唾液があまり出ず、口の中が乾いてしまい不快です

Question 薬を服用しているので唾液があまり出ず、口の中が乾いてしまうため、入れ歯がいつもベタついて不快です。

Answer 唾液には重要な役割があります。副作用のより少ない薬について主治医と相談してみてください。

 唾液には、口の環境を整える抗菌作用や粘膜保護作用、歯や歯ぐきの汚れを洗い流す自浄作用、さらに食べ物の消化作用、歯の再石灰化などきわめて重要な機能があります。

 口やのどが乾く症状を口腔間乾燥症(ドライマウス)といいます。軽度の場合は口の中のネバネバ感、歯垢や舌苔の増加、むし歯や歯肉炎の発生、それに伴った口臭が現れます。

 さらに唾液分泌量が減少すると、自浄性も低下して強い口臭が発生します。舌の表面が乾燥してひび割れしたりすると、強い痛みで食事が取れない摂食障害や発音障害も現れます。その原因は、唾液腺疾患、糖尿病、腎疾患、自己免疫疾患などの全身疾患、薬剤の副作用、加齢、ストレス、口呼吸や喫煙、過度のアルコール摂取など多岐にわたります。

 入れ歯が口の中で安定して機能するためには、唾液の存在は重要です。食べ物を摂るときに咀嚼や嚥下運動を円滑にしてくれるとともに、入れ歯と歯ぐきの粘膜のあいだに唾液が介在することで表面張力が発生し、入れ歯の安定性が増加します。唾液が不足したり、ネバネバになると安定性を欠くことになります。このような入れ歯の不快な状態に対しては、対症療法としてうがい薬や人工唾液、保湿液の処置を行うこともあります。

 ご相談ように、唾液分泌に影響する薬剤として降圧剤、抗うつ剤、鎮静剤、抗パーキンソン剤などが考えられます。現在服用している薬について、副作用のより少ない薬への変更や服用量の調整を、主治医の先生とよく相談することも必要かと思います。

70歳でもインプラントは可能ですか?

Question 「総入れ歯はもういやだ」という70歳の母は最近インプラントに関心があるようです。とても元気ですが、高齢なので心配です・・・。

Answer ご高齢の方でもインプラント治療は可能な場合も多いです。まずは相談してみましょう。

 インプラント治療とは、天然の歯根の代わりに人工の歯根であるインプラント体を顎の骨(歯槽骨)に埋め込む外科手術をいいます。

 高齢者へのインプラント治療でもっとも注意すべき点は、患者さんの健康状態の把握です。高齢者は糖尿病や心疾患、高血圧、骨粗しょう症など外科処置を行ううえで注意すべき疾患をもっていることが多いからです。問診などで患者さんがそういった疾患をもっていることがわかった場合は、主治医と相談して、その状態をさらにくわしく調べます。

 また、歯槽骨の状態をよく調べる必要もあります。これは高齢者に限ってのことではありませんが、高齢者であればより慎重に診断しなければなりません。というのも、高齢者で総入れ歯をしている場合は、インプラントを行ううえで理想的な歯槽堤であることは少なく、思いどおりにインプラントを埋め込むことが難しいのです。

 高齢者で総入れ歯の方へのインプラントにはさまざまな方法があります。たとえば、2本のインプラントを入れて総入れ歯の支えにする方法や、失った歯の本数に近い数だけインプラントを埋め込んで、歯のあった状態と同様の状態まで回復させる方法などです。

 総入れ歯に不満をもつ方はインプラントの専門医に相談されるとよいと思います。私の経験では、総入れ歯だったほとんどの患者さんから「よく噛めるようになりました」といった感想をいただいています。おいしく食事ができるということは、高齢者の方々には何よりも大切なことです。

矯正装置をつけると痛いですか?

Question 矯正装置をつけると痛いですか?歯を抜くこともあると聞きましたが、抜かずに矯正することはできますか?

Answer 歯を移動させるわけですから、多少に痛みはともないますが、数日食事がしにくい程度です。

 矯正装置は、歯に力を加えて歯を移動させるわけですから、多少の痛みはともないます。痛みには個人差がありますので、ほとんど痛みを感じない方もいれば、痛く感じる方もいます。ただし、常に痛いということはなく、硬いものや歯ごたえのあるものを噛むと痛みがあり、最初の2,3日食事がしにくい程度のことだと思ってください。

 最近は非常に弱い力で歯の移動を行う方法もあり、痛くない治療が主流になってきています。我慢できないような痛みはありませんので、ご心配なく。

 矯正治療の過程で、歯を抜くことはあります。日本人は急速に「小顔」になってきていて、それにともなって歯の生える場所(歯槽骨)も小さくなってきています。しかし、歯の大きさや数は昔と変わらないため、人によっては歯の数を減らさないと歯が生えきらないことがあるのです。

 ただし、すべての人が歯を抜く必要はありません。要は、顎の大きさと歯の大きさのバランスが非常に悪い場合に抜く必要があるのです。少し悪い場合は、歯の生えてくる場所を拡大したり、歯を後方に移動させたり、歯を治すことも可能です。抜かなくてもきれいに治る人は大勢います。

 人の顔がすべて違うように、歯や顎の形、大きさなどは十人十色。常に最適な治療を心がけていますので、まずは矯正を専門に行っている歯科医師に相談してみてください。

朝起きたときやお腹がすいたとき、自分でも分かるくらい口臭がします

Question 朝起きたときやお腹がすいたとき、自分でも分かるくらい口臭がします。これは何が原因でしょうか?

Answer 主に起床時や空腹時の口臭は唾液の分泌が減少するために生じる生理的口臭であることが多いです。

 実際に臭いが検出されるものを真性口臭症と呼びます。これには、生理的口臭と病的口臭があり、病的口臭はさらに口腔由来と全身由来のものとに分けられます。

 しかし、その実際の口臭はその80%以上が口腔由来であると考えられています。口腔内で産生される口臭の原因物質は、主に硫化水素やメチルメルカプタンなどの揮発性硫黄化合物で、口腔内に存在する嫌気性(空気を嫌う)細菌によって産生されます。口臭の原因菌は歯周病の原因菌であることも多いようです。

 生理的口臭は、原因となる病気がないものをいいますが、その強さは一日のうちでも変動します。起床時では50%の人に口臭がみられるとの報告もあり、昼食前や夕食前などの空腹時も口臭が強くなるようです。

 これらのことは唾液の分泌と関係しています。唾液には口腔内の洗浄作用や殺菌作用がありますが、就寝時には分泌量が減少します。逆に食事の際には盛んに分泌されます。つまり、唾液の分泌の少ない起床時や空腹時では口臭が強くなるのです。口臭の日内変動のメカニズムを理解して、口腔清掃を心がけることも大切かもしれませんね。とくに舌の清掃は、口臭予防にもっとも効果的な口腔清掃法と考えられています。

 病的口臭の原因疾患としては、歯周病をはじめとする口腔内疾患が多いようですが、耳鼻咽頭疾患、消化器系疾患や糖尿病などもまれにみられます。このように口臭の原因はさまざまですので、まず歯科病院や歯科医院で口臭検査を受けることをおすすめします。

むし歯治療の技術が進歩しているという話も聞いたのですが?

Question 前歯の欠けた部分をレジンで充填しましょうといわれました。こうした接着の技術が進歩しているという話も聞いたのですが・・・。

Answer 歯科医療を大きく変えた接着の技術について

 日進月歩の歯科医療ですが、最近の動向を見ますと、治療から予防へ、そして幸福歯科へと、人びとのQOL(生活の質)を上げる歯科医療へと変化しつつあります。

 数年前、WHO(世界保健機構)が提唱したMI(ミニマル・インタベーション)の理論は、あっというまに日本にも定着しました。この理論は、最小の侵襲で最大の効果を上げるために、なるべく歯を削らない歯科医療のことをいいますが、多くの歯科医師に支持されて市民権を得ることになったのです。また、その背景には、多くの患者さんがそれを望んでいるという裏付けがあります。

 さらに、接着歯学の進歩が、MIに基づく歯科医療の後押しをしています。歯に強力に付く接着技術の登場が、歯科医療を革命的に変えたのです。歯をそんなに削らなくても、簡単にしかもきれいにむし歯を修復できます。つめる材料のレジンは、色もたくさんあり、ほとんどのケースで周りの歯と調和させて目立たなく治すことができます。

 ご質問のケースですが、感染した歯質を除去し、色の選択を行い、接着剤を塗ったあと、レジンをつめて光で硬化させます。硬化は簡単に終わりますが、研磨はていねいに行います。こうして、見かけもよく、丈夫なレジン充填が短時間で完了します。

 日本の歯科用充填剤はとても優れていて、米国やヨーロッパにも輸出されています。美容歯科やアンチエイジング歯科の観点からも、接着の技術が大きな力を発揮しているのです。

ただし、材料の限界はあります。あまりにも大きくかけてしまった部分にはこの治療方法は適応できないこともあります。

1歳半の子どもの仕上げみがきはどうすればいいですか?

Question 1歳半健診で、脚を押さえて仕上げみがきをするように指導を受けましたが、うちの子は暴れて嫌がります。続けていいものでしょうか。

Answer お子さんにむし歯がなく正しい食生活を送れているなら「週末みがき」をしてみましょう。

 かわいい乳歯をむし歯にしないために、毎日の歯みがきが大切なことはご存じですね。それでも、お子さんの抵抗が激しいと歯みがきそのものが疑問に思えてしまう、お母さまのお気持ちはとてもよくわかります。

 そんなときは一人で悩まずに、近くの小児歯科に相談してみましょう。

 歯の表面が白濁する「初期むし歯」や、穴の空いたむし歯が見つかったなら、心を鬼にしてでも毎日、朝晩2回、フッ素の入った歯みがき剤をつけて、仕上げみがきをしなければいけません。

 反対に、むし歯がない、甘いもののダラダラ食べやダラダラ飲みがなくて正しい食生活が送れているようなら、毎日の仕上げみがきを無理矢理せずに、食後にお茶か水を飲ませてからキシリトールタブレットをなめさせる、フッ素スプレーを歯にひと吹きしておくなどでしばらく様子をみるという手もあります。

 この場合は、週末にお父さまに協力してもらって、両親のひざにお子さんを寝かせ、お子さんの両手、両足を父親が押さえ、母親がみがく「週末みがき」が必要です。

 大きすぎず、小さすぎず、やわらかめの仕上げ専用歯ブラシで、1本ずつ毛先を震わせるように優しくみがいて、歯みがきは痛くないことを教えてあげましょう。

 また、歯みがきしつけ絵本や、人形を使った歯みがきごっこなども、歯みがき好きにするのに効果的ですよ。

口臭がひどい母の舌苔(ぜったい)を取りたいのですが?

Question 口臭がひどい母の舌苔(ぜったい)を取りたいのですが、舌ブラシや歯ブラシを口の中に入れると吐きそうになる場合、どうすればよいでしゅうか?

Answer 最初は箸に綿を巻いたもので慣れてもらい、それから舌ブラシを使用しましょう。

 口臭がひどいと、介護にあたる人が不快になるばかりではなく、家族や介護者が敬遠するようになって本人も傷ついてしまいます。

 口臭を軽減する最も効果的な手段は舌苔の除去です。舌ブラシを使います。舌ベラは硬いので舌の粘膜表面を傷つけやすく、力のかけ方の手加減が難しいのです。

 舌ブラシは軽く持ち、舌の奥から手前に引いて汚れを取ります。舌を出した状態で奥をのぞくと、イボのような小さな突起物が横に並んで見えます。そこから手前に引きます。側面も清掃しますが、実際は真ん中がもっと汚れやすいところです。舌の先端や側面は、歯や口蓋粘膜に普段からよく接触し、汚れがこすり落とされているからです。

 さて、口の奥のほうに舌ブラシが当たると吐きそうになることはよくあります。これを嘔吐反射といいます。歯ブラシではヘッド(毛先)に高さがあるので、そこが周りに当たり嘔吐反射を誘発することがあります。歯ブラシを寝かせて使うなどの工夫が必要です。

 ブラシが奥に当たってないのに、心理的な原因で嘔吐反射を起こす人もいます。最初は箸に綿を巻いて糸や輪ゴムでとめたもので汚れを取り、慣れてきたら舌ブラシを使うようにするとよいでしょう。

 よく噛んで口からしっかり食事を摂っている人は唾液もよく出て、食事中に舌も清掃されますから、あまり舌苔はつきません。お粥のようなものをすすり込んでいるだけだと舌苔が付きやすくなります。食事に介護が必要な人では、とくに舌苔の除去が必要です。

顎関節症は若い女性に多いのですか?

Question 顎関節症は若い女性に多いと聞きました。どうしてですか?

Answer その理由は、「若い女性」を「若い」と「女性」に分けて考えてみると、よくわかります

 顎関節症にはいろいろな病変とそれに伴う症状が含まれますので、その中でもっともよく起こる顎関節と筋肉のトラブルについてご説明します。「若い」「女性」それぞれの特徴をみながら考えてみましょう。

①「女性」であること

 顎関節症の患者さんは女性が圧倒的に多いようです。筋肉や骨格が男性に比べてやや弱い、心理的・社会的にストレスにさらされた場合に不利な面が多い、生理があるので自分のからだに対して関心をもつ機会が多いことなどが関係するようです。

②「若い」ということ

 若い人は顎関節部が成長期にあり、関節の動く部分や受け皿となる骨とその上の繊維層や軟骨部分がまだ弱く、少しの刺激で症状が出てしまいます。子どもは適応能力が高いので変形という方法で刺激に対応できます。

③「若い女性」ということ

 ①と②の2つの働きで、顎関節や咀嚼筋などに症状を示すようになります。私の経験では、大学受験の頃に筋痛や関節痛があったけれど、受験の終了とともに症状がなくなった症例がいくつかあります。

 また、社会人となって会社で必死に働くうちに、生理まで不順となり女性ホルモンのアンバランスが生じ、それによるものか、顎関節部の骨が吸収して関節が変形してしまった症例もいくつかあります。

 ストレスをいかにうまくやり過ごすか。そのコツをつかめれば、多くの場合、発病しないですむようです。

矯正中にスポーツをするときに気をつけるポイントを教えてください。

Question 矯正中にスポーツをするときに気をつけるポイントを教えてください。

Answer 口元にボールや打撃を受けて矯正装置が壊れないように気をつけてください。

 スポーツ選手にとっても歯ならびは重要です。世界の一流アスリートの多くは矯正治療をして歯並びを治しています。噛み合わせを治すことで、体のバランスがとれるうえ力が入るからです。テニスボールを打つときなど、力を入れるときは知らず知らず奥歯に力が入るもの。この噛み合わせが悪ければ歯に負担がかかり、歯の寿命を短くすることにもなりかねません。

陸上のカール・ルイス、ゴルフのタイガー・ウッズ、テニスの杉山愛、スケートの岡崎朋美などスポーツのジャンルを問わず矯正治療経験者はいっぱいです。矯正経験の有無は分かりませんが、テニスのシャラポワの歯ならびも取ってもきれい!「一流アスリート=歯並びがいい」という公式は世界共通のようです。残念ながら、日本においてはこの公式は当てはまらないようです。いまだ「歯並びの重要性」に気がついてくれないスポーツ関係者にがっかり。日本が「歯並び後進国」と呼ばれるゆえんでしょう。

 さて、矯正中にスポーツをしてもまったく問題ありません。でも、サッカー、バレー、野球などのボールが口元を直撃する可能性があるスポ-ツはご用心、衝撃で装置が壊れたり、まれに口の中が切れたりすることもありますのでマウスガードを装着しておくと怪我の予防には効果があります。ラグビーのように激しいスポーツにはマウスガードを必ず装着するとよいでしょう。

 もっとも注意が必要なスポーツはボクシングなどの格闘技。装置で口の中が切れてしまうのはマウスガードを装着しても避けられないかもしれません。

インプラントはいくらぐらいかかりますか?

Question インプラントをすすめられた友人の悩みは治療費だそうです。いくらぐらいかかりますか?

Answer インプラントは自由診療なので先生の考え方や方針によって治療費はちがってきます。インプラント治療では通常の健康保険が適応されず、自由診療の扱いとなります。

 実際、インプラント治療などの自由診療の治療費は、先生の考え方や医院の方針によって決まります。その治療に必要な歯科材料や院内設備、治療の難易度、治療に対する時間などを総合的に判断しています。

 したがって、私が「この治療費は安い」とか「高すぎる」ということはできませんが、日本におけるインプラント治療にかかる費用を考えると、インプラント一本で20~50万くらいで提供している歯科医院が多いと思われます。

 ただ、必ずしも「安い=信用できない」ということにはつながらないと私は思います。その逆も同様で、「高い=信用できる」とはかぎらないでしょう。

 大切なのは、まず先生と直接会って話をして、その先生が信用できそうかどうかをご自身で判断することです。また、自分なりにいろいろ調べて、インプラントに対するある程度の知識を得ておくことも重要ではないかと思います。

 たしかに治療費は切実な問題ですし、インプラント治療は高額かもしれません。しかし、治療費だけにとらわれずに、治療後に得られるメリットを考えてみてもいいのではないでしょうか。