入れ歯を入れなくても、大丈夫なのでしょうか?

Question おじいちゃんは、入れ歯を入れずに歯ぐきで食事ができています。このままでも大丈夫なのでしょうか?
Answer 大丈夫ですが、健康のためには入れ歯を入れたほうがいいでしょう。
入れ歯の目的は、歯を入れるのと同時に、複雑で精妙な咀嚼機能(モノをかみ砕くこと)や嚥下機能(物をのみこむこと)を回復し、息の漏れを防止して明瞭な発音機能を改善することにあります。さらに口もとがより若々しくなることで肉体的、精神的そして社会的にも活動的になることを手助けするものです。
食物摂取と消化吸収は、人が生きるためのエネルギー獲得にきわめて重要です。咀嚼は、胃腸における消化・吸収にも大きく影響することになります。
逆に、咀嚼をしないで食物を丸呑みこみすると、胃腸に負担がかかり、消化不良にもなります。また、咀嚼運動としての口の開け閉め運動を活発に行うことで脳の血流量が増えるという報告もあり、脳の老化防止にも良い影響も見られます。
ご質問の方のおじいちゃんの入れ歯は部分入れ歯でしょうか?総入れ歯でしょうか?
部分入れ歯で、喪失した歯が少数であれば、あえて入れ歯を使用しなくてもよい場合もあります。多数の歯を喪失していたり、総入れ歯の場合には、基本的に入れ歯の不都合を調整して、先に挙げた多くの機能の回復が優先されなければなりません。
しかし、決して健康的とはいえませんが、食事にあまり苦労せず、会話にもさして問題なければ、人さまざまな考え方と理解してもよいのでしょうか。
数年前、超長寿の双子のきんさん・ぎんさんは、入れ歯を入れてなくてもあれだけ健康的に活動しておりました。テレビで見る限り、食事もよくいただいていたようです。ただ、周りの方たちによる食事の用意は大変だったと思いますが・・・。

歯石がたまっている

Question 歯石がたまっているのですが、どうしたらよいのですか?
Answer 歯科医師や歯科衛生士に歯石を除去してもらいましょう。
むし歯や歯周病の原因のプラーク(歯垢)は、放置しておくと、唾液や血液の成分を吸って徐々に硬くなっていきます。それが歯石とよばれるものです。
その表面はざらざらしているために、さらにプラークが付きやすくなり、石になる際に歯周病の病原菌を封じ込めているため、プラークと同じく歯周病の原因となります。よって、歯から完全に除去する必要があります。
その方法は、主に二通りあります。
ひとつは、スケーラーまたはキュレットとよばれる手用の器具を使い、先に付いた刃を利用して、歯の表面から歯石をがりがりと削り取る方法です。これはとくに歯ぐきにもぐり込んでいる深い部分の細かい歯石を取る際に便利です。
もうひとつは超音波スケーラーという器械を使って、器械の先端部分の超音波振動を利用して、歯石を破壊してしまう方法です。これは歯ぐきの上の部分の多量の歯石を取り除く場合に役立ちます。また歯ぐきの下の頑固な歯石を取る際に使うこともあります。
歯周病が治りにくいのは、この歯石が歯の根の表面のいろいろなところに潜んでいるからです。歯科医師や歯科衛生士はこれらの歯石を見つけ出し、排除するエキスパートです。
1回で取り切れない場合は、同じ場所を何回も行うことがあります。
それでは、歯石を付けない一番の予防法は?そうです、歯石の前身であるプラークを、歯みがきによってきれいに取り除くことです。

噛む力が弱いのですが、日常生活で鍛えることはできますか?

Questoin
噛む力が弱いのですが、日常生活で鍛えることはできますか?
Answer
咀嚼筋などを鍛える方法と、顔や頭を支えている頸や胸の筋肉を鍛える方法があります。
そのためには、食事のときに咀嚼回数を多くするように心がけることが一番大事です。また、食事の合間にチューインガムを噛むことで、咀嚼筋や頸の筋肉を鍛えることもできます。頸や胸の筋肉は、ダンベル体操などで刺激を与えてやるといいでしょう。

乳歯のむし歯がひどいので永久歯こそ大切にしたいと思いますが、そんなことできるでしょうか?

Question
乳歯のむし歯がひどいので永久歯こそ大切にしたいと思いますが、そんなことできるでしょうか?
Answer
もちろんです。まずは正しい生活スタイルを身につけること。今日からはじめましょう。
むし歯は、ひとつの原因で起きるのではなく、複数の因子がからんだ疾患です。次の4つの対策を、できるところからはじめてください。
①「甘いもののダラダラ食べ」を止める。
一番重要で、一番難しいのがこれ。赤ちゃんの頃から飴をもらって食べる習慣はありませんか。あるいはのどが渇いたら、水よりもジュースやイオン水を好んで飲んでいませんか。甘い物はデザートとして食事の直後にたっぷり与えましょう。手作りのおやつをドドーンと与えて満足させ、他人から飴をもらわない子どもにしつけられればベスト。のどが乾いたら「水」か「お茶」を飲ませます。これが守れると口の中のベトつきがだいぶ減ります。
②フッ素入りの歯みがき剤を乾いた歯ブラシに適量つけて、朝晩2回ていねいにみがく。
自分で磨かせた後で大人が行う、仕上げ磨きは必須です。
③虫歯の悪玉菌、ミュータンス菌を親子ともに口の中から減らす。
ミュータンス菌がつくるプラークは非水溶性なので、みがいてもみがいても落ちないレンジ汚れのような粘着度があります。毎食後、キシリトールガムかタブレットを食べることで、ミュータンス菌の数は減っていきます。ただし、歯みがきができていることが前提です。
④かかりつけの歯医者さんをもち、定期的に検診を受ける。
何でもなくても、15歳までは定期健診を受け、フッ素塗布やシーラント処置を受けましょう。
以上が実行できたら、ピカピカの永久歯に育ちますよ。がんばって!

ケガを防ぐためにはマウスガードが効果的だそうですが、どれくらいの効果があるのですか?

Question
ケガを防ぐためにはマウスガードが効果的だそうですが、どれくらいの効果があるのですか?
Answer
ある年の高校ラグビー全国大会でマウスガードを義務化したところ、ケガが減ったそうです。
マウスガードには、スポーツの競技中などに起こる口の中や周りのケガ、アゴの骨折、頚部へのダメージ、脳震盪(のうしんとう)などを予防する効果があります。マウスガードがなぜケガやダメージを予防する効果があるのかというと、いわばショックアブソーバーのはたらきをするからです。すなわち、弾力あるマウスガードの素材がクッションとなり、衝撃を吸収するのです。さらに、マウスガードを装着し、グッと噛みしめると、噛みしめたところの面積が広がります。その結果、衝撃が広く分散されることになります。1か所に集中して衝撃が伝わると、その歯にダメージが及んだり、アゴが骨折する要因になりかねません。
では、実際にどれくらい効果があるのかを調べた調査によると、3つの高校のラグビー部(計205名)で、マウスガード未使用時には、6か月間で87件の口の中や周り、アゴの骨折、脳震盪などを含めた外傷例がありましたが、全員マウスガードを使ったら6か月間で26件にまで減少しました。同じような結果は、他の調査でも数多く報告されています。また、最近では科学的根拠に基づいたマウスガード有効性を報告した研究もあります。
もちろん、マウスガードの材料がもっている許容範囲を超えるような大きな力を受けた場合は、ケガをしてしまいます。しかし、その程度や範囲は間違いなく小さくなることはご理解いただけるのではないでしょうか。
スポーツは、安全に行ってこそ楽しいものであり、健康づくりにも役立つのです。そのためにも、マウスガードを使いましょう。

デスクワークでずっと下を向いて作業をしていると、顎関節症が悪化すると聞きました、本当ですか?

Question
デスクワークでずっと下を向いて作業をしていると、顎関節症が悪化すると聞きました、本当ですか?
Answer
その可能性はあります。歯を食いしばることが多く、関節に負担をかけてしまうからです。
あなたが下を向いて、書いたり、パソコンを使ったりといったデスクワークをしている姿を想像してください。その時にあなたの歯はどこにありますか?通常は上顎の歯と下顎の歯はふれあうことはなく、空間を形成していて、その間に空気や舌が入り込むような状態になっています。しかし、すごく面倒な作業や複雑な作業をしていると、思わず歯を食いしばっていることが多くなります。食いしばりが一過性ならとくに問題はないのですが、その状態が長時間、長期間に及ぶと、顎関節症になったり、悪化させたりするのです。これはデスクワークに限らず、炊事など家庭での家事労働でも同じくらい、悪化の原因になりやすいのです。
これらの作業の何が問題なのかというと、実は下を向いて作業していることがいけないのです。うつむき加減で作業をしていると下顎は顔の前のほうに下がっていきます。唾液もよだれとして出やすくなるでしょう。これを避けるために、 歯を食いしばってしまうことが多いのです。この状態が長引くと、関節に器械的、生物学的負担をかけるので、ついには関節組織が壊れてしまいます。さらにかむために使う筋肉も疲労して筋肉痛が起こり、それが顔全体の痛みとして認識されることが多くなります。
予防法は簡単で、デスクワークでも家事でも、たとえばおしゃべりをするとか、歌を歌いながら作業をするとか、場合によってはガムを噛みながら作業をするなど、食いしばらないための工夫をすればよいのです。

矯正中の歯みがきでは、ふつうの歯みがきとはちがった注意が必要ですか?

Question
矯正中の歯みがきでは、ふつうの歯みがきとはちがった注意が必要ですか?
Answer
矯正中は歯みがきが難しい状況になるので、時間をかけて1本ずつみがくようにします。
一般的な矯正装置は、治療中は取り外しができず、歯に装着されたままになるので、一時的にせよ歯みがきが難しい状況になります。そこで、次の①~⑤に注意して、時間をかけて1本ずつみがくように指導しています。
① 最初、歯みがき剤はつけずにみがく。最初からつけると泡がでてさっぱりした気がするので、実際はみがけていなくてもみがいた気になってしまいます。最後に歯みがき剤をつけて仕上げみがきをするように。
② 手鏡を見ながらみがく。洗面台のような大きな鏡では、奥のほうがよく見えません。自分専用の手鏡を使うとよいでしょう。
③ 補助歯ブラシの使用。矯正装置は複雑な装置です。人によっては普通の歯ブラシだけでは上手にみがけない場合があります。細かいところは、インタースペースブラシなど小回りのきく小さなブラシを使います。
④ デンタルフロスの活用。歯と歯の間(隣接面)はなかなかみがけない場所。面倒でもフッ素つきのデンタルフロスを利用しましょう。
⑤ 洗口剤の利用。本人はちゃんとやっているつもりでも、残念ながらみがけていないこともあります。そこで、寝る前にフッ素含有の洗口剤でブクブクゆすぎましょう。
おすすめ歯ブラシは、小回りがきくようにヘッドは小さめで、毛の硬さはやわらかめ。硬いものは歯肉を傷めるので避けましょう。握り方は必ず鉛筆もちで、ていねいに1本ずつ磨いてください。矯正中の歯ブラシは装置のせいですぐ傷み、寿命がはやいのでこまめに取り替えましょう。

笑うと奥歯の金属が光って見えてしまいます。

Question
笑うと奥歯の金属が光って見えてしまいます。目立たなくするにはどんな方法がありますか?
Answer
金属の部分が小さいなら歯の色をしたコンポジットレジンやセラミックでおきかえられます。
気軽に始められる順にお答えしましょう。まずは、メイクアップにひと工夫。口紅を肌に近い淡い色にして目元を強調したメイクをすると、見る人の視線を口元から目元にそらす効果がありますよ。
次は、金属部分に歯のマニキュア(ホワイトコート)を塗り、金属色を隠す方法です。費用は1本2千円程度、耐久性は1~3ヵ月です。欠点は噛む面や下の歯に使えないため、口を大きく開けた時には金属が見えてしまいます。
ここからは、歯の金属をはずして行う処置の紹介です。はずした金属部分が小さいなら、コンポジットレジンと呼ばれるプラスチックのような材料を直接詰めることが可能です。これですとその日のうちに歯が白くなりますし、費用も保険内です。しかし、金属が大きい場合、削って歯を整え、次の来院時に、コンポジットレジンかセラミックスで作っておいた白い詰め物を、歯に接着します。この処置は保険外のことが多いです。
金属が冠の場合、神経の治療や土台づくりが必要となる場合が多く、来院回数が多くなります。しかし、セラミックスなどの冠で歯を覆ってしまうので、仕上がりはもっともきれいです。
どの材料や方法が適しているかは、噛み合わせなどの考慮もありますから、金属をとる前に先生と相談しましょう。笑うと見える金属の部分を一掃するのは、確かに高い治療費がかかる場合が多いです。でも、最高の笑顔で笑えるとしたら、それだけの価値があるのではないでしょうか。

4歳になる息子の口が臭くて。

Question
4歳になる息子の口が臭くて。むし歯もなく、歯や口に問題はないと思うのですが、ほかに原因があるのかしら?
Answer
1日中口臭が強いのでなければ生理的口臭の可能性が高いです。あまり神経質にならないように。
「むし歯がないのに口臭がある」のは不思議かもしれませんが、実際に調べてみると、意外にもむし歯のない子どものほうが口臭が強いようです。もちろん、歯に大きな穴があいて神経が露出したり、食べ物が詰まったりすれば、むし歯も口臭の原因になりますが・・・・。
坊やの場合、1日中口臭が強いわけではないはずです。いかがでしょうか?朝食前とか、幼稚園から帰ってきた時、そして外で遊んで帰ってきた時などに臭いませんか?このような状況でしたら、生理的口臭の可能性が高いです。何も飲み食いをしていない時間が1~2時間続きますと、細菌や粘膜の垢が増え、生理的口臭が出てきます。きちんとした証拠はないのですが、理論的には、歯の生え変わりも口臭の原因となります。
根本的な対策としては、まず口臭の原因となる歯肉炎や大きなむし歯がないか、歯医者さんで調べてもらってください。そして半年に1回は、必ず歯医者さんのチェックを受けましょう(定期的な歯科受診を坊やの一生の習慣にしてあげましょう。一緒にお母さんも健康のためにチェックを受けるとよいです)。また、舌が汚れていたら、舌ブラシで時々掃除してください。万一、1日中臭うとか、鼻息が臭い、吐瀉物に近い臭いがする、かび臭い、魚臭い、その他、特殊な臭いがするようでしたら、小児科医に相談しましょう。
お母さんにお願いしたいことは、神経質になりすぎないことです。親が気にしすぎて、萎縮してしまっている子どもを時々見かけます。子どもの心にはよくないことです。

全部歯を抜いて総入れ歯にしたら味がよくわかりません。

Question
全部歯を抜いて総入れ歯にしたら味がよくわかりません。どうしてなのでしょう?
Answer
総入れ歯の大きさや熱が伝わりにくい素材も原因の一つです。
味覚には、甘い(あまい)・酸(すっぱい)・苦(にがい)・鹹(しおからい)・辛(からい)があり、さらに「うま味」や「コク」などが加わり、複雑な組み合わせで味が形成されます。さらに味覚に影響する要素に、摂取した食品そのものの性状があります。温度(例:熱いスープ、アイスクリーム)、硬さ(例:固焼きせんべい、プリン)、歯切れ(スルメ、レタス)など、複雑な多岐にわたる「食感」です。
味覚を感じるための一番重要な器官は、舌の表面にある味蕾(みらい)です。また、唇、頬、ノド、の感覚もきわめて鋭敏です。総入れ歯は、上下の顎の土手(顎堤)を中心として、粘膜の大部分を覆うような形態をしているのが特徴です。入れ歯の歯ぐきに相当するピンク色の部分(義歯床)はプラスチック(レジン)でできていますが、入れ歯の安定やさまざまな外力に耐えるために、一定程度の厚みや長さを確保しなければなりません。しかもレジンは熱を伝えにくいため、レジンで粘膜を覆われるとどうしても味覚に影響することになります。また、舌ざわりも味覚に大きく影響します。
解決方法としては、入れ歯の強度や安定性を損なわない程度に義歯床を調整し、まず慣れることが必要かと思います。上顎(口蓋)部が金属でできた入れ歯(金属床)も選択肢の一つでしょう。金属床はレジン床に比べて薄く設計でき、熱の伝導性がよいため、熱いものは熱く、冷たいものは冷たい快適な食事ができます。しかし、金属床は保険がききませんので、費用の点で、かかりつけの先生とよく相談するようにしてください。