1回で仕上がる治療 -奥歯編-

(栃木県日光市の歯科 沼尾デンタルクリニックで実際に行われた治療例です。これらの写真は患者さんご本人の承諾を得て公開させていただいております。もちろん個人を特定できるものは一切掲載しておりません。)

治療前

古い金属が奥歯につめられていますが、その周囲から虫歯が発生しています。
このまま放置しておくとどんどん中にむし歯が進行してしまうため、治療をすることとなりました。
古い金属自体も輝きを失い、黒く変色しています。

古い金属とむし歯を削り取りました

黒く変色した金属と、その周囲に発生したむし歯を削り取りました。
この状態に削るのに麻酔は使用しなくても痛みを感じることはなく削ることができました。

穴の奥に一部、黒くなっているところがありますが、これは古い金属が黒く変色したときに歯まで黒く変色させてしまった痕です。
この黒く変色したものはむし歯のような病的な状態ではなく、ただ着色をして硬くなっているために、削らないでおいてあります。
この変色したところまで削ると、穴が深くなり、しみる症状が出てきたり、ひどい場合は神経を取るようなことになりかねないからです。

治療後

削って穴が開いたところに、光で固まるプラスチックをつめていきます。

穴の奥に黒く変色したところは、詰め物によって色はマスキングすることができます。
白く自然な状態につめることができます。
チョットつやを出しすぎてしまい、ほかより光ってしまいましたが、奥歯なのでまったく気がつかないと思います。
この治療も一日で治療が完了するものです。
(治療過程の写真をweb上でこのような形で匿名で使用することは、患者さんご本人の承諾を得て使用させていただいております。この場をお借りしてご本人へ改めて御礼を申し上げます。)

前歯の差し歯ができるまで

(栃木県日光市の歯科 沼尾デンタルクリニックで実際に行われた治療例です。これらの写真は患者さんご本人の承諾を得て公開させていただいております。もちろん個人を特定できるものは一切掲載しておりません。)

-前歯がとれた-

この方は、今まで入っていた歯がいきなり取れてしまいました。
これは自分の歯の根が残っているところに作った歯をさしてあったものが、根のところがまたむし歯になってしまい差し歯が取れてしまった方の写真です。


差し歯の状態でも、根の部分がむし歯が進行したり、根にヒビがはいって折れたりして抜かないとダメになってしまうことも珍しくありません。
差し歯にしてある場合、神経を取ってあるのでむし歯が進行してもまったく痛みを感じないことがほとんどです。差し歯にしたからといって安心していると、後でこのようにいきなり歯が取れるという思わぬアクシデントが起こります。
今回のこの方の場合は、むし歯は進行していましたが何とか抜かずに根が使えそうだったので、根の再治療を行ってもう一度差し歯を作っていくこととしました。

-とりあえず仮歯-

歯がないままだと、
・話しにくい
・食べにくい
・見た目が悪い
などと日常生活にとって非常に困ります。しかし、すぐに歯は作れないので「仮歯」というものを作ってそれをつけて、一時的に対応します。


これも歯の根があまりにもむし歯が進行してボロボロになってしまうと、仮歯も作れないこともあります。そのため痛くないからといって放置しておくと、歯が取れても仮歯も入れられないといった、大変なことになることも多いです。その場合は、仮歯ができる状態まで治療してからでないと仮歯も入りません。
この方の場合は、仮歯を入れた状態で根の中の治療を数回の通院で行いました。根の治療が終了した段階で、やっと最終的な歯を作る過程に入っていきます。

-まずは土台を作ります-

根の治療が終了してから、歯を作る過程に入っていきます。
まずは歯を入れるための土台つくりです。土台には主に金属とプラスチックの2種類があります。この材質の選択は歯の根の状態や、保険治療と自費治療などの条件によって選択されます。

今回この方の場合には、プラスチックの素材を選択しました。その理由はプラスチックの土台の特徴は歯の根よりもプラスチックの土台のほうが折れやすいからです。
ここで、どうして折れやすい材質を選択するのかという疑問があると思います。それは、歯は毎日いろいろなものを噛んだり(時々食べ物以外も噛むことはありませんか?)、転んだりしてぶつけたりすることもあります。そのように毎日のように衝撃が歯に加わっているのですが、衝撃が続けていることは歯にとって大きな負荷がかかります。そうするといずれ歯の根は折れてしまうのですが、歯の根が折れた場合はもう使い物にならなくなってしまうので抜歯することとなります。抜歯してしまうとそこにはもう歯の根が残っていないので、差し歯を作ることはできず、ブリッジや入れ歯で歯を作るようになってしまいます。
こういった事態を少しでも回避するため、衝撃が持続的にかかったときに、歯の根ではなく土台のほうが先に折れてくれれば、歯の根は抜かずにもう一度使っていくことが可能な場合が多いのです。土台が壊れてくれれば、もう一度土台から作り直して差し歯にすることが可能だからです。自分の歯を少しでも長く使ってもらい、入れ歯などになることを少しでも回避できるようにとの理由でプラスチックの土台を今回は選択しました。

オールセラミック(金属を使わず瀬戸物だけで歯を作る方法)で歯を作る場合にも、金属の土台よりプラスチックの土台のほうが綺麗に仕上げることができます。

-土台の型を取って歯を作ります-

できあがった土台を綺麗に形を整えて、いよいよ最終的な差し歯の型を取っていきます。
型を取ったものから石膏で模型をおこして、その模型上で差し歯を作成していきます。

今回は金属でベースを作ったところに、セラミック製の歯を盛り上げて作っていったものです。
歯の色はあらかじめ方をとったときに色見本で歯の色を確認しておきます。この色見本も微妙な色合いの歯が多数あるためじっくりと見ていくと悩んでしまい選べなくなってしまうので、患者さんにはパッと見たときの第一印象で決めてもらうようにしています。そのほうが、じっくり選んだときよりも仕上がりの色合いがよく合います。

-口腔内で歯を合わせていきます-

模型上で作成した差し歯を、口の中でぴったり合うように微調整していきます。

土台の状態から、

作成した歯を差し込んで、

微調整をしてぴったり合おうようにしていきます。
土台の部分にかぶさるようにして歯が入ります。そのためこのようにして作った歯を、歯科では総称的に「クラウン(王冠)」といっています。
調整が終了した歯は「接着性セメント」という接着剤を使って土台にくつけていきます。
これで治療は完了です。
あとはむし歯が再発しないよう、丁寧な毎日の歯ブラシと定期的に歯科医院でメインテナンスを行っていけば長持ちします。

-治療前と治療後を比較してみてください-

差し歯ができるまでの最初の状態から終了するまでの一連の流れを掲載します。

前歯がとれちゃいました。

見た目の問題もあるので一時的に仮歯を作りました。

土台を作り、歯の根に立ち上げていきます。これも特殊な接着剤で歯の根に土台をつけていきます。

型を取って石膏模型をおこして、その上で歯を作って生きます。これは金属ベースの上にセラミックで歯を作っています。

模型上で作成した歯を仮合わせしています。土台のうえの差し込むようにしてはまります。

出来上がった歯を歯科専用の特殊な接着剤で装着して完了です。

口元の仕上がり具合です。自然な歯に見えていると思います。
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反対咬合【うけ口】の矯正治療 

(栃木県日光市の歯科 沼尾デンタルクリニックで実際に行われた治療例です。これらの写真は患者さんご本人の承諾を得て公開させていただいております。もちろん個人を特定できるものは一切掲載しておりません。)

矯正治療前

8歳 男児です。
上の前歯より下の前歯が前になってしまい、受け口状態になってしまっています。
まだ8歳であり、永久歯と乳歯が混ざっている混合歯列期です。
上下の前歯4本が生えたところで、前後逆になってしまい、受け口状態になってしまいました。
大人の歯にすべて生え変わるまで待っているより、今の状態を早期に改善したほうが良いので、矯正治療を行うこととなりました。

正面の写真です。

横から見た写真です。上の前歯より下の前歯が前になっているところが分かると思います。

上あごを下から見上げた状態です。前歯が凸凹して並んでいます。

下あごの写真です。

右斜め前から見た写真です。

左斜め前から見た写真です。
この状態を改善するために、矯正装置を取り付けて治療を開始しました。

矯正治療後

受け口状態(反対咬合)になっているものを矯正治療しました。

治療後の正面からの写真です。

横から見た写真です。上の前歯のほうが前になっています。

下から上あごを見た写真です。凸凹していたところは改善されています。

下顎の写真です。

右斜め前から見た写真です。上下の糸切り歯が生えてきています。

左斜め前から見た写真です。

治療前後の比較

治療前後の比較をしてみます

上が治療前の正面写真です。下が治療後の正面写真です。

上下の前歯の位置関係が改善されていることがよくわかると思います。
ここまでが生え変わりの時期の矯正の一次治療です。
今後奥歯に残っている乳歯が脱落して、永久歯が順次生えてきます。
生え変わった段階で歯並びに異常があれば、そこから矯正の二次治療が開始されます。

上が治療前、下が治療後の側面写真です。

上下の歯が完全に逆転しているのがよくわかると思います。
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1回で仕上がるむし歯治療 -上顎前歯編-

(栃木県日光市の歯科 沼尾デンタルクリニックで実際に行われた治療例です。これらの写真は患者さんご本人の承諾を得て公開させていただいております。もちろん個人を特定できるものは一切掲載しておりません。)

1.上顎の前歯編



上顎の前歯の生え際のところに、一度、白いプラスチックをつめて治療した部分の周りからまた虫歯になって茶色に変色してきたかたの写真です。
この状態ではまったく痛みなどはありません。しかし、放置しておけば茶色い虫歯の部分がどんどんと大きくなり、神経の近くまで大きくなると痛みが発生してきます。その場合、治療するには麻酔をうたないといけなくなります。また、最悪の場合、神経も抜くようになります。
そのように虫歯が進行して大変な治療にならないように、早期に治療を行ってしまいます。(本当は虫歯にならないように、予防しておくことがベストですけどね。しかし、虫歯になってしまったものは自然とは治らないので、早期に治療を行います。)
この方の場合は、まだそれほど大きく虫歯が進行していなかったために、麻酔の注射をすることなく虫歯の治療ができました。
1回で仕上がる虫歯治療 2 は削っているところです。

2.虫歯を削ります



古いプラスチックの詰め物とその周囲の茶色くなった虫歯を削ります。
これが歯を削るドリルです。あの「キーン」という音がするものですね。通常、水をシャワーしながら削るので、その水を吸うための掃除機の役目をするものが、右の黄緑色のものです。
キーンと音がなるドリルで削っても、虫歯自体が重度に進行していなかったために、局所麻酔の注射をうたなくても痛みを感じることなく削ることができました。
やっぱり、早期発見早期治療が大切なんです。虫歯が痛くなってからでは手遅れになってしまいます。

3.なぜむし歯は削らないといけないのか?



茶色い虫歯をすべて削り取ったところです。
そもそも、なぜ虫歯はすべて削り取らなければならないのでしょうか?
それは虫歯そのものは、自然と治癒することがないからです。
普通、人間の体は自然治癒力というものがあって、怪我をして傷を負っても、自然と治っていきます。骨が折れてもちゃんとつなげてあげれば折れたところがまたくっつきます。歯の場合は折れても、もうくっつく事はありません。虫歯になって穴が開いたところは、元の形には戻りません。歯は人間の体の中で自然治癒力がない組織なんです。
さらに、むし歯そのものはばい菌の住処であり、ばい菌の塊です。
もう元には戻らないばい菌の塊がむし歯なのです。
そのため、むし歯になってしまったところは、削り取ることになります。
「むし歯ができる→削り取る→穴が開く→つめる」 このサイクルになります。
しかし今回のように、つめた周りがむし歯になってしまうと、また削り取るようになります。そうすると一回り大きな穴になります。そしてまたつめます。
むし歯が再発すると 「むし歯ができる→削り取る→穴が開く→つめる」 このサイクルを繰り返すことになり、穴がどんどん大きくなっていき、最終的には歯がなくなってしまい、抜歯となってしまいます。
だから、むし歯にならないように、むし歯が再発しないように予防歯科を行うことがとても大切なんです。

4.削った穴に接着剤を塗ります



ここからは虫歯を削ってできた穴へ、歯を作っていくプロセスになって行きます。
写真は虫歯につめる白いプラスチックをしっかりと歯にくつけるための接着剤を塗っているところです。表面処理をしっかりと行うことによって、つめたものが取れにくくなります。

5.ペースト状のプラスチックを詰めて固めます


表面処理が終わったあと、削ってできた穴の中にペースト状の柔らかいプラスチックをつめます。その柔らかいプラスチックは青い特殊な光を当てることによって、カチカチに硬く固まります。
上の写真が光を当てる前、下の写真が光を当てている最中です。

6.仕上げ研磨とむし歯予防



青い光で硬く固まったプラスチックを、形を整えて、表面をツルツルに研磨していきます。これも水を出しながら研磨していきます。
ツルツルにする理由は、まず、舌触りや粘膜の当たりがよくなるからです。ザラザラしたところが歯にあるととても気になりませんか?そういったことがないようにツルツルに磨きます。
もうひとつの理由は、表面が荒れているとそこに汚れやばい菌がつきやすくなるからです。汚れやばい菌がつきやすくなると、むし歯の再発するリスクがあがります。ただし、どんなにツルツルにしてもばい菌や汚れは少ないけれどつきます。(これはつめていない自分の歯の表面でも同じことですが・・・) その汚れやばい菌が付きっぱなしになるとむし歯が再発してしまうために、それらはきれいにしなければなりません。きれいにする一番簡単でいつでもできる有効な方法は歯ブラシです。
しっかりと汚れやばい菌を落とすことによって、むし歯の再発を防ぎます。歯ブラシは一番手っ取り早い予防方法なのです。
7.
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上の写真が治療前・下の写真が治療後です。 他人の歯をここまで近寄ってみることはないと思いますが、これだけ近寄ってもつめた場所はよくわからないと思います。
ここまできれいに仕上げられるこの治療方法が、たった1回の来院で、しかも局所麻酔の注射もせずに可能となります。(ただし、このような初期のむし歯の段階のときに限ります。)
虫歯の治療は、まず虫歯を作らないようにする予防が一番大切です。予防方法もその人のむし歯のリスク、年齢、生活習慣、嗜好などに応じていろいろとあります。予防方法については自己流でなく、ぜひ歯科医院を訪れて自分にあったものを歯科医師や歯科衛生士に相談してみましょう。
予防をしてもどうしてもむし歯の再発が防ぎきれず、不幸にもむし歯ができてしまった場合は、早期発見早期治療が必要です。
「痛くないから・・・・」といって放置しておくと、取り返しが付かないほど虫歯が進行してしまい、最悪の場合、抜歯ということもあります。
そのため痛くなってから歯科医院を訪れるのではなく、痛みを感じない初期の虫歯がないかどうかのチェックに受診することはとても大切です。
そのときにむし歯がなくても予防方法のチェックとクリーニングを行っておけば、よりよい口の中の状態を維持することができます。
(治療過程の写真をweb上でこのような形で匿名で使用することは、患者さんご本人の承諾を得て使用させていただいております。この場をお借りしてご本人へ改めて御礼を申し上げます。)

白い詰め物 -むし歯を削ってつめるまで-

(栃木県日光市の歯科 沼尾デンタルクリニックで実際に行われた治療例です。これらの写真は患者さんご本人の承諾を得て公開させていただいております。もちろん個人を特定できるものは一切掲載しておりません。)

1.はじめに


下の歯に黒くなったむし歯があります。 表面だけでなく内部まで進行しています。
このまま放置していればいずれ痛みが出たり、歯が崩壊したりしてしまいます。
そのためこれ以上むし歯がおおきくならないようにむし歯を削って、白い詰め物で詰めていきます。

2.むし歯を削る


むし歯を削っています。
この機械が、みんなの嫌われモノ、あの「キーン」と音が出るドリルです。
この歯は神経がある歯ですが、麻酔の注射をしなくても痛みなく削ることが出来ました。
水を出しながら削るので、その横で水を吸う緑色のものがサクションです。

3.むし歯を削りました



むし歯を削り終わった状態です。
茶色になっている部分がありますが、ここはむし歯が残っているのではなく歯が変色しているだけの状態なので、削らないで残すこととしました。

4.歯の専用の接着剤を塗ります。



よく乾燥させた後、削った歯の表面に接着剤を塗っています。
この接着剤の進歩が、むし歯治療の進歩だと言っても過言ではありません。
昔ならこの大きさのむし歯になると、歯を全体的に削ってかぶせないと歯がでませんでした。

5.光で接着剤が瞬時に固まります



詰め物をする前に塗る接着剤は、この青い光で固まる特殊な接着剤です。
そのため昔は「固まるまで食べたり飲んだりしないで下さい」といわれるっことがりましたが、この接着剤が適応となる虫歯の治療においては、すぐに固まってしまうのですぐに飲んだり食べたり出来ます。

6.接着剤の上に下地を作ります


接着剤が固まったら、変色した部分の色が透けて出てこないようにマスキングします。
このマスキングするプラスチックは流動性があり、そして「むし歯を削って詰めるまで 5」に出てきた青い光で、やっぱり固まります。

7.色を合わせながら白いプラスチックをつめていきます



マスキングが終わったら、あとは周囲と色が調和するようにプラスチックで詰めていきます。
このときに形も元々あった歯に似ているように、形態を作っていきます。 もちろんこれも青い光で固まります。

8.治療前と治療後の写真を比較してみてください


左が治療前、右が治療後の写真です。
虫歯がまだ痛みがなく小さければ、上のように1日でキレイに治す事が可能です。
これが痛みが出るまで(自覚症状が出るまで)放っておくとこの簡単な治療法では間に合わず、痛い思いをした上で、何日も治療回数をかけて治療しないと治す事が出来ません。
でも、痛くない虫歯は自分では分からないので、定期検診をして早期のむし歯があれば手遅れになる前に治療してしまうことをオススメしているのです。
(治療過程の写真をweb上でこのような形で匿名で使用することは、患者さんご本人の承諾を得て使用させていただいております。この場をお借りしてご本人へ改めて御礼を申し上げます。)

上手な歯磨きのやり方

理想は100%でも難しい!

毎日歯を磨きましょうとは、ずーっと昔から言われ続けていると思います。
「虫歯にならないようにするために歯を磨きましょう!」ということは誰もが知っていることです。
でも、虫歯に悩まされる人もたくさんいると思います。
なぜでしょう?
答えは簡単。虫歯の原因となる歯の汚れが落ちていないからです。
歯の汚れを100%落とせれば、理論上100%虫歯にはなりません。
でも100%って、結構難しいんです。完璧に仕上げるってことですから・・・・
だから難しいことはやめて、普段は80%くらい落とすのを目標にしましょう。
80%なら上手に磨ける人なら一日数分の歯ブラシでOKです。
残ってしまった20%は、次の日に磨くようにしましょう。

汚れって見える?

歯磨きは100%が理想ですが、難しいことは上に書きました。
毎日行うことなので、毎日完璧を求めるのはチョットきついです。
そのため80%くらい汚れが落とせれば、上出来です。80%だけでも虫歯の予防効果は格段によくなります。
では、どうやったら80%くらい磨けたなー、と分かるのでしょう?
分かるためには歯の汚れをはっきりと目で見えるようにしないといけません。
そのために歯の汚れを赤く染める「染め出し剤」があります。
液状のもの、錠剤のもの、市販のもの、歯科医院で売ってるもの・・・・・
色んなものがありますが、基本的に汚れが赤く染まれば何でもいいと思います。
汚れを赤く染めれば、目標がはっきりしますのでとても磨きがいがあります。
どれくらい歯ブラシで磨けば、どれくらいの汚れが落ちるのかも自分でわかるようになります。
それをやるだけで80%以上の汚れは落とせるようになると思います。
頑張って汚れを落として虫歯にならない強い歯を作りましょう!

どうしても見えない汚れは?

上手な歯磨きのやり方 2 で見えない汚れは、その汚れを染める薬で赤くしてあげるとよく見えるようになると書きました。
鏡を覗き込みながら、赤く染まった汚れを歯ブラシで丁寧に落としていけばいいのですが、どうしても鏡では見えないところがあります。
それは上顎の前歯の後ろや上顎の奥歯です。
残念ながらその場所は自分の眼で直接見ることは出来ません。でも汚れは落とさないと虫歯になってしまう・・・・・・
そういった場合は、自分で見えない場所は他の誰かに見てもらうしかありません。そして汚れている場所をチェックしてもらい、そこに歯ブラシが当たるようにして汚れを落としていく。またチェックしてもらい、汚れが落ちていない部分が残っていると、そこをまた磨く・・・・
この繰り返しをしていって、自分で汚れを落とすコツを身につけるしかありません。
しかし、これができるようになると歯の汚れは断然少なくなります。そして、虫歯予防に充分な効果が現れます。
さて、ここで誰に見てもらえばいいでしょう?
親子で・夫婦で・恋人同士で・・・・・どなたでも結構です。スキンシップをかねてお互いにチェックしあってみてはいかがですか?
もちろん歯科医院を受診すれば、歯科医師や歯科衛生士が見えない部分をしっかりとプロの目でチェックしてくれます。

最近の医療の動向 2007

病気治療の医療から健康づくりの医療へ

国立の研究機関の方の講演に行ってきました。
そこで聞いてきた内容を分かりやすく書いていきたいと思います。
今までの病院のかかりかたは、病気になってから治療をするといった方向性でした。
みなさんも風邪を引いて熱が上がったから病院に行くとか、頭が痛いから病院に行くとか、フラフラするから病院に行くなどと何か症状があってから病院を受診していたと思います。
しかしそれでは、症状が悪化してから治療するので治るまでに費用と時間がかかってしまったり、ひどい場合は病気が進行しすぎていて手遅れな状態になってしまったりと、後手後手の処置になってしまうことが多くあります。
後手に回らないようにするために、病気になってからではなく、健康診断を定期的に行い病気の原因になりそうな因子を早めに治療しておくことが推奨されています。
例えば、
血圧が高いのを放置しておくと、脳卒中や心筋梗塞になってしまうので、そうなる前に血圧をコントロールをしておく、とか
血糖値が高いのを放置しておくと、腎臓や網膜などに障害が出てきてしまうので、そうなる前に血糖をコントロールしておく、とか
血圧や血糖をコントロールすると聞いてピンときましたか?
これはメタボリックシンドロームという名前で盛んにPRされているものです。
「病気を治療することよりも、病気にならない治療を優先する」
といった考え方に基づき、そのようなことになるのです。
もちろんこの考え方は歯科領域にも適応できる話です。

栄養と歯

健康でいるためには栄養を必要かつ十分に取らなければなりません。
(もちろん取りすぎればメタボリックなどの危険にさらされますが・・・・)
しかし歯が悪いと健康を維持するための栄養摂取に大きな影響を与えることは、既にデータとして出されています。
70歳以上の方を対象に、残っている自分の歯と栄養摂取状態の統計を取ったものがあります。
そこでは20本以上自分の歯が残っている人は、魚や野菜の摂取量が有意におおく、バランスよく食事を食べられる結果が出ています。その方たちは栄養状態も非常によい結果も出ました。しかし、その一方、自分の歯が少なくなればなるほど、栄養状態は偏っていくそうです。
最近は食育という言葉もよく聞かれますが、食べることの重要性はここで説明するまでもないと思います。健康に大切な栄養が、歯の残っている数で左右されるという結果となりました。
そしてもうひとつは、同じ70歳以上の方で咬む力を測定した結果があります。そのなかで自分の歯の数が28本ある人(永久歯は親知らずをのぞいた総数は28本です。つまり、永久歯が1本もダメになっていない方です)の咬む力は、若い人とほぼ同じ力がだせるとのデータも立証されました。もちろん咬む力が強ければ食べたいものは何でも食べられますので栄養も偏らなくなります(食べすぎには注意ですが・・・・)。
自分の歯がなくなってしまい、部分入れ歯や総入れ歯などで28本に歯の数を回復した方の場合では、咬む力はそこまで回復することはありませんでした。自分の歯には及ばないということがここでも立証されています。

運動と歯

体を動かすことも健康には大切です。そして、体が動かなくなれば健康に影響が出てきます。
そこで体を動かすことと、歯の関係について実験したデータがあるので紹介いたします。
バランス感覚をみる「片足立ち」で何秒立っていられるかという試験を行ったところ、自分の歯の数が多い人ほど長時間たっていることができたそうです。さらに、物を咬み砕く力が高い人ほど長く立っていられたそうです。
バランス感覚が鈍れば、高いパフォーマンスが出来なくなるばかりか、体勢を崩して転倒などによる怪我の可能性も高くなります。これはトップアスリートはもちろん一般の方でも起こっては欲しくないことだと思います。
同様にジャンプ力についても試験をした結果、歯の数とジャンプ力にははっきりとした傾向は出なかったそうですが、物を噛み砕く力が高い人のほうがジャンプ力の成績はよかったとの結果も出ています。
握力については、歯の数も物を噛み砕く力についても、明らかな傾向は今回の実験ではなかったそうです。
数年前のことになってしまいますが、マウスピースについてのデータもあります。通常マウスピース(マウスガードといわれています)は、コンタクトスポーツにおける口腔内の怪我防止のために装着します。
パワー系の筋肉では、マウスピースを入れたほうがパワーアップするというデータがありました。例えばウエイトリフティングなどゆっくりと力をかけることに関しては有効であるとの結果が実験で得られたそうです。しかし瞬発系の筋肉に対しては明らかな違いはなかったとのことです。スピードアップに有効とは実験的にはいえなかったそうです。
しかし、このマウスピースに関するものは数年前にデータなので、最新の研究ではどのようなデータが得られているかは、。。。。。すみません、勉強不足でまだ私は把握していません。最新データが分かったらここで書き込みをしたいと思います。
余談ですが、部分入れ歯が必要なほど自分の歯がなくなっても、マウスガードの作成は可能です。全部歯がある方も、何本か歯がなくなってしまった方も、スポーツ事故でこれ以上歯をなくさないようにするために、是非コンタクトスポーツを行うときには、歯科医院で自分の口にぴったり合ったマウスガードの作成と装着をお勧めいたします。既成のものと比べると装着感は断然違うので、いいパフォーマンスが出来ると思います。

休養と歯

先日の講演でお話をしてくださった、 国立の研究機関の方の最新の動向についてできるだけ分かりやすく書き込みをしています。今回はその第4弾です。
体を休めることは健康を維持するために必要なことです。特に毎日のことである睡眠が重要になってきます。
そこで睡眠と歯の関係について研究を進めているそうですが、なかなか難しいそうです。
まず睡眠のデータを取るためには、寝ているときのデータが欲しいので、その実験に参加してくれる方は1泊していただける方でないといけません。そして実験をするほうは深夜の仕事になります。そうやってコツコツとデータを集めるのですが、傾向が分かるほどの数がまだ集まらないそうです。そのためにはっきりとした結果がまだでていないのが現状だそうです。
これについてはもうしばらくお待ちください。それにしても研究者って大変です。頭が下がります。こうやってコツコツと積み上げていった優秀な研究者のデータを、現場の私たちが患者さんに対して有効に使わせていただけることはとてもありがたく思っています。

こころの健康と歯

こころの健康とは、いきいきと自分らしく生きるための重要な条件で、「生活の質」に大きく影響するものです。
こころの健康には、個人の資質や能力の他に、身体状況、社会経済状況、住居や職場の環境、対人関係など、多くの要因が影響し、なかでも、身体の状態とこころは相互に強く関係しているといわれています。
こころの健康と歯については、あるアンケートによる結果があります。その結果には
・歯並びが悪かったり、歯の色が気になって、人の前で笑うことが出来ない 。
・口臭が気になって、他人と話すことが出来ない。
・歯の痛みや入れ歯などのために、食事が思うようにできず、ほかの人と食事ができない。
・顎の痛みがあり、うたを歌ったり食事が思うようにできない。
などの悩みが多くあり、それがストレスとなってこころの健康によくないとのことです。
上のアンケート結果でも分かるように、口の悩みは日常生活に密着していることが多く、ストレスとしてもかなり大きく負担となるようです。
海外で行われた別のアンケートでは次のような結果がでています。
人生のイベントでどれだけ苦痛があるかを点数化してもらうアンケートです。
その中でもっとも苦痛が大きいと点数が高かったものは「肉親の死」です。
「義歯を入れるようになる」ということも高得点だったそうです。やはり入れ歯は相当なストレスを感じるということであり、「義歯を入れるようになる」ことより「勃起不全になる」(このアンケート項目が海外らしいですが・・・)というイベントのほうが点数が低かったそうです。
果たしてあなたはどちらのほうがショッキングな出来事ですか?(男性限定の質問ですね)

たばこと歯

たばこに関しては現在、禁煙運動も盛んですね。確かに肉体的には悪いことばかりです。
たばこは、肺がんをはじめとして喉頭がん、口腔・咽頭がん、食道がん、胃がん、膀胱がん、腎盂・尿管がん、膵がんなど多くのがんや、虚血性心疾患、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、歯周疾患など多くの疾患、低出生体重児や流・早産など妊娠に関連した異常の危険因子であります。
恐ろしい病気がずらずらと並んできます。その中に歯周疾患も含まれています。
確かにたばこを吸っていると歯肉の健康を保つことは難しくなり、歯周病が悪化していくリスクがぐんと上がります
愛煙家の方も「散々吸っているのだからいまさらやめても・・・」と思っている方も多いかもしれませんが、禁煙に成功すれば、喫煙を継続した場合に比べて、上に書いてある疾患の危険性は減少するとの報告があります。
さらに、たばこによる疾病や死亡のために、1993年には年間1兆2000億円(国民医療費の5%)が超過医療費としてかかっていることが試算されており、社会全体では少なくとも4兆円以上の損失があるとされているとのデータもあります。
私も昔はたばこを吸っていたので、愛煙家の気持ちはよく分かりますが、残念ながら愛煙家に対しては厳しいデータしかないのが現状です。

アルコールと歯

アルコールも皆さんの生活の中にいろんな形で密接に関係していることと思います。最近は飲酒運転による事故でいろいろ問題となっていますが・・・・・・
アルコールを飲むことによってその慢性影響による肝疾患、脳卒中、癌などの臓器障害があります。
口腔内に関しては大量にアルコールを摂取していると歯周病のリスクが2倍になるとの報告があるそうです。
よく勘違いしている方もいますが、「お酒でアルコール消毒してバイ菌をやっつける」ことは決してできません。お酒を飲んで、つまみを食べて、歯に汚れをたっぷりつけて、酔ったまま寝てしまうことは、やっぱり歯周病にも虫歯にもなってしまいます。
できることなら、そういうときも歯を磨いてもらったほうがいいです。酔ったときに歯を磨くことが難しいことは重々承知ですが・・・・・・

口の中にもピロリ菌

ピロリ菌はヘリコバクターピロリと呼ばれる、人間の胃の中に住んでいる細菌です。この細菌が胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因になっていることが最近の研究で分かってきています。そのため潰瘍を再発する方に対してピロリ菌をやっつける除菌療法も行われるようになっているそうです。
胃の中にいるピロリ菌ですが、実は口の中にも存在しているそうなんです。
歯垢(デンタルプラーク)と 呼ばれている歯の汚れの中に、34.1%の割合でピロリ菌が存在するとの研究データがありました。
またピロリ菌をなくす除菌療法を行うと、90%の方の胃の中からピロリ菌がなくなるそうですが、口の中のプラークの中には除菌療法を行っても60%が生き残っているそうです。
プラークとは細菌が出したネバネバするものと、その中に含まれる大量の細菌とで出来ています。分かりやすく言えば細菌のすみかです。
細菌はそのプラークの中で増殖をしてさらにすみかを大きくしていきます。細菌にとってプラークは居心地がとてもいい場所になるのです。その中には虫歯のバイ菌や歯周病菌などが大量にあります。
ピロリ菌もその細菌がすみやすい環境に守られて、除菌療法を行っても生き残ってしまうようです。
細菌が大量発生するプラークをしっかりと取り除くことが出来れば、虫歯や歯周病の予防歯もちろんのこと、そのほかに胃潰瘍の予防にもなるのかもしれませんね。

食育は歯の健康から

-子どもの食習慣-

こどもたちの食環境が変化しています。1人で食べる、家族それぞれが別のものを食べる、同じものばかり食べる、高タンパク・高脂肪の食事が好き、濃い味付けを好む。そんな子どもたちが増えています。
子ども達が豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身につけていくには何よりも「食」が大切です。そこで食育を生きるうえでの基本、知育・徳育・体育の基礎と位置づけ、家庭や学校、地域における教育を推進するために食育基本法が制定されました。
幼児期からお箸を使って食べ、お母さんと一緒に料理する、正しい栄養の知識・生活習慣を身につけ、実行することが大切です。そのためには親や学校関係者のみならず地域ぐるみで子どもたちをどう育てていくかを考えることが必要です。さらにレストランや生産者がカロリー表示を分かりやすく表示する努力も欠かせません。
食育は子どもだけに必要なものではありません。大人も含めひとりひとりが食事内容や食習慣を考えなおし、生涯を通じた健康づくりを心がけてほしいとおもいます。

-食べる機能の発達について-

歯や口の健康が維持されていれば、おいしく食べられ、体や心の健康が維持できるだけでなく、食べる機能や言葉の発達も促されます。そのために正しい食生活と適切なケアによって、清潔で健康な歯・口を保つことが大切です。
新生時期から幼児期、学童期にかけて、子どもの歯や口は劇的に変化します。そのため、それぞれの時期に応じた口腔ケアが大切になってきます。

-食べる機能の発達について 乳児期-

乳児期では顔や口の周りのマッサージからはじめて、さらに指磨きで口に触れられることに慣れさせて、はみがき習慣の準備と導入をはかります。乳歯が生え始めたら、ガーゼ磨きや歯ブラシの感触慣らしをはじめましょう。

-食べる機能の発達について 幼児期-

乳臼歯が生えてくると、むしば菌が定着しやすくなります。1日1~2回、食後の歯磨きを習慣づけたいものです。家族みんなが歯を磨き、それを子どもが見ることで慣れやすくなります。実際に歯ブラシを持たせ、磨く意欲を育てることも大切です。
乳歯が生えそろうと、歯垢が残りやすくなります。食後の歯磨きを習慣づけ、自分で磨く意欲と技能を育てましょう。寝る前に仕上げ磨きを、親子のコミュニケーションの場とするのもよいでしょう。

-食べる機能の発達について 学童期-

学童期になり、永久歯に生え変わると、歯並びの個人差が大きくなります。そのため、自分の口の状態にあった磨き方を覚えることが大切です。この時期になると、自分でほぼ磨けるようになりますが、生えたての永久歯には仕上げ磨きやチェックが必要です。また、歯と歯の間を磨くのにフロスの必要性が高くなります。効率よく磨くには電動歯ブラシも有効です。
「歯と健康のシンポジウム」より

1日でホワイトニング -歯科医院で行うオフィスホワイトニングー

(栃木県日光市の歯科 沼尾デンタルクリニックで実際に行われた治療例です。これらの写真は患者さんご本人の承諾を得て公開させていただいております。もちろん個人を特定できるものは一切掲載しておりません。)
「ホワイトニング」ってご存知でしょうか?
簡単に言えば「歯を白くする」ということです。
でも歯を白くする方法はいろいろあります。
・詰め物をつめる。
・セラミックの歯を入れる。
・つけ爪のようにセラミックのシェルを貼り付ける。
・マニキュアのように歯の表面に塗る。
・歯科医院で機械を使って歯を磨く。
など・・・・いろいろな方法があります。
そのなかでもホワイトニングと呼ばれるものは、「薬剤を使って歯の色を白くする」という方法です。
ホワイトニングにも大きく分けて2種類の方法があります。
歯科医院で行うオフィスホワイトニングと自宅で行うホームホワイトニングがあり、これらは目的によって使い分けます。
1日でできるホワイトニングはオフィスホワイトニングのほうです。
これについて処置の流れを写真を使って簡単に説明したいと思います。

1.ホワイトニングの前にすること


まずはじめに、ホワイトニングについて詳しく説明します。
どのように処置を行うのか。
どの程度白くなるのか。
今のあなたの口の中の状態はどうなのか。
そこには問題点はないのか。
そのようなチェックをしながら説明をしていきます。
白さの判定は「シェードガイド」というもので判定をします。
暗い色のものから明るい色まで段階的に並んでいるものです。 ホワイトニングをする前と後で白さをチェックして判定をします。

2.開口器装着



口をあけておく装置をつけたところです。
ホワイトニング剤を歯に塗ったときに、唇に触れないようにすることと、そのホワイトニング剤に十分に光が当たるようにするための装置です。

3.歯肉を保護するために



歯肉をホワイトニング剤から保護するためのダムを特殊な薬で作っています。
青いゲル状のものを光で固めて、ホワイトニング剤が歯肉に触れないようにします。
下の写真は歯肉保護ダムの完了した写真です。

4.ホワイトニング剤の塗布




いよいよ歯を白くするホワイトニング剤を塗布します。
ホワイトニング剤は歯に塗る直前に混ぜ合わせて、半透明のゲル状のものを塗っていきます。
パッと見て見える範囲に薬を塗っていきます。目安としては上下顎とも犬歯(糸切り歯)の1~2本奥まで塗っていきます。

5.ホワイトニング剤へ光を照射して活性化



ホワイトニング剤を活性化させるために、10分間、専用の機械で光を当てます。
これにより歯の内部にある着色物質の分解が始まり、それが外に放出されることによって白さが出てきます。

6.ホワイトニング剤をとっていきます



10分間の光照射が終わったら、余ったゲル状のホワイトニング剤をサクションで吸っていきます。ある程度きれいに吸い終わったら、これで1クール終了です。
「1日でホワイトニング」の5・6・7の行程を3回繰り返します。
つまり、10分間を3クール行います。

7.歯肉保護剤を取り除きます



ホワイトニング剤を塗って光照射を3クール行うと終了です。
歯肉保護ダムを取っていきます。ダムは固まっているため写真のように一体となって剥がすことができます。
ダムを取ったあとに開口器をはずしていきます。

8.仕上げのポリッシング



開口器を取ったあとに口をゆすぎます。
その後、歯ブラシを使って細かいところに残っているホワイトニング剤を取って完了となります。
ここまでが1Dayで行うホワイトニングです。

沼尾デンタルクリニックで行ったオフィスホワイトニングの Before & After はこちら
(治療過程の写真をweb上でこのような形で匿名で使用することは、患者さんご本人の承諾を得て使用させていただいております。この場をお借りしてご本人へ改めて御礼を申し上げます。)

女性の元気は口元から

-Dr.志村対談集-
女性歯科医師である 志村先生による、 女性向けの歯科の話をご紹介していきます。
女性に対するむし歯や歯周病の治療の話を対話形式で書いてあります。
思春期・女性ホルモンについて・妊娠・出産・骨粗しょう症・更年期・ドライマウス・老年期など女性特有の話題とはとの関係が満載です。
思春期から成熟期を経て更年期へ
女性のからだは年齢にしたがって変化していきます。
その変化のかじ取りをしているのが女性ホルモン
ところで、このホルモンが女性の口の健康と
深い関わりがあることをご存知ですか?
それぞれのホルモンステージごとに
起こりがちなトラブルとその原因を知って
予防と、いきいきした毎日に役立ててください

Dr.志村(NTT東日本関東病院歯科口腔外科)

(Dr.志村対談集)

-なぜ女性外来?-

━志村先生は、勤務医として歯科口腔外科で「ドライマウス外来」を、そしてご自分の歯科医院で「ドライマウス女性専用外来」を開設なさっておられるんですね。
志村
はい。ドライマウス外来は2000年に、ドライマウス女性専門外来は2003年にはじめました。
━ 歯科のジェンダー医療として、先生の医療活動が健康雑誌や週刊誌にもとりあげられて話題になっています。「ジェンダー医療」は、内科やがん治療などでしばらく前から盛んで「女性外来」が好評だと聞いていますが、歯科医療でも「女性外来」が誕生してきているとは、最初は意外な感じがしたんです。
志村
そうかもしれませんね。ところが、口のトラブルには、女性ならではの症状と原因があるんですよ。このことがまだ広く知られていないのが残念です。

-ホルモンで変化する女性の一生-

志村
私は、医師や看護師、管理栄養士などで組織する「性と健康を考える女性専門家の会」に歯科医師として参加させていただいています。女性のための医療の推進を目指す会なのですが、ここで学んだこと、そして啓発活動を通じて考えたことが、歯科の「女性外来」を通じて病気や、そしてからだ全体を診ていこうという思いへとつながっているんです。
━そうなんですか。
志村
成長し、成熟し出産期をむかえ、その後更年期を過ぎて高齢期へと続く女性の一生には、さまざまなホルモンステージごとに特徴的に、口のトラブルが起こりやすいことがわかってきています。その多くは女性ホルモンの影響によるものなんです。
それで、歯科医療でも、遅ればせながらジェンダー医療がはじまっているんです。

-迷信に惑わされないで-

━男性と女性では、そんなに口のトラブルに違いがあるんですか。
志村
はっきりとあります。
「ホルモンによって、女性の一生は変わっていく」といい切れるほど、女性のからだは女性ホルモンの影響を受けています。
女性は、女性ホルモンの分泌が増える思春期ごろから、体型が急速に変わっていきますよね。初潮から、10歳代、20歳代と成熟期をむかえます。このように、女性のからだは男性とはまったく違った成熟を示すわけです。
女性に特有の口のトラブルというと、たとえば「女性は出産すると歯が弱くなる」と聞いたことがありませんか?こうしたことはたしかに昔からいわれてきたのですが、「赤ちゃんがカルシウムをたくさん使うから仕方ないんだ」、という迷信を信じて、あきらめてきてしまったように思います。
━たしかに、出産後に歯の悩みを抱えるようになったという話はよく聞きますね。

-口の健康をどう守る?-

志村
ホルモンステージの変化は、女性の「からだの変化と健康の節目」でもあるわけです。ですからホルモンステージの視点から歯科的にアプローチするのことは、口の健康を、「全身の健康を支える重要な機能」としてとらえて治療を行っていくうえで、とても大切なことなんです。
ホルモンステージごとに、どんなトラブルに気をつけたらよいのか、予防のためにどんなことをすると効果的か、いざトラブルが起こってしまったときに考えられる原因は?、などの情報も患者さんに届けることができますからね。
女性のホルモンステージの分類
思春期(6歳~18歳くらい)
成熟期(18歳~40歳代半ば)
更年期(40歳代半ば~50歳代半ば/個人差あり)
老年期(65歳以上)

-女性ホルモンと歯周病-

━それはこころ強いですね。でも、なぜ女性ホルモンが女性の歯と口に深く関係するんでしょうか。
志村
女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。こうしたホルモンは、月経、妊娠などに作用するほか、自律神経、感情の働き、皮膚、骨、筋肉など全身に影響を与えます。それと同じように、口にも影響を与えるわけです。女性ホルモンのプロゲステロンは、歯肉の血管に働きかけて、歯肉溝(歯と歯ぐきのあいだにある溝でプラークがたまりやすく歯周病の原因になりやすいからの浸出液の分泌を増やします。そして、毛細血管の内皮細胞を変化させて、炎症反応も増やします。つまり、少しのプラークでも炎症が起こりやすくなるので、歯周病になりやすいわけです。
━それでは、女性ホルモンがたくさん分泌されているときには、歯周病になりやすいということですか
志村
そうなんです。そのため、女性ホルモンの分泌が急速に増える思春期や妊娠期に歯ぐきがひどく脹れやすくなります
━そういえば、中学生のころに歯ぐきが脹れた記憶があります。
志村
思春期の女の子特有の歯肉炎だったかもしれませんね。それではまず、思春期に起こりやすいトラブルからご説明しましょうか

-思春期にご注意!-

志村
エストロゲンとプロゲステロンという、先ほどお話した女性ホルモンの分泌が活発になります。プロゲステロンの量が増えると先ほどお話したように、歯ぐきが過敏になり、すこしのプラークでもひどく炎症を起こして、赤く腫れたり出血したりするんです。
━不思議ですね。
志村
歯周病菌のひとつであるプレボテラ・インテルメディア菌は、女性ホルモンを栄養としています。それで、女性ホルモンが増えると、細菌の数も増えるわけです。
━女性ホルモンの多いところに寄ってくるんですね。
志村
そうです。ですからこの時期は、とくにブラッシングをていねいにすることをおすすめします。そして、歯科医院で定期的に歯石をとるなど、プラークコントロールを効果的に行うことが大切です。
━わかりました。
志村
それから、思春期にかぎらず、月経が近づくと、周期的に起こるホルモン量の変化で歯ぐきが腫れたり、口内炎ができるなどのトラブルが起こりやすくなります。こうしたトラブルは、月経がはじまると自然になくなることが多いです。
━口内炎がいつできるか、 日ごろ気をつけていると女性ホルモンの影響を実感できるかもしれませんね。

-妊婦さんは?-

━ところで、成熟期の女性の大きな節目というと、妊娠・出産がありますね。この時期にはどんなトラブルが起こりやすいですか?
志村
妊娠期は、女性ホルモンの分泌がかなり増えます。妊婦さんのお肌はスベスベして、とてもきれいですよね。これは女性ホルモンがさかんに分泌されているからです。
━こういうよいこともあるかわりに・・・。
志村
そうなんです。口の健康にとっては、気をつけなければならない重要な時期です。
妊娠12週~13週には、エストロゲンとプロゲステロンの濃度が上昇するんですが、このとき、妊娠初期に比べて、歯周病菌であるプレボテラ・インテルメディアという菌が、5倍にも増加します。
━そんなに増えますか。
志村
ええ。ですから、妊娠気には歯肉が炎症を起こす「歯肉炎」、それから歯肉炎がもっと進行してしまった「歯周炎」になりやすくなります。

-歯周病菌は女性ホルモンが大好き-

志村
ただでさえ、妊娠期は、つわりがあったりしてプラークコントロールがついおろそかになりがちです。それで、歯周病には、むし歯にもなりやすい面があります。そのうえ、口のなかの歯周病菌が5倍にもなってしまう。
しかも妊娠中の歯科受診については、不安感が大きいでしょう。かかりつけ歯科医がないと、妊婦さんは、つい受診せずに過ごしてしまいがちです。無理もないのですが、これはとても残念です。
━それで、出産したころから歯が弱くなったと嘆く方が多いんですね。
志村
そうなんです。受診時期を逃して重症になってしまう方もなかにはおられますからね。とはいえ、日ごろから口のなかを清潔に保ち、妊娠前に治療をすませておけば、防ぐことは十分できます。
それから、歯周病の妊婦さんの場合、早産・低体重児出産のリスクが7.5倍にもなるという報告もあります。
━それはこわいですね。日ごろから努力してプラークコントロールに励むことが大事だという訳がよくわかりました。
-妊娠中に歯が痛くなったら?-
━とはいえ、現実には、妊娠中に口のトラブルに悩まされる方もいると思うんです。そうした場合、妊娠していると、治療をすることでお腹の赤ちゃんに影響が出ないかと心配です。
志村
でも、歯が痛んだり、歯肉が腫れているのを我慢しなくてはならなかったら、つらくて、食事もままならないですよね。食事は、赤ちゃんにとっても、母体にとっても、とても大切です。
治療する時期やおもな検査、薬について、患者さんからよくあるご質問への一般的な答えをお教えしましょう。もちろん妊婦さんの体調などを考慮しなければなりませんから、詳しくは、治療する歯科医院に妊娠していることを伝えて、ご相談いただきたいと思います。

-妊婦さんの口腔のトラブルの訴え-

50.0% 歯が痛い
31.9% 歯ぐきから出血する
18.9% 口腔に不快感を感じる
13.9% 口臭が気になる
13.0% 歯ぐきが痛い
12.6% 訴えはない
9.2% その他
6.3% 口の中が乾きやすい
3.8% 歯ぐきの色が悪い
2.9% 歯茎がやせてきた
1.3% 歯が動く
7.6% 無回答
2004年女性の健康と歯周病フォーラム調べ(全国の産婦人科238件を調査)

-妊婦さんは歯の治療をしても大丈夫?-

<治療に適した時期について>
① 妊娠4ヶ月くらいまで
このころはつわりがあったり、精神的にも不安定なことがあります。また胎児もまだ安定しないので流産しやすい時期です。治療は応急処置にとどめましょう。
② 4ヶ月半~7ヵ月半
胎盤が完成して胎児も安定してきます。抜歯はふつうの場合可能ですが、なんといっても妊婦さんは疲れやすいので、長時間の処置は避けたほうがよいでしょう。
③ 8ヶ月以降
出産間近のこの時期は、ちょっとした刺激で子宮が収縮を起こし早産につながる可能性もあります。応急処置が望ましいでしょう。
<X線について>
歯科検査に用いられるX線の放射量はごくわずかなので、基本的にプロテクターをきちんとつければ問題ないとされています。撮影する側の注意としては、撮影の主軸が子宮方向に来る場合は、とくにプロテクトに気をつけることが必要になります。
<局所麻酔薬について>
歯科外来で使われる局所麻酔薬は、大量に使用されることがないので大きな影響は与えないといわれています。ただ、注射の刺激が流産を招くことがあると考えると、まだ安定期に入らない妊娠3ヶ月までは避けたほうがよいでしょう。また臨月に近い8ヶ月以降も避けたほうがよいとされています。
<薬剤について>
妊婦に対する安全性が完全に確立されている薬剤は、現状では残念ながら存在しません。そのなかでは、抗生物質のペニシリン系、セファロスポリン系は害が少ないといわれています。ただし、妊娠中毒症を起こさないよう、妊婦さんの腎機能など十分な注意が必要です。

-妊娠・出産で歯は弱くならない-

━通常の場合、むし歯治療もできるんですね。安心しました。
志村
できますよ。むし歯が痛いままだったり、歯ぐきが腫れて痛んだりでは、思うように食事もできなくなってしまいます。そのことも大きな問題です。赤ちゃんの成長のためにも、母体の健康のためにも、食事はとても大切です。妊娠期を順調に楽しく過ごすためには、歯石の除去やむし歯治療は必要なのです。
とはいえ、よほどの症例がない限り、極力X線検査や投薬は避けたいですから、応急処置を受け、出産後なるべく早く、再度受診なさるのが望ましいです。
また、女性のからだにとって、とても大切な節目をむかえているわけですから、とくに注意をしてプラークコントロールをしていただきたいです。妊娠期の歯質がとくにむし歯になりやすくなっている、なんてことは決してないんですから。

-プラークコントロールを!-

━いまにして、「知っていればなあ」と残念です。
志村
妊娠・出産以降のお口の環境の悪化は、これまでは妊婦さんのブラッシング不足や、妊娠すると歯が弱くなるんだから仕方がないといわれてきました。でもこれからは、「ホルモンステージの変化による影響を受けやすい時期だからだ」、とまずは知っていただきたいと思っています。
でも、現状では、母親学級などで口腔ケアについての指導が行われることは、まだまだ少ないんです。これはとても残念なことだと思っています。産婦人科での定期健診などでも、この時期の女性ホルモンと歯周病の関連について伝えていただけるとよいのですが。歯科医療関連の指導があまり行われていないのが現状なんです。産婦人科との連携を強めて、口腔ケア指導を広めていかなくてはなりませんね。
━そうですね。生まれてくる赤ちゃんのむし歯予防にとっても、親自身が口を清潔にして、むし歯菌を赤ちゃんにできるだけうつさないようにすることが大切だそうですし。
志村
むし歯菌であるミュータンス菌は、生まれたての赤ちゃんの口のなかにはまったくいませんからね。家族など、周囲の大人からうつってはじめて赤ちゃんのむし歯ははじまるんです。プラークコントロールは、自分のためだけでなく、家族のためでもありますね。

-更年期以降は?-

━更年期以降は、逆に女性ホルモンが少なくなってくるわけですね。そうしたときには、どんなことに気をつけたらよいのでしょう。
志村
今度は女性ホルモンが急激に減ることによって起こってくる問題もあるわけです。
個人差はありますが、40歳を過ぎたころから月経が乱れはじめ、エストロゲンが減ってきます。エストロゲンは、骨量と骨密度を保つのに重要な役割を果たしています。そのエストロゲンが減ってくると、骨がスカスカになる骨粗しょう症が起きやすくなります。
骨粗しょう症は、歯周病とも深い関係があります。歯は、歯槽骨という骨を土台にして本来がっちりと支えられているのですが、その歯槽骨は、歯周病がひどくなると、少しずつ溶けてなくなっていってしまいます。

-歯周病と骨粗しょう症-

志村
まして、骨粗しょう症で骨密度が低くなっていると、歯周病はますます進行しやすくなります。ブラッシングをていねいにして歯周病を防ぎ、大豆などエストロゲンを多く含む食品を摂って、減ってしまったホルモンを補うとよいでしょう。ただし、薬剤による過剰な摂取には注意が必要です。そのほか、骨を強くするカルシウム、たんぱく質、ビタミンやマグネシウムなどを多く含む食品を摂ることをおすすめします。
━更年期には、歯周病が進みやすいので注意が必要ということですね。
志村
はい。それから、男性でも女性でも加齢とともに唾液の分泌量が減ってきます。それは口の周りの筋肉が衰えることで噛む力が弱くなり、噛む回数が減ると唾液の分泌量が減るということも関係します。また、加齢とともに唾液の分泌能力も落ちます。
とくに女性は、更年期以降、女性ホルモンの分泌量が減ることで、口のなかが乾くのです。

-ドライマウスと女性-

━女性ホルモンは、唾液とも関係があるんですか。
志村
女性ホルモンには、からだの皮膚粘膜を保護し、うるおいを保つ働きがあります。そして、ホルモンバランスの乱れから、唾液の分泌量が減ることもあります。そのため、ドライマウスは、更年期以降の女性に多くなってくるのです。私が勤務しているNTT東日本関東病院のドライマウス外来においでになる患者さんの9割が50歳以上の女性です。
━圧倒的に多いですね。
志村
そうなんです。口が乾くと口のなかが粘るような不快感がありますが、これが慢性的になると舌の表面がひび割れたり、舌や口のなかが痛んだりします。また、食べ物が飲み込みにくくなったり、舌の痛みで熟睡できないとか、しゃべりづらかったりというような支障がでてくるわけです。
さらに、唾液には、抗菌作用や自浄作用のほか、歯の再石灰化を助けるなど、口と歯の健康を守る大切な役割がありますから、唾液が減ると、口臭が強くなったり、むし歯や口内炎になりやすくなります。

-しょうゆがしみて痛い-

━ドライマウスの影響って大きいんですね。
志村
とても大きいですね。会話がきちんとできなくなったり、おしょうゆがしみて刺身が食べられなくなったり、おかゆしか食べられないなど、ドライマウスの症状は日常生活への支障も大きいです。
ところが、日本では病気としての認知が遅れていて、「年だから」「更年期だから仕方ない」と、適切な処置がされることがほとんどありませんでした。それで、ドライマウスの症状がありながら、我慢しておいでの方も多いのが現状です。
最近では、歯科口腔外科にドライマウス外来を開設する医療機関が増えています。ぜひ我慢しないで、専門外来を受診してください。
━隠れているけれど、患者さんは意外に多いということですか?
志村
そうです。人知れず悩んでいる方は多いはずなんです。目が乾くドライアイと同じように、日本国内で800万人ほどいるのではないかと試算されています。
━そんなにいるんですか。

-症状の原因は複合的-

志村
ドライマウスの原因には、女性ホルモンの分泌の低下や加齢のほかに、ストレス、服用している薬の副作用、がんの放射線治療などの影響、糖尿病などもあります。
薬の副作用としては、抗うつ剤や精神安定剤、睡眠薬や、高血圧の治療に用いられる降圧剤のなかに唾液の分泌量を少なくする作用のものもあります。ちょうど体調の変化があったり、病気の罹患率が高まる年代で、さまざまな薬を常用する方が増えてくるころですよ。
━たしかにそうですね。
志村
年齢、持病と薬、ストレスなど、さまざまな原因が複合的に関わっているケースが多いです。とはいえ、ほかの病気の治療に飲まなければならない薬を、ドライマウスだからといって突然「飲むのを止めてください」というわけにはいきませんよね。それでは患者さんの悩みはかえって深くなってしまうかもしれません。

-原因を知ってリラックス-

志村
そこで、まずは病気の原因について知っていただき、情報不足で不安になっている気持ちをサポートします。リラックスすると、唾液はでやすくなるんですよ。緊張する場面では、口が乾きやすいでしょう。私の診療室では、まずジャスミンティーをお出しして、飲みながらお話を伺います。
そして、薬の常用を続けながら、唾液を増やす方法を総合的に指導していきます。保湿ジェルや保湿スプレーの使用法について指導し、当座の痛みを減らすことができるだけでも患者さんのストレスは激減します。そして発泡剤が含まれない歯磨き剤を使い、ガムを噛み、体液の循環をよくするために運動をし、唾液腺マッサージを行っているうちに、少しずつ症状が改善していきます。
訳もわからずに苦しんでいたころとは、表情もまったく違って、笑顔も戻ってきます。そうしているうちに、ストレスやうつの症状が軽減されて薬の服用も減る、というケースも少なくないのです。
━症状を理解することがとても大切なんですね。
志村
そうです。女性ホルモンが減ってきまいますし、そのほかにも原因としてこんなことが考えられますよ、という適切な情報が、患者さんには必要なんです。そのことで安心できるんですよ。ですから女性に多い病気について、ぜひ広く知っていただきたいです。
━ほんとうにそうですね。

-シェーングレン症候群?-

志村
ただし、こうした指導で改善しないケースもあります。それはシェーングレン症候群といって、ドライマウスの症状のなかにこの思わぬ病気が隠れている例も少なくないのです。
シェーングレン症候群は、自己免疫疾患で膠原病の一種なんです。日本では患者数は10万人から30万人とも推定されていて、関節リウマチなどと合併していることもあります。自分の涙腺や唾液腺を免疫細胞が異物として認識してしまうので、そこに炎症が起こり、涙や唾液の分泌量が極端に減るため、ドライアイやドライマウスという症状があらわれます。
患者さんの男女比は、1対14と、圧倒的に女性に多いんです。40歳代から60歳代に発症することの多い病気です。口腔検査、病理検査、目の検査、血液検査のうち2つ以上の検査で異常が見つかるとシェーグレン症候群と診断されます。
━どんな治療法があるのですか?
志村
いまのところ、根本的な治療は見つかっていません。対症療法が中心になります。内科では全身の管理を、歯科では塩酸セビメリン水和物を処方してドライマウスの治療をします。眼科でもドライアイの治療をします。こうして各科が連携して治療をすることが必要です。

-ドライマウス治療は専門分野の連携が必要-

━総合的な治療と指導が必要なんですね。
志村
そうです。ドライマウスの治療にあたるなかで、私は他の医療分野とのネットワークに必要性を実感してきました。たとえば、糖尿病の患者さんには、そちらの治療を優先していただかなくてはなりません。歯科医だけでは多くの患者さんを救えないのではないかと考えたからです。複合的には絡まりあう原因の全体像を把握して、理解し、医療的な処置も総合的に行っていくことが大変重要なんです。
そこで昨年、歯科医、内科医、耳鼻科医、産婦人科医、看護師、薬剤師に加えて、咀嚼学の専門家、管理栄養士、料理研究家などが参加するドライマウスネットワークを設立し、代表になりました。

-ドライマウスネットワーク-

━それぞれの専門分野の研究の情報交換ができるんですね。
志村
医学的な情報交換だけでなく、飲み込むことがつらくなっている患者さんには、おいしくて食べやすい料理を薬膳料理の専門家中村きよみさんが考えてくれます。そして、スポーツ科学の鈴木正成先生はドライマウスの改善に役立つ体操を考案してくださる、という具合に、あらゆるアプローチができるわけです。
━しかも、とても楽しそうです。
志村
ええ。ほんとうに楽しいですよ。昨年末には、患者さんに参加していただいて、「ドライマウスネットワーク・ランチセミナー」を開きました。ドライマウスについてのレクチャーを内科医に菅井進先生から、ドライマウスの方のためのおいしいお料理の試食と作り方のレクチャーを中村きよみさんから、そして口腔ケアのコツについては私からお話しました。
━患者さんにとって楽しくておいしくてためになるわけですね。
志村
(笑)、そうですね。患者さんにとっては、同じ悩みを持つ人同士の交流の場にもなるんです。
━励まされるでしょうね。
志村
そういう場所が必要なんですよね。情報不足は患者さんに孤独を作り出してしまうでしょう?日本では、女性に多い病気への理解が遅れていますから、ぜひ広く知っていただきたい。そして、若いころから、更年期を過ぎてから、そうした情報を活かしていきいき過ごす毎日に役立てていただきたいと思います。

-ドライマウスの症状を和らげる-

ドライマウスのつらい症状を和らげる、保湿ジェルの使い方
①指先に少量とり、舌におきます。
②舌で口の中全体にいきわたるようにします。入れ歯をお使いの方は入れ歯の内面に塗ると楽になります。
③夜間はとくに(健康な方でも)唾液の分泌が減ります。寝る前に塗ると効果的です。
「乾いているな」と思ったら随時使用できます。副作用がありませんので安心して使ってください。ドライマウスの症状のつらさは、感想感と舌の痛みです。ジェルなどのケア用品の使用でつらい痛みや不快感を和らげることがストレス緩和にもなります。ぜひ試してください。口の中全体に舌でジェルをいきわたらせることは、唾液腺の機能を高めるための舌のストレッチにもなります。
(Dr.志村対談集より)