4歳になる息子の口が臭くて。

Question
4歳になる息子の口が臭くて。むし歯もなく、歯や口に問題はないと思うのですが、ほかに原因があるのかしら?
Answer
1日中口臭が強いのでなければ生理的口臭の可能性が高いです。あまり神経質にならないように。
「むし歯がないのに口臭がある」のは不思議かもしれませんが、実際に調べてみると、意外にもむし歯のない子どものほうが口臭が強いようです。もちろん、歯に大きな穴があいて神経が露出したり、食べ物が詰まったりすれば、むし歯も口臭の原因になりますが・・・・。
坊やの場合、1日中口臭が強いわけではないはずです。いかがでしょうか?朝食前とか、幼稚園から帰ってきた時、そして外で遊んで帰ってきた時などに臭いませんか?このような状況でしたら、生理的口臭の可能性が高いです。何も飲み食いをしていない時間が1~2時間続きますと、細菌や粘膜の垢が増え、生理的口臭が出てきます。きちんとした証拠はないのですが、理論的には、歯の生え変わりも口臭の原因となります。
根本的な対策としては、まず口臭の原因となる歯肉炎や大きなむし歯がないか、歯医者さんで調べてもらってください。そして半年に1回は、必ず歯医者さんのチェックを受けましょう(定期的な歯科受診を坊やの一生の習慣にしてあげましょう。一緒にお母さんも健康のためにチェックを受けるとよいです)。また、舌が汚れていたら、舌ブラシで時々掃除してください。万一、1日中臭うとか、鼻息が臭い、吐瀉物に近い臭いがする、かび臭い、魚臭い、その他、特殊な臭いがするようでしたら、小児科医に相談しましょう。
お母さんにお願いしたいことは、神経質になりすぎないことです。親が気にしすぎて、萎縮してしまっている子どもを時々見かけます。子どもの心にはよくないことです。

全部歯を抜いて総入れ歯にしたら味がよくわかりません。

Question
全部歯を抜いて総入れ歯にしたら味がよくわかりません。どうしてなのでしょう?
Answer
総入れ歯の大きさや熱が伝わりにくい素材も原因の一つです。
味覚には、甘い(あまい)・酸(すっぱい)・苦(にがい)・鹹(しおからい)・辛(からい)があり、さらに「うま味」や「コク」などが加わり、複雑な組み合わせで味が形成されます。さらに味覚に影響する要素に、摂取した食品そのものの性状があります。温度(例:熱いスープ、アイスクリーム)、硬さ(例:固焼きせんべい、プリン)、歯切れ(スルメ、レタス)など、複雑な多岐にわたる「食感」です。
味覚を感じるための一番重要な器官は、舌の表面にある味蕾(みらい)です。また、唇、頬、ノド、の感覚もきわめて鋭敏です。総入れ歯は、上下の顎の土手(顎堤)を中心として、粘膜の大部分を覆うような形態をしているのが特徴です。入れ歯の歯ぐきに相当するピンク色の部分(義歯床)はプラスチック(レジン)でできていますが、入れ歯の安定やさまざまな外力に耐えるために、一定程度の厚みや長さを確保しなければなりません。しかもレジンは熱を伝えにくいため、レジンで粘膜を覆われるとどうしても味覚に影響することになります。また、舌ざわりも味覚に大きく影響します。
解決方法としては、入れ歯の強度や安定性を損なわない程度に義歯床を調整し、まず慣れることが必要かと思います。上顎(口蓋)部が金属でできた入れ歯(金属床)も選択肢の一つでしょう。金属床はレジン床に比べて薄く設計でき、熱の伝導性がよいため、熱いものは熱く、冷たいものは冷たい快適な食事ができます。しかし、金属床は保険がききませんので、費用の点で、かかりつけの先生とよく相談するようにしてください。

歯石を取りましょう!

(栃木県日光市の歯科 沼尾デンタルクリニックで実際に行われた治療例です。これらの写真は患者さんご本人の承諾を得て公開させていただいております。もちろん個人を特定できるものは一切掲載しておりません。)
-歯石が付いている歯って見たことがありますか?-
歯周病の原因のひとつに「歯石」があります。
歯石はばい菌の塊です。それが歯についたままにしておくと、そこから出てくる毒で歯肉や歯を支えている骨が炎症を起こしてしまいます。
炎症が起こると、歯肉がやせてきたり、歯を支えている骨が溶けてきたりします。
そうすると歯肉が腫れたり、膿がたまったり、歯がグラグラしてきたり、痛みが出てきたりします。
最終的には歯が抜け落ちてしまうか、抜かないと痛くてしかたない状態になってしまいます。
歯石がついたまま放置しておくと、そのように歯周病が進行してしまうので、歯石はとらなければいけません。

この写真は下あごの前歯の裏側です。歯と歯肉の境目に茶色い歯石が大量についています。
歯肉も暗赤色に変色し、丸くなって腫れています。
しかし、この状態でも本人にはまったく自覚症状がありません。痛くもかゆくもないのです。
相当、歯周病が進行しないと、痛みなどの自覚症状は出てきません。
-歯石を取った直後の写真-


上の写真が歯石を取った直後の状態です。
下の写真が歯石を取る前の状態です。

歯石を取ると、本来の歯の色である白くきれいな状態になっています。
しかし、歯石を取った直後はまだ歯肉が赤く腫れています。
これは、歯石がついていたために、歯肉が炎症を起こしているからです。
歯石を取ると血が出た経験がある方も多いと思いますが、これは歯石を取るときに歯肉を傷つけたり切っているわけではなく、
歯肉に炎症があって腫れているため、とても出血しやすい状態になっているからです。
歯石がついたままだと、この炎症がどんどん進行してしまいます。
でも、歯石を取って、汚れがつかないようにしっかりと歯ブラシができれば
炎症によって赤く腫れあがった歯肉は回復してきます。
-歯石を取って5日後の写真-



上の写真が歯石を除去したあと5日後の写真です。
下の写真が歯石除去をした直後の写真です。
赤く腫れあがっていた歯肉が、5日間でかなり正常な状態に回復しているのがわかると思います。
歯石を取っただけでこれだけ短期間に歯肉は回復してきます。
逆に言えば、歯石がどれだけ歯肉に悪影響を与えているかよくわかると思います。
そのために歯石は早急に取らないといけません。
いつまでもついたままにしておくと、どんどん歯周病が重症になっていき、このように回復しないほど病気が進行してしまうからです。
-歯石を取って回復していく歯肉-

歯石がついている写真

歯石除去直後

歯石除去2週間
上から初期の歯周病の術前・術直後・術後2週間と経過をした連続写真です。
治療後(歯石を取った後)2週間でこのように回復してきます。
治療をしなければ口の中が一番上の状態で、ずっとそのままになってしまいます。
歯石がついている茶色の部分は、歯周病のばい菌の塊です。
歯石を取らないでおいておくことは、口の中にばい菌の温床を残しておくことです。
そうなるとどんどんばい菌が繁殖してきます。
ばい菌の増殖は、口臭の原因にもなります。
歯石をついたまま放置しておくのなら、このようにきれいに掃除して、健康な歯肉を手に入れてみませんか?
(治療過程の写真をweb上でこのような形で匿名で使用することは、患者さんご本人の承諾を得て使用させていただいております。この場をお借りしてご本人へ改めて御礼を申し上げます。)

母はよく「口が乾く」と訴えます。水を与える以外に何かいい方法はありませんか?

Question:

母はよく「口が乾く」と訴えます。水を与える以外に何かいい方法はありませんか?

Answer

保湿作用のある薬やジェルなどを利用するほか、歯科や内科の先生に相談するとよいでしょう。


高齢者では、口が乾くという訴えは高頻度にみられます。原因として、唾液の分泌量の減少が基本にあります。詳細はまだわかりませんが、①加齢に伴う自然な唾液分泌機能の低下、②普段服用している各種薬剤の副作用によることが多いようです。

日本医薬品集に掲載されている薬の実に4分の1(約600品目)に唾液分泌減少の副作用、および高血糖、脱水といった結果的に口腔乾燥症状を引き起こす可能性のある副作用が記載されています。代表的なものは、抗うつ薬、降圧薬などですが、風邪薬やアレルギー性鼻炎の薬、睡眠薬、鎮静薬などでも唾液の分泌が減少します。このほかに、ふだんお口を開けて寝るなど、口呼吸があっても口は乾きます。

対策としては、口が乾いた時に水を含むと一時的に楽になります。ただし、水だけでは短時間で再びお口が粘っこくなったり、乾いたりします。ただし、水だけでは短時間で再びお口が粘っこくなったり、乾いたりします。そのため、保湿作用のあるヒアルロン酸を含んだ「絹水」や「オーラルウェット」などの保湿薬でお口を濡らすか、「オーラルバランス」という保湿作用のあるジェルをお口の内側に塗ります。口内保湿洗口剤の「マウスウォッシュ」という製品もあります。

もっと強力な効果を期待する場合は、唾液分泌刺激効果のある「サリグレン」「エボザック」という薬おありますが、これらは医師の処方が必要です。人口唾液の「サリベート」も同様に処方薬です。そのほかにも、漢方薬やお口周囲の刺激、唾液腺マッサージなど多くの治療法があります。いちど歯科や内科の先生にご相談されるとよいでしょう。

バイオフィルムという言葉を聞きました。これはどういうものですか?

Question:
バイオフィルムという言葉を聞きました。これはどういうものですか?
Answer:
物の表面と液体との境にできる微生物の巣で、口のなかで作られる歯垢(プラーク)もその一つです。
口のなかには、硬い物質である歯と唾液という液体があり、その境界部分の歯の表面に歯垢(プラーク)は作られます。まず唾液の中のタンパク質が歯の表面に薄い膜を作り、そこにむし歯菌(ミュータンス菌)がくっつきます。むし歯菌は食べ物の中の砂糖を利用してネバネバした物質(グリコッカス)を作り、自分たちの棲みやすい環境を整えます。そして、そのなかで数をどんどん増やし、やがてむし歯以外の歯周病の原因菌なども共同生活を始めるようになります。これが歯垢で、う蝕と歯周病を引き起こす悪の温床となります。
体のほかの部位では、緑膿菌などによって呼吸器や尿路、カテーテルの挿入などにバイオフィルムが作られる事があります。
バイオフィルムである歯垢のやっかいなところは、グリコカリックスがあるため、殺菌効果のあるうがい薬などが内部に浸透しにくく、中に棲んでいる微生物を死滅させにくい点です。さらに、微生物をやっつける、免疫を担当する細胞たちも、仕事をしたくても、その強固な守りにはばれてしまいます。
では、このバイオフィルムの脅威から歯や歯肉を守るにはどうしたらよいのでしょうか?
答えは簡単です。
歯ブラシを用いたブラッシングで、その構造を徹底的に破壊し、グリコカリックスごと微生物を取り除いてしまうことです。ブラッシングは、棲み家を失う微生物たちにとっては残酷ですが、私たちのからだを確実に守るためには不可欠な習慣なのです。

子どもに口移しで食べ物をあげるとむし歯がうつるって本当ですか?

Question:
子どもに口移しで食べ物をあげるとむし歯がうつるって本当ですか?
Answer
むし歯の原因菌であるミュータンス菌が感染して、むし歯になりやすくします。
口移しで食べ物をあげる場合だけではありません。周りの大人が離乳の子どものスプーンをなめる、自分の箸で食べ物を与える、またキスなどでもミュータンス菌は感染します。とくにむし歯が多い母親の場合には、お子さんにもむし歯が多いケースがよくみられます。ただ、ミュータンス菌が感染したからといって必ずむし歯になるわけではなく、むし歯になりやすくなるだけです。
実は生まれたばかりの赤ちゃんにはミュータンス菌は存在しません。感染は生後1歳7か月から2歳7か月の間をピークに、主に母子感染します。この時期は歯が生えはじめの頃で、免疫が弱いために感染しやすいのです。
しかし、口移しで食べ物を与えてはいけない、キスしてはいけない、と親子のスキンシップを禁止するわけではありません。まずは、母親をはじめ周りの大人がミュータンス菌を減らすことが大切です。具体的には、むし歯をそのままにしておかない、歯みがきで清潔に保つ、おやつなど甘い物をとる量や時間を決める、フッ素で歯を強化してむし歯を予防する、などです。キシリトールのガムやタブレットを1日2~3回とるのも効果的です。キシリトールは砂糖に似た構造をもつ天然の甘味料で、ミュータンス菌があっても酸をつくりにくくして、むし歯を防ぐのです。
同じようにお子さんも、まずは歯が生えはじめたら、歯みがき習慣をつけるとともに、甘い物の摂取量と時間を決める、フッ素塗布をする、キシリトールを摂取するなどで、虫歯にならないようにしましょう。

歯の再石灰化を促進するリカルデントガム

会議中に襲ってきた睡魔。そんなときにガムを噛むと、一時的に眠気が取れる。これは、ガムの咀嚼によって、脳波にリラックスした十分な覚醒を示す、α波が現れることからも確かなことらしい。また、大リーガーの選手たちが試合中にガムを噛むのは、緊張感やストレスを和らげるためだと言われます。よく噛むことは、人間の心と体にさまざまな影響を与えます。
だから、日常的にガムを噛むと効果的だが、そんなときは、ぜひ歯を丈夫で健康にするガムを選んで欲しいものです。例えば、歯のエナメル質からカルシウムが溶け出すことを抑え、再石灰化を促進する成分が入ったガムがいい。カルシウムとリンを供給するCPP-ACP「リカルデント」を配合したガムや、むし歯の細菌を弱めるキシリトール入りのガムもお奨めです。

噛みしめる癖は要注意 -あごを痛める可能性あり-

口を開けるとき、カクンと音がする。あるいは、口が開けにくかったり、耳の前方にある関節が痛むなどの症状がある人は、あごの関節や筋肉に、何らかに問題を抱えている可能性が強い。顎関節や咀嚼筋などに異常をきたす「顎関節症」の疑いが考えられるからです。
「顎関節症」では、あごの関節や筋肉に痛みや違和感を伴うが、その発症は複雑で、いくつもの要因が関わっているとされています。例えば、あごの関節に負担をかけるうつぶせ寝やほお杖、悪い姿勢、片方の歯だけで噛むといった癖や習慣が原因になることもあります。また、急に口を大きく開けたり、顔を打ったりなどが、発症の引き金になることもあります。
なかでも一番悪いのは、口を固く結んで動かさなかったり、歯を習慣的に噛みしめる癖です。あごの関節や筋肉に負担をかけ続けると、筋肉はこわばり、関節もうまく機能しなくなってきます。
顎関節症の予防と治療に詳しい中沢勝宏院長は「パソコンの前で歯を食いしばっている人は、顎関節症予備軍と言ってもいいでしょう」と警告する。「上と下の歯を接触し続ける」だけでも、あごの筋肉には大きな負担がかかるそうなので、注意したい。
さらに、疲労や精神的ストレスも、「顎関節症」に関係するとされています。これら、いくつもの要因が重なり、その人の限界に達したときに、「顎関節症」は発症します。
顎関節症の症状
1.顎に痛みがある
あごを動かしたときに痛むのが特徴。あごの関節、ほおにある咀嚼筋に痛みを感じる。あごを動かしていないときの痛みは少ない。
2.口が大きく開けられない
下あごの動きが制限され、大きく口が開けられなくなる。指を立てに揃えて2本以下しか入らないと要注意。いきなり口が開かなくなる場合と、徐々に開きづらくなる場合とがある。
3.あごを動かすと音がする
口を開けたり、物を噛んだりするとき、「カクン」「ガクガク」「シャリシャリ」「ミシミシ」といった関節の雑音がする。

噛まなくなった現代人に危険信号

-戦前に比べると、咀嚼回数は6割も減少-
「食事の時間を惜しんで、噛む時間が短くてすむ、柔らかいファストフードやジャンクフード(塩分、糖分、脂肪分が多く、栄養価が低いスナック菓子などのこと)のようなものばかり食べている現代日本人の咀嚼回数は、わずか数十年の戦前に比べると、約6割も減っています。
時代によって変わる咀嚼回数(1回の食事)
弥生時代  3990回
鎌倉時代  2654回
江戸時代  1465回
戦前    1420回
現代     620回
また、健康を維持するためには、本来は食事から必要な栄養素を適切に摂取することが大切なのに、安易に健康補助食品や栄養剤などを多用するという傾向もあります。こうしたことで、人間の生存にとって身体的にも精神的にも不可欠な、『咀嚼』という行動が疎かにされ、いろいろな問題が起きてきているのです。
小児や未成年者が、噛む回数が少なく柔らかい、ファストフードやジャンクフードばかり食べていますと、咀嚼筋とそれらが関連する顔やあごの骨の成長発達が遅れ、頭、顔、あご、口、さらに唾液を分泌する唾液腺、特に耳下腺の発達が抑えられ、あごが小さくなります。それに伴って、歯や舌の位置が不正となり、口呼吸となり、虚弱体質をつくることになり、顎関節症や種々の耳鼻咽頭疾患、姿勢障害、睡眠障害などを発症させやすくします。必然的に先ほど述べた咀嚼の効能も阻害されます。また、中高年以上でも咀嚼の効能が阻害され、健康に影響が及ぶことになります。」
小林義典教授はそう警告する。
-よく噛むには〝正しい噛み合わせ〟が条件-
健全な咀嚼は、咀嚼筋やあごの関節、あごの骨、それに歯や歯周組織、舌、唾液腺など、咀嚼系を構成する器官と中枢神経系が健全に働かなくては成り立たない。特に、咀嚼運動には、「噛み合わせ(咬合)」が具体的に関わるので、咬合に問題がある場合には、咀嚼にも影響が出てくる。現代の日本人が噛まなくなったのは、噛み合わせの不具合も影響しているということはないだろうか。
小林義典教授によれば、「噛み合わせが不安定だったり、損なわれている場合には、歯科治療を行い、適正に回復する必要があります」ということだ。悪い噛み合わせをそのままにしておくと、「ものが食べにくい」だけでなく、顎関節症や口腔顔面痛、口腔顔面変形、姿勢障害、全身運動機能低下、聴力障害などを起こしやすくなることもあり、脳内ストレスや睡眠中の歯ぎしりや噛みしめ、睡眠障害を起こす可能性もあるという。
「噛まなくなった現代日本人」は。今一度、「咀嚼」の重要性、「食べる」ことの正しいあり方について考え直す必要があるようだ。なによりも、健康長寿には、「咀嚼」が大切なことを再認識したい。
「噛むこと、そして食べることは、人間が生きていくための基本的な動作です。多くの動物では、噛めなくなることは命が終わることを意味します。家族が食卓を囲んで楽しく食事すること、そして健全な咀嚼は何かまで、『いかに食べるか』を考えることは、今、緊急の課題として、われわれが取り組まなくてはならないことだと思います」

噛むことの効用

-噛むことで心も体もリラックスする-
よく噛むことは、脳の活性化につながるだけではない。咀嚼によって得られる様々な効果が、今、明らかにされつつある。
例えば、咀嚼は心身のリラックス作用を引き出す。美味しいものを食べることで、脳の報酬系(歯が互いに接触したり、食物が歯や歯肉に接触することによる刺激)が刺激され、〝快情動〟が引き起こされる。すると、人を心地よい気分にさせる脳内物質「β―エンドルフィン」の分泌も促されるので、リラックス作用につながる。
実際、健康な人にガムを噛んでもらい、そのときの脳波を調べてみると、リラックスしたときに観察される「α波」が増加し、イライラしたり緊張しているときに出る「β波」の低下が認められる。それは、ガムを噛み終わったあとにも持続するという。
ガムなどを噛む効用には、ストレスを軽減し、緊張を和らげる働きもあるのだ。
-よく噛めば、肥満の防止と健康増進-
〝よく噛む〟ことは、肥満の防止になることが分かっている。よく噛めば、脳の「満腹中枢」が刺激され、脳内ヒスタミン神経系が賦活されるので、食欲が抑制される。同時に内臓脂肪が分解されて、体熱生産や放散が促進される。〝よく噛んで〟食事をすれば、肥満にならないということだ。
また、よく噛めば、口の中の粘膜から栄養素を吸収することも分かっている。さらに、食事をとることで上昇した血糖値を下げて正常化する作用があるので、糖尿病の治療効果を上昇させたり、予防的な効能もある。
その他、〝よく噛む〟ことの効用は、身体の運動機能の上昇、視力低下の予防、免疫力の向上、骨粗鬆症の予防などが報告されている。
特に、よく噛むと盛んに分泌される「唾液」の効用を忘れてはいけないと、小林義典教授は語っています。「唾液の分泌を促進すると、虫歯や歯周病の予防につながり、また、細菌の働きを抑えます。その他、食物中の発がん物質の働きを抑えたり、アレルギーに関わる抗原に加え、活性酸素を消失させます。さらに、ウイルスなどを直接攻撃するNK(ナチュラルキラー)細胞を増加させたり、老化を抑制したり、私たちの体にとって、大変重要な働きをしているのです。十分な唾液の分泌を促すためには、歯ごたえのある食物を一口で30秒、または30回以上よく噛む必要があります」
-よく噛んで唾液を出すことの効用-
味覚を助長
美味しさを味わい、脳を刺激してリラックス効果を生む。
消化・吸収を助長
消化酵素アミラーゼがデンプンを分解して消化を助ける。
成長を助長
唾液由来のホルモンが、上皮細胞の成長や神経細胞の増殖・脳細胞の成長を促す。
むし歯や歯周病予防
原因菌を洗い流すだけでなく、唾液に含まれるスタテリンが歯の再石灰化を促し、また歯を強くする。
口腔粘膜の修復
食べ物で傷ついた口の中の粘膜を修復する。
消火器粘膜の保護
唾液に含まれるムチンが、食べ物をオブラートのように包んで食道や胃の粘膜を保護する。
抗菌作用
抗菌作用のある唾液中のリゾチウムやラクトフェリンなどが細菌の働きを弱める。
食物中の発がん物質の発がん性を抑制
唾液酵素のペルオキシターゼが食物中の発がん物の発がん性を弱める。
活性酵素の消失
唾液中のペルオキシターゼが活性酵素を消す
NK細胞の増加
唾液中のラクトフェリンが免疫細胞のNK活性を増加させる。
老化の抑制
唾液中のEGF(上皮成長因子)やNGF(神経成長因子)などのホルモンが、老化を抑制する。
糖尿病の予防と治療効果の向上
唾液に含まれるIGFという物質がインシュリンと同じような働きをして、糖尿病の予防と治療効果を高める。