お母さんと一緒に料理する、正しい栄養の知識・生活習慣を身につけ、実行することが大切です。そのためには親や学校関係者のみならず地域ぐるみで子どもたちをどう育てていくかを考えることが必要です。さらにレストランや生産者がカロリー表示を分かりやすく表示する努力も欠かせません。
食育は子どもだけに必要なものではありません。大人も含めひとりひとりが食事内容や食習慣を考えなおし、生涯を通じた健康づくりを心がけてほしいとおもいます。

-食べる機能の発達について-

歯や口の健康が維持されていれば、おいしく食べられ、体や心の健康が維持できるだけでなく、食べる機能や言葉の発達も促されます。そのために正しい食生活と適切なケアによって、清潔で健康な歯・口を保つことが大切です。
新生時期から幼児期、学童期にかけて、子どもの歯や口は劇的に変化します。そのため、それぞれの時期に応じた口腔ケアが大切になってきます。

-食べる機能の発達について 乳児期-

乳児期では顔や口の周りのマッサージからはじめて、さらに指磨きで口に触れられることに慣れさせて、はみがき習慣の準備と導入をはかります。乳歯が生え始めたら、ガーゼ磨きや歯ブラシの感触慣らしをはじめましょう。

-食べる機能の発達について 幼児期-

乳臼歯が生えてくると、むしば菌が定着しやすくなります。1日1~2回、食後の歯磨きを習慣づけたいものです。家族みんなが歯を磨き、それを子どもが見ることで慣れやすくなります。実際に歯ブラシを持たせ、磨く意欲を育てることも大切です。
乳歯が生えそろうと、歯垢が残りやすくなります。食後の歯磨きを習慣づけ、自分で磨く意欲と技能を育てましょう。寝る前に仕上げ磨きを、親子のコミュニケーションの場とするのもよいでしょう。

-食べる機能の発達について 学童期-

学童期になり、永久歯に生え変わると、歯並びの個人差が大きくなります。そのため、自分の口の状態にあった磨き方を覚えることが大切です。この時期になると、自分でほぼ磨けるようになりますが、生えたての永久歯には仕上げ磨きやチェックが必要です。また、歯と歯の間を磨くのにフロスの必要性が高くなります。効率よく磨くには電動歯ブラシも有効です。
「歯と健康のシンポジウム」より

乳歯のむし歯がひどいので永久歯こそ大切にしたいと思いますが、そんなことできるでしょうか?

Question
乳歯のむし歯がひどいので永久歯こそ大切にしたいと思いますが、そんなことできるでしょうか?
Answer
もちろんです。まずは正しい生活スタイルを身につけること。今日からはじめましょう。
むし歯は、ひとつの原因で起きるのではなく、複数の因子がからんだ疾患です。次の4つの対策を、できるところからはじめてください。
①「甘いもののダラダラ食べ」を止める。
一番重要で、一番難しいのがこれ。赤ちゃんの頃から飴をもらって食べる習慣はありませんか。あるいはのどが渇いたら、水よりもジュースやイオン水を好んで飲んでいませんか。甘い物はデザートとして食事の直後にたっぷり与えましょう。手作りのおやつをドドーンと与えて満足させ、他人から飴をもらわない子どもにしつけられればベスト。のどが乾いたら「水」か「お茶」を飲ませます。これが守れると口の中のベトつきがだいぶ減ります。
②フッ素入りの歯みがき剤を乾いた歯ブラシに適量つけて、朝晩2回ていねいにみがく。
自分で磨かせた後で大人が行う、仕上げ磨きは必須です。
③虫歯の悪玉菌、ミュータンス菌を親子ともに口の中から減らす。
ミュータンス菌がつくるプラークは非水溶性なので、みがいてもみがいても落ちないレンジ汚れのような粘着度があります。毎食後、キシリトールガムかタブレットを食べることで、ミュータンス菌の数は減っていきます。ただし、歯みがきができていることが前提です。
④かかりつけの歯医者さんをもち、定期的に検診を受ける。
何でもなくても、15歳までは定期健診を受け、フッ素塗布やシーラント処置を受けましょう。
以上が実行できたら、ピカピカの永久歯に育ちますよ。がんばって!

矯正中の歯みがきでは、ふつうの歯みがきとはちがった注意が必要ですか?

Question
矯正中の歯みがきでは、ふつうの歯みがきとはちがった注意が必要ですか?
Answer
矯正中は歯みがきが難しい状況になるので、時間をかけて1本ずつみがくようにします。
一般的な矯正装置は、治療中は取り外しができず、歯に装着されたままになるので、一時的にせよ歯みがきが難しい状況になります。そこで、次の①~⑤に注意して、時間をかけて1本ずつみがくように指導しています。
① 最初、歯みがき剤はつけずにみがく。最初からつけると泡がでてさっぱりした気がするので、実際はみがけていなくてもみがいた気になってしまいます。最後に歯みがき剤をつけて仕上げみがきをするように。
② 手鏡を見ながらみがく。洗面台のような大きな鏡では、奥のほうがよく見えません。自分専用の手鏡を使うとよいでしょう。
③ 補助歯ブラシの使用。矯正装置は複雑な装置です。人によっては普通の歯ブラシだけでは上手にみがけない場合があります。細かいところは、インタースペースブラシなど小回りのきく小さなブラシを使います。
④ デンタルフロスの活用。歯と歯の間(隣接面)はなかなかみがけない場所。面倒でもフッ素つきのデンタルフロスを利用しましょう。
⑤ 洗口剤の利用。本人はちゃんとやっているつもりでも、残念ながらみがけていないこともあります。そこで、寝る前にフッ素含有の洗口剤でブクブクゆすぎましょう。
おすすめ歯ブラシは、小回りがきくようにヘッドは小さめで、毛の硬さはやわらかめ。硬いものは歯肉を傷めるので避けましょう。握り方は必ず鉛筆もちで、ていねいに1本ずつ磨いてください。矯正中の歯ブラシは装置のせいですぐ傷み、寿命がはやいのでこまめに取り替えましょう。

歯石を取りましょう!

(栃木県日光市の歯科 沼尾デンタルクリニックで実際に行われた治療例です。これらの写真は患者さんご本人の承諾を得て公開させていただいております。もちろん個人を特定できるものは一切掲載しておりません。)
-歯石が付いている歯って見たことがありますか?-
歯周病の原因のひとつに「歯石」があります。
歯石はばい菌の塊です。それが歯についたままにしておくと、そこから出てくる毒で歯肉や歯を支えている骨が炎症を起こしてしまいます。
炎症が起こると、歯肉がやせてきたり、歯を支えている骨が溶けてきたりします。
そうすると歯肉が腫れたり、膿がたまったり、歯がグラグラしてきたり、痛みが出てきたりします。
最終的には歯が抜け落ちてしまうか、抜かないと痛くてしかたない状態になってしまいます。
歯石がついたまま放置しておくと、そのように歯周病が進行してしまうので、歯石はとらなければいけません。

この写真は下あごの前歯の裏側です。歯と歯肉の境目に茶色い歯石が大量についています。
歯肉も暗赤色に変色し、丸くなって腫れています。
しかし、この状態でも本人にはまったく自覚症状がありません。痛くもかゆくもないのです。
相当、歯周病が進行しないと、痛みなどの自覚症状は出てきません。
-歯石を取った直後の写真-


上の写真が歯石を取った直後の状態です。
下の写真が歯石を取る前の状態です。

歯石を取ると、本来の歯の色である白くきれいな状態になっています。
しかし、歯石を取った直後はまだ歯肉が赤く腫れています。
これは、歯石がついていたために、歯肉が炎症を起こしているからです。
歯石を取ると血が出た経験がある方も多いと思いますが、これは歯石を取るときに歯肉を傷つけたり切っているわけではなく、
歯肉に炎症があって腫れているため、とても出血しやすい状態になっているからです。
歯石がついたままだと、この炎症がどんどん進行してしまいます。
でも、歯石を取って、汚れがつかないようにしっかりと歯ブラシができれば
炎症によって赤く腫れあがった歯肉は回復してきます。
-歯石を取って5日後の写真-



上の写真が歯石を除去したあと5日後の写真です。
下の写真が歯石除去をした直後の写真です。
赤く腫れあがっていた歯肉が、5日間でかなり正常な状態に回復しているのがわかると思います。
歯石を取っただけでこれだけ短期間に歯肉は回復してきます。
逆に言えば、歯石がどれだけ歯肉に悪影響を与えているかよくわかると思います。
そのために歯石は早急に取らないといけません。
いつまでもついたままにしておくと、どんどん歯周病が重症になっていき、このように回復しないほど病気が進行してしまうからです。
-歯石を取って回復していく歯肉-

歯石がついている写真

歯石除去直後

歯石除去2週間
上から初期の歯周病の術前・術直後・術後2週間と経過をした連続写真です。
治療後(歯石を取った後)2週間でこのように回復してきます。
治療をしなければ口の中が一番上の状態で、ずっとそのままになってしまいます。
歯石がついている茶色の部分は、歯周病のばい菌の塊です。
歯石を取らないでおいておくことは、口の中にばい菌の温床を残しておくことです。
そうなるとどんどんばい菌が繁殖してきます。
ばい菌の増殖は、口臭の原因にもなります。
歯石をついたまま放置しておくのなら、このようにきれいに掃除して、健康な歯肉を手に入れてみませんか?
(治療過程の写真をweb上でこのような形で匿名で使用することは、患者さんご本人の承諾を得て使用させていただいております。この場をお借りしてご本人へ改めて御礼を申し上げます。)

バイオフィルムという言葉を聞きました。これはどういうものですか?

Question:
バイオフィルムという言葉を聞きました。これはどういうものですか?
Answer:
物の表面と液体との境にできる微生物の巣で、口のなかで作られる歯垢(プラーク)もその一つです。
口のなかには、硬い物質である歯と唾液という液体があり、その境界部分の歯の表面に歯垢(プラーク)は作られます。まず唾液の中のタンパク質が歯の表面に薄い膜を作り、そこにむし歯菌(ミュータンス菌)がくっつきます。むし歯菌は食べ物の中の砂糖を利用してネバネバした物質(グリコッカス)を作り、自分たちの棲みやすい環境を整えます。そして、そのなかで数をどんどん増やし、やがてむし歯以外の歯周病の原因菌なども共同生活を始めるようになります。これが歯垢で、う蝕と歯周病を引き起こす悪の温床となります。
体のほかの部位では、緑膿菌などによって呼吸器や尿路、カテーテルの挿入などにバイオフィルムが作られる事があります。
バイオフィルムである歯垢のやっかいなところは、グリコカリックスがあるため、殺菌効果のあるうがい薬などが内部に浸透しにくく、中に棲んでいる微生物を死滅させにくい点です。さらに、微生物をやっつける、免疫を担当する細胞たちも、仕事をしたくても、その強固な守りにはばれてしまいます。
では、このバイオフィルムの脅威から歯や歯肉を守るにはどうしたらよいのでしょうか?
答えは簡単です。
歯ブラシを用いたブラッシングで、その構造を徹底的に破壊し、グリコカリックスごと微生物を取り除いてしまうことです。ブラッシングは、棲み家を失う微生物たちにとっては残酷ですが、私たちのからだを確実に守るためには不可欠な習慣なのです。

子どもに口移しで食べ物をあげるとむし歯がうつるって本当ですか?

Question:
子どもに口移しで食べ物をあげるとむし歯がうつるって本当ですか?
Answer
むし歯の原因菌であるミュータンス菌が感染して、むし歯になりやすくします。
口移しで食べ物をあげる場合だけではありません。周りの大人が離乳の子どものスプーンをなめる、自分の箸で食べ物を与える、またキスなどでもミュータンス菌は感染します。とくにむし歯が多い母親の場合には、お子さんにもむし歯が多いケースがよくみられます。ただ、ミュータンス菌が感染したからといって必ずむし歯になるわけではなく、むし歯になりやすくなるだけです。
実は生まれたばかりの赤ちゃんにはミュータンス菌は存在しません。感染は生後1歳7か月から2歳7か月の間をピークに、主に母子感染します。この時期は歯が生えはじめの頃で、免疫が弱いために感染しやすいのです。
しかし、口移しで食べ物を与えてはいけない、キスしてはいけない、と親子のスキンシップを禁止するわけではありません。まずは、母親をはじめ周りの大人がミュータンス菌を減らすことが大切です。具体的には、むし歯をそのままにしておかない、歯みがきで清潔に保つ、おやつなど甘い物をとる量や時間を決める、フッ素で歯を強化してむし歯を予防する、などです。キシリトールのガムやタブレットを1日2~3回とるのも効果的です。キシリトールは砂糖に似た構造をもつ天然の甘味料で、ミュータンス菌があっても酸をつくりにくくして、むし歯を防ぐのです。
同じようにお子さんも、まずは歯が生えはじめたら、歯みがき習慣をつけるとともに、甘い物の摂取量と時間を決める、フッ素塗布をする、キシリトールを摂取するなどで、虫歯にならないようにしましょう。

歯の再石灰化を促進するリカルデントガム

会議中に襲ってきた睡魔。そんなときにガムを噛むと、一時的に眠気が取れる。これは、ガムの咀嚼によって、脳波にリラックスした十分な覚醒を示す、α波が現れることからも確かなことらしい。また、大リーガーの選手たちが試合中にガムを噛むのは、緊張感やストレスを和らげるためだと言われます。よく噛むことは、人間の心と体にさまざまな影響を与えます。
だから、日常的にガムを噛むと効果的だが、そんなときは、ぜひ歯を丈夫で健康にするガムを選んで欲しいものです。例えば、歯のエナメル質からカルシウムが溶け出すことを抑え、再石灰化を促進する成分が入ったガムがいい。カルシウムとリンを供給するCPP-ACP「リカルデント」を配合したガムや、むし歯の細菌を弱めるキシリトール入りのガムもお奨めです。