「舌側矯正装置」というものがあるそうですが、どういう装置ですか?

Q 「舌側矯正装置」というものがあるそうですが、どういう装置ですか?舌を傷つけたりしませんか?

A 表側にする装置にくらべて料金が高くなりますが装置が見えないのが利点です。

舌側矯正装置とは、通常は歯の表面に付ける装置を、歯の裏側につける方法です。25年ほど前に日本の先生が世界に先駆けて開発、米国の先生も違う形の舌側矯正装置を考案し世界中に広がりました。とくに日本、韓国、ヨーロッパで広まり、日本の歯科医の多くはトップレベルの技術でたくさんの患者さんの治療をしています。

この装置の一番の利点は見えないこと。矯正をしたいけれど装置に抵抗がある方には福音となりました。モデルさん、タレントさんなど多くの芸能人や有名スポーツ選手もこの方法で治療を受けています。

ただ、違和感が表の装置にくらべて強く、しゃべりにくい、歯みがきしにくいなどの問題点もあります。舌を前に出す癖が改善されやすいという利点があります。

技術的に難しいので誰でも治療できるわけではありませんし、下側矯正装置を得意にしている先生が近くにいない場合もあります。また料金も表の装置に比べ、1.5倍から2倍高くなるのが一般的です。治療期間は歯並びの状態によっては舌側矯正装置の方が早いときもありますが、通常は長くかかるとお考えください。装置にはそれぞれ利点欠点があります。目立ちやすさ、値段、治療期間、お手入れ、治り方など何を一番に優先させるかをよく相談してみましょう。

顎が重く、耳の下あたりを押さえるととても痛いのです。

Question 顎が重く、耳の下あたりを押さえるととても痛いのです。受診したほうがよいでしょうか?

Answer 受診するべきです。まずは口腔外科か、耳鼻咽頭科をおすすめします。

はじめに受診する科は一般歯科ではなく口腔外科または耳鼻咽頭科がよいでしょう。このような自覚症状を伴う疾患はいろいろあります。たとえば耳下腺炎をはじめとした耳下腺関連疾患や中耳炎など耳疾患などがあります。いろいろある疾患のうちのひとつが顎関節症です。発症頻度から見ると顎関節症のことが多いと思いますが、上記の疾患を除外する意味からもはじめに受診するのは口腔外科か耳鼻咽喉科または、その心得がある歯科を訪れるべきでしょう。

顎関節症として考えると、この症状は痛みを伴う顎関節症としては比較的典型的なものです。この症状は顎関節症としては

① 筋肉の長期間にわたる過緊張による筋筋膜痛という状態。

② 顎関節に何らかの炎症が生じている状態。

以上の2つが主に考えられます。

① 筋肉の異常であれば、あたためて(あるいは冷やして)ゆっくりと大きく開閉口することで痛みを軽減させることができます。②顎関節の異常の場合には無理をすると状況っを悪化させることがあります。安静にして、しばらくは硬いものを食べないように、うつ伏せ寝や頬杖をつかないようにして様子を見ます。そうすると数日後には改善してくることがあります。

外国ではむし歯予防のために水道水にフッ素を加えていると聞きました。日本ではなぜやらないのですか?

Question 外国ではむし歯予防のために水道水にフッ素を加えていると聞きました。日本ではなぜやらないのですか?

Answer  すでに世界の70カ国以上が実施していますが、日本では反対意見もあり実施されていません。

水道水にフッ素を加えること(水道水のフッ素化)は、むし歯予防の方法として最も有効なものの一つであることはよく知られています。世界の予防歯科の研究者の実験結果からも証明されており、世界の70カ国以上で水道のフッ素化が実施されています。

アメリカ合衆国やカナダ、ヨーロッパ諸国では人口の50%以上にフッ素化された水道水が供給されています。水道水に添加されるフッ素の濃度は1ppm(1%の1万分の1)が適当であるとされています。

しかしながら、水道水のフッ素濃度が2ppmを越えると歯に斑点が生じる事が知られており(斑状歯といいます)、さらにそれ以上フッ素を添加すると毒性が強くなり全身に重大な障害を生じることが報告されています。そのため、日本では一部の市民団体などから「フッ素には毒性がある」として水道水のフッ素化に反対しており、むし歯予防のための水道水のフッ素化が実現していないのが現状です。

むし歯予防の観点からいえば極めて残念な状況でありますが、恐らく今後も当分わが国ではフッ素化は実施されそうにありません。そこで、やや効果は劣るのですが、フッ素洗口やフッ素入り歯磨剤などを毎日応用してむし歯予防に努力していただければ幸いです。

入れ歯のヒビは応急処置ですぐに直りますか?

Question  入れ歯の手入れをしているときによく見たらヒビが入っていました。応急処置ですぐに直りますか?

Answer  数分で固まる材料(レジン)で比較的簡単に1ないし数回の治療で修理できると思います。

入れ歯にヒビが入る原因には、清掃中などの不注意で硬いものとぶつかりヒビや破折が発生する場合や、口の中で日常的に使用していくなかでヒビが入る場合があります。

前者の場合は、注意深く丁寧に清掃することが必要です。総入れ歯に比べて部分入れ歯の場合はやや複雑な形をしているので汚れも溜まりやすく清掃もしにくくなります。入れ歯専用のブラシなどを用いると効果的に清掃できます。洗面所のシンクに水を溜めて清掃すると、たとえ落下してもポチャンと水面に軟着陸してくれるので危険性は低くなります。

ヒビが入りやすい所は、通常の総入れ歯では、上顎・下顎の入れ歯の真ん中部分やピンク色のプラスティック(レジン)部分の縁などです。部分入れ歯の場合は入れ歯安定装置である金属製のばね(クラスプ)の周囲がヒビの好発部位となります。入れ歯と歯ぐきが合わなくなるとこの安定装置を支点にギッタンバッコンと無用な動きが起きてきます。すると噛む力がその装置に集中し、ひいては入れ歯へのダメージとなっていきます。年に2回ほど入れ歯の手入れとチェックをすることで不愉快な現象は予防できるかと思います。

そこでヒビに対する処置ですが、まずはヒビの原因や程度を詳しく調べます。口のなかの環境━歯ぐきや残っている歯と入れ歯との不適合が原因であればそれを解決してから修理することになります。一般的な修理方法としては、数分で固まる入れ歯とほぼ同様の材料(レジン)を用い、比較的簡単に1ないし数回の治療で行えるかと思います。

フッ素を歯科医院で塗布してもらっていますが、フッ素入りの歯みがき剤をさらに使う必要はありますか?

Question フッ素を半年に1度歯科医院で塗布してもらっています。フッ素入りの歯みがき剤をさらに使う必要はありますか?

Answer それぞれ含まれるフッ素の「濃度」が異なります。両者を並行して使うことが大切です。

むし歯予防に「フッ素」役立つことをご存じの方が増えて、とてもウレシイです。結論からいうと、歯医者さんが塗布するフッ素と、歯みがき剤の中に含まれるフッ素では、濃度がまったく違うので、両者を並行して使うことがむし歯予防には必要なんですよ。身近になったフッ素ですが、「濃度」をよく知って安全に使いこなしましょう。

歯医者さんがむし歯予防のために塗布するフッ素と、歯みがき剤の中に含まれるフッ素では、濃度がまったく違うので、両者を並行して使うことがむし歯予防には必要なんです。身近になったフッ素ですが、「濃度」をよく知って安全に使いこなしましょう。

歯医者さんがむし歯予防のために塗るフッ素は、9,000ppmF(ppm=100万分の一)と高濃度です。いっぽう日本で売られている歯みがき剤の中に含まれるフッ素濃度は、大人用も子ども用も、だいたい900~970ppmFと低濃度。市販のベビー用歯みがきジェルやフッ素スプレーでは、100ppmFとさらに低い濃度になっています。また歯科医院専売の子ども用フッ素ジェルには、6歳未満のお子さん向けに500ppmFのものもありますから、お子さんの年齢に合わせて選んであげてください。

カリオロジー(むし歯の学問)で知られるスウェーデンのダグラス・ブラッタール先生によれば、子どものむし歯が減った要因で、最も重要な役割を果たしたのは「フッ化物配合歯みがき剤」である、と世界の専門家の75%が回答したそうです。10年前の調査です。その後日本でも健康増進法が施行され、児童の90%以上がフッ化物配合歯磨剤を使うようになる、という数値目標が掲げられましたから、朝晩2回、ご家庭でフッ素入り歯磨き剤でみがくことは、世界が認めるもっとも安全で、効果的なむし歯予防法であるといえます。

入れ歯の清掃には何かコツがありますか?

Question  入れ歯の清掃には何かコツがありますか?入れ歯用ブラシや歯みがき剤の使い方を教えてください。

Answer 通常、歯磨剤(はみがきこ)は入れ歯のレジン(プラスチック部分)をすり減らす恐れがあるため、清掃時には控えてください。

入れ歯用のブラシには数多くのタイプがあります。上顎の入れ歯のような凸凹が少なく比較的平坦な部位はどのようなブラシでも汚れは容易に取れます。

逆に下顎の部分入れ歯の留め金(クラスプ)付近の狭小で汚れが溜まりやすい部位などの清掃には注意が必要です。

入れ歯も1つの「食器」と考えてください。たとえば、朝食に使用したご飯茶碗に米粒がこびりついた状態で再度夕食に使用するでしょうか?必ず食器は洗って乾燥させてから次の食事に用いるでしょう。汚れたお茶碗にご飯をよそうことは決してないと思います。入れ歯の手入れも同様です。

入れ歯の汚れには、①食事直後の食べかす、②入れ歯表面に粘着しているネバネバ汚れ(デンチャープラーク)そして③長期の清掃不備による固くて灰白色の歯石のような汚れなどがあります。①②の汚れは比較的容易に除去できますが、③の汚れの除去には歯科医師の判断が必要です。決して自分でカッターなどを使用しないようにしてください。

そこで日常的な注意点ですが、入れ歯清掃時には、洗面所のシンクに水を溜めておけば、万が一、手を滑らせてもポチャンと水面に軟着陸して破損の恐れがなくなります。

ブラシでの清掃時には歯みがき剤などは決して使用しないでください。通常、歯磨き剤に含まれている研磨剤が入れ歯のプラスティック(レジン)をすり減らしてしまう恐れがあるからです。入れ歯専用の清掃剤でよいと思います。

歯周ポケットの奥深くの歯石を取るには外科手術は、どのような方法ですか?

Question  歯周ポケットの奥深くにたまった歯石を取るにはフラップ手術という外科手術はどのような方法ですか?保険でできますか?

Answer 歯の周りの歯ぐきを麻酔してメスで切り開き、歯石を取り除いた後、元通りに縫い合わせます。

歯周病を引き起こす病原菌の集合体であるプラーク(歯垢)が石のように硬くなったものを歯石と呼びます。プラークと歯石は歯ぐきの下に入り込み歯の表面にこびりつき、そこで炎症を起こし、歯の周りの歯ぐきや骨を破壊します。その結果できのが歯周ポケットで、これは歯周病が進むと深くなります。

歯石を取る治療のスケーリングは、ポケットの中に器具を差し込み、手探りで歯の表面の歯石を掻き取り、ポケットの中をきれいにします。しかしポケットが深いところでは、器具がうまい具合に歯石に届かなかったり、届いても正確な操作ができなかったりします。

そこでフラップ手術です。手術を行う歯の周りの歯ぐきを麻酔して、メスで歯ぐきを切り開きます。これにより、歯科医師は歯石のついている場所、範囲、量などを肉眼で確かめることができます。こうなればしめたもの。器具を確実に使って歯石をきれいに取り除いていきます。またデコボコしている歯の表面を滑沢な状態に仕上げます。その後、切り開いた歯ぐきはできるだけもとの位置に戻し、しっかりと縫い合わせます。最後に包帯をつけることもあります。

処置の時間は、歯の本数や状態にもよりますが、数本で1時間から2時間ぐらいです。細かい操作をするので時間がかかります。抜糸は、1~2週間後。もう歯周ポケットはなくなっています。その後再発しないよう、歯ぐきを歯みがきでしっかり管理します。

歯並びの治療には、どうしてあんなに長く時間がかかるのでしょうか?

Question 歯並びの治療には、どうしてあんなに長く時間がかかるのでしょうか。

Answer  歯に無理のない力をかけ顎の骨のなかを少しずつ移動させるからです。

歯並びの矯正治療とは、矯正装置で歯に無理のない力をかけ、歯槽骨(歯の根が生えている顎の骨)のなかで少しずつ移動させる治療です。

骨代謝を利用してゆっくりと正しい位置にまで持っていくわけですから、どうしても時間がかかってしまいます。髪の毛が1ヶ月で何センチも伸びないように、は1ヶ月で数ミリ動くだけです。同じ年齢でも個人差によって移動量は異なりますが、1ヶ月に動く量には限度があることを理解してください。

矯正装置は4~6週間に1回チェックを行い、歯の動いた状況に合わせて調整します。

年齢や不正咬合の状態にもよりますが、矯正装置をつける機関は抜歯をする場合、一年半~2年かかります。その後は歯がもとの位置に戻る(治療後の後戻り)のを防ぐため、取り外しのできるリテイナーという保定装置をはめます。リテイナーは、はじめの1年くらいは1日中、その後は夜だけというように、徐々にはめる時間を減らしていきます。

リテイナーをはめる期間は矯正装置をつける期間と同じくらいかかるので、完全に矯正治療が終わるまで治療期間と保定期間をあわせて3~4年は必要だと考えてください。

矯正治療は期間も長くかかり、歯みがきのトレーニングなど治療中の患者さんが努力を要するたいへんな面もありますが、その努力の分確実に美しさと健康な歯を手にすることができるのですから、ぜひ頑張ってほしいと思います。長い人生のほんの数年のことと思えば、たいした期間ではないと思いますよ。考え方をポジティブにしてみてはいかがでしょう?

母の介護のため口腔ケアを行うときは、手袋をつけるべきですか?

Question 母の介護のため口腔ケアを行うときは、私も歯科衛生士さんのような手袋をつけるべきですか?

Answer もしケアをされる人、あるいはする人で何か感染症にかかっていれば手袋をすべきです。

家族の口腔ケアを行う際に、手袋をつけるかどうかは大変答えにくい質問です。口腔ケアに関する本を何冊か調べても記載されていません。歯科衛生士さんなど専門家が来て口腔ケアを行ってくれるのであれば、その人がゴム手袋をして当然と思います。でも家族同士の場合は別問題です。というのは手袋をつけることによって心理的な隔たりができるからです。

ゴム手袋をするのは感染予防のためです。専門家は、あなたのお母様だけでなくほかの要介護者の口腔ケアも行います。誰かの菌を他の人に移さないようにするためにも自らが菌の媒介者にならないよう感染予防のために手袋をするのです。そう考えると、たとえばケアをされる人がB型肝炎やC型肝炎などの感染症にかかっていれば、家族であっても手袋をすべきです。口腔ケアの際はとくに唾液や血液などに触れる最も感染の危険が高い作業だからです。逆に口腔ケアを行う人に感染症があったり、手指が汚れているときも手袋をすべきです。要介護者は免疫力が低下していて、感染しやすいからです。

ゴム手袋は品揃えがよいドラッグストアで手に入るでしょうが、ない場合は通販などがあります。水仕事用でも十分使えます。きれいに洗って乾燥させれば再度使用が可能です。

なぜニンニクを食べると口臭が出るのですか?

Question なぜニンニクを食べると口臭が出るのですか?また、口臭の原因となる食べ物、口臭を消してくれる食べ物について教えてください。

Answer 口臭の原因となる硫黄化合物や金属のセレニウムの化合物が含まれているからです。

ニンニクは、口臭の原因となる食べ物の代表です。しかし、多くの料理で欠かすことができないうえ、薬効のある大事な食品です。

ニンニク口臭は、ニンニクに含まれる硫黄化合物や金属であるセレニウムの化合物が原因です。両者ともに薬効成分で、前者はアリシンやアリインが有名です。これに似た成分は一部のビタミン剤にも含まれています。また、後者にはがん予防などの重要な薬効があります。

ニンニクを食べてすぐに出てくる口臭は、水を飲めばただちに消えます。しかし、食べた後の口臭がやっかいです。消化器でアリシンからつくられるアリル化合物がニンニク口臭の原因となります。この化合物は長時間にわたり体中に残ります。小さな一片のニンニクを食べても24時間以上残り、それが肺から呼気中に出てきます。これがあの嫌な臭いとなります。一方、食べて数時間の口臭は、もうひとつの原因物質セレニウム化合物が原因です。

興味深いことに、ニンニク口臭では大量のアセトンも出てきます。ニンニクの薬効により、体脂肪が分解されてアセトンに変化し、呼気や尿中に出てくるのです。つまり、ニンニクはダイエットにも効果があるわけです。

その他、ニラやネギ類、一部の香辛料、そして意外にもブロッコリーも口臭の原因になります。一方、パセリやパセリ油が口臭を消す食品として、ヨーロッパや北米で昔から信じられているところもあります。