Q 口腔ガンなどの手術の傷跡を隠すのに、メディカルメイクというものがあると聞きました。どういうものなのですか?
A 形成外科、皮膚科、歯科、時に精神科と協働して、メイクだけで傷跡に対応します。
「振り返られない自分になりたい」。みなさん、この言葉をどう受け止められますか。
手術のため、または事故や病気による外観上の傷跡により自信を失い、社会生活にうまく適応できない人が少なくありません。メディカルメイクの目的は、このような人々が求める「美の追求ではなく、自己を受け入れるための外観づくりです。患者さんを悩みから解放し、社会復帰に向け後押しする医療の一環です。
歴史は、1928年、アメリカにおけるカバー用化粧品開発から始まります。イギリスでは、1970年代、英国赤十字社の看護婦さんたちがボランティアで、傷病兵のアザやキズ跡をファンデーションで隠したのが始まりです。日本では、1960年の全国皮膚科学会で初めて実演されました。病変部を目立たなくするためには専門的なメイク技術を駆使します。しかし、重要なことは、この特殊メイクを、患者さんが習得し、毎日簡単に実践できることなのです。使われるメイク用品も医療用です。例えば、ファンデーションは顔料に工夫があり、下地を隠す効果が抜群で瘢痕への高い付着能も有します。メイクには限界がありますが、このような分野があることを一人でも多くの方に知っておいて頂きたいと思っています。