放置しないで!知覚過敏

こんにちは。院長の沼尾です。
4月7日は「世界保健デー」、
世界保健機関(WHO)が誕生した日です。
WHOは世界の人々の健康を守るため、
毎年この日にテーマを決めて啓発活動を行っています。

 

お口の健康は全身の健康にも影響を与えますので、
歯は大切にしてくださいね!

 

 

さて、お口の健康維持に欠かせない定期検診ですが、
患者さまを診ていると、中には
「むし歯じゃないのに歯がしみる…」
という方がいらっしゃいます。

 

むし歯や神経の炎症がないのに歯が痛いときは、
『知覚過敏』かもしれません。


 

 

 

 

◆知覚過敏とは!?

 

冷たいものや甘いものを口にした時、
そして歯を磨いている時などに
ピリッとした鋭い痛みが起こる症状を
『知覚過敏』といいます。

 

知覚過敏をもっとも多く患っているのは
20歳〜50歳で、
日本人の4人に1人が経験している
と言われています。

 

知覚過敏は一過性の痛みで
刺激がなくなればおさまるため、
放置している方も多いのではないでしょうか?

 

 

とはいえ!

 

知覚過敏は放置しておいても治るとは限らないので、
注意したい症状です。

 

 

 

 

◆知覚過敏はなぜ起こる?

 

知覚過敏は
「象牙質(ぞうげしつ)の露出」によって起こります。
歯の中心には神経があり、
やわらかい象牙質と硬いエナメル質に覆われています。

 

 

通常であれば、
歯の一番外側をエナメル質が覆っていて
痛みを感じることはありません。

 

ですが、象牙質が露出すると神経に刺激が伝わり、
痛みを感じやすくなります。

 

 

 

 

象牙質が露出する原因は、
・打撲で歯が欠けた
・歯ぎしりや食いしばりで歯がすり減った
・酸の強い食べものや飲みもので歯が溶けた

 

などが考えられます。

 

 

 

硬い食べものばかり食べている人も、
歯に強い負担をかけることがあるので
注意しましょう。

 

 

 

 

◆歯ぐき下がりも知覚過敏の原因に!

 

歯の根っこも知覚過敏が起こりやすい部分です。
歯ぐきが下がると歯の根が露出して、
象牙質がむき出しの状態に…。

 

 

 

 

歯ぐきが下がるのは、
・加齢
・歯周病
・過度なブラッシング

 

などが主な原因。

 

 

 

 

 

◆知覚過敏は放置しないで!

 

知覚過敏を放置していると、どうなるのでしょうか?

 

まず、歯ブラシが触れると痛みを感じるため、
歯みがきもおろそかになりがちです。
すると、プラークという細菌のかたまりが歯に付着し
むし歯になってしまうことも。

 

また、歯周病が原因の場合は、放置していると
いずれ歯が抜けてしまう原因にもなります。

 

そもそも歯がしみると、
おいしい食事も楽しめませんので
早めの受診をおすすめします。

 

 

 

◆歯みがきと治療で歯の健康を守ろう!

 

「知覚過敏かも!?」と思ったら、
歯みがきの仕方を見直してみるのも一つの方法です。

 

知覚過敏で歯がしみる時は、

①余分な力をかけない「ペングリップ」で歯ブラシを持つ
②毛先のやわらかい歯ブラシで力を入れず小刻みにみがく
③常温もしくはぬるま湯で口をゆすぐ
④歯みがき粉は知覚過敏に有効な「硝酸カリウム」入り

 

などのポイントに気をつけて歯を磨くのがおすすめ。

 

 

 

ご自身でできることもありますが、
痛みが続くときは我慢せず、
お早めにご相談ください!

 

 

 

歯を失う原因第1位の歯周病とは?


 歯を失う原因の多くは、歯周病とむし歯で、第1位は歯周病です。もちろん、むし歯も重症化すれば歯を失うことになりますが、それよりも歯周病のほうが、はるかに歯を失いやすいのです。
 むし歯は、穴が開いたりして目で確認できるので自分でもわかりますが、歯周病は重症化してもなかなか自覚症状が現れないので、自分で気が付くことが少ない病気です。
 そのため、歯周病はサイレント・ディジーズ(静かなる病気)と言われています。歯周病と気が付いた時には、かなり進行しているといったケースが多数あり、手遅れのため抜歯せざるをえないことも少なくありません。

歯周病の進行


 歯周炎は軽度・中程度・重度に分類されます。4mm以上の歯周ポケットは中程度または重度歯周炎のことで、重症化傾向のある歯周炎のことをさします。
 上のグラフは4mm以上の歯周ポケットを有する人の年齢別の割合を示しています。(これは厚生労働省が定期的に行っている歯科疾患実態調査の平成28年の調査結果から抜粋しました)
 グラフから45歳以上には50%以上の方に、中程度または重度歯周炎があることが読み取れます。また、35~44歳の40%以上に中程度または重度歯周炎があり、成人の2人に1人が重症化している歯周炎にかかっていることがわかります。しかし、ほとんど自覚症状がないため、病気を放置し、歯周炎がどんどん進行して、重症化していきます。重症化したときには抜歯となり、歯が無くなれば、入れ歯になってしまいます。


 日本歯周病学会から一般の方向けに歯周病の解説本が出版されています。「続・日本人はこうして歯を失っていく~専門医が教える全身の健康につながる歯周病予防~」という書籍です。
 この本の中に、歯周病のチェック項目が掲載されています。下記の一つでも当てはまるものがあれば、歯周病の可能性があります。

 □ 歯肉がときどき赤く腫れる
 □ 歯肉がむずむずする
 □ 歯が浮いた感じがする
 □ 冷たいものがしみる
 □ 歯を磨くと歯肉から出血する
 □ 下の前歯の裏側に歯石がついている
 □ 朝起きたとき口の中がネバネバする
 □ 歯肉を押すと血や膿が出る
 □ 口臭を指摘された・自分で感じる
 □ 「サ行」の音が発音がしにくい
 □ 歯と歯の間に食べ物が挟まりやすい
 □ 歯をさわるとグラグラする
 □ 歯肉が下がり、歯が長くなった感じがする
 □ 以前とは歯並びが変わったような気がする


歯周病とは、どのような病気なのか?
歯周病治療とは、どのようにすすめていくのか?
歯周病治療の専門医(スペシャリスト)とは、どのようなスキルなのか?

歯周病治療の流れ

 歯周病治療は、まずは患者さんとお話をするところから始まります。今の症状や、今までどのような症状があったかなどをお聞きして、治療によってどのような状態にしていきたいか伺います。
 その後、必要な検査を行い、歯周病の状態を把握し、病状の重症度に合わせて治療方法を提案していきます。


 主な流れとしては、下記のようになります。(歯周病治療流れの図を参照)
検査をして歯周病のレベルを判定。
       ↓
歯周病レベルと、治り具合を診ながら、治療。
       ↓
病状が安定したら、定期的にメンテナンス。


 検査の結果から、歯周病の重症度によって、治療方針を計画していきます。
主な治療内容は
・歯みがきのコツをつかむ
・歯のお掃除
・合っていない銀歯や詰め物の修正
・むし歯があればその治療
・動いている歯があればその対応
 それらの治療を組み合わせながら、歯肉の症状を改善させ、病状を安定させます。


 歯周病治療で悪くなった部分を治すことは重要ですが、それ以上に、定期メンテナンスを行い、良くなった状態を維持することが大切になります。
 日々のお手入れを継続することで、再発や悪化を防ぎます。そして定期メンテナンスで、口の中をチェックして、もし再発している部位があれば、早期に発見し対応します。再発している部位がなければ、綺麗にクリーニングをして口腔内環境を整えます。
 血圧の高い方が、お薬を飲み続けて血圧をコントロールしていくように、歯周病も治療後に悪化しないよう、定期メンテナンスを通していい状態を保つことが、自分の歯を長持ちさせていく秘訣です。

歯周病とは、どのような病気なのか?
歯周病治療とは、どのようにすすめていくのか?
歯周病治療の専門医(スペシャリスト)とは、どのようなスキルなのか?

歯科用3Dスキャナーの講演会に参加して

CEREC Omnicam
セレック オムニカム
口腔内スキャナー
CEREC Omnicam
セレック オムニカム
口腔内スキャナー

今までは銀歯や入れ歯を作るときに、粘土状のものを口の中に入れて、それを固まるまで待って、歯型をとってきました。

最近はテクノロジーの進歩によって、粘土状のものを使わずとも歯形が取れる方法が、今の歯科にはあります。それは、口の中に入る小さなカメラを使って、歯のスキャニングを行い、デジタルデータとして取り込むことができます。歯型や咬み合わせもスキャンしてデジタルデータ化できます。

それらのデータをもとにPCの中で、歯の形を設計します。

設計された歯のデータを、CAD/CAMに送信することによって、セラミックの歯を削りだしで作成することができます。

そのような技術がもう完成されて、実際の診療にも導入されています。

当院にも歯型をとるための口腔内スキャナーとCAD/CAMのシステムを導入し、治療を提供することができます。

粘土状のものを使わずに歯形が取れるので、患者さんの負担が大きく減少します。息苦しい思いをして粘土状のもので型を取らなくなるので楽です。また、お子様でも口の中にカメラを入れるだけなので、楽に取れます。「オエッ」となりやすい人も、小さなカメラなら、そうなることもありません。

今回はこれらのシステムを巧みに使いこなしている、著名な先生方の講演を聴講してきました。

口腔内カメラの使い方のコツや、PCに取り込んだデジタルデータの活用法など、このシステムに関するいろいろなことを学んできました。その中でもデジタルデータの使い方として有用と感じたものは、患者さんへの病状説明に使う方法です。

取り込んだデータ加工すると、歯並びや咬み合わせが3D画像としてモニターに映し出されます。PCのデータなので、画面上でその3D画像を回転させることもできます。その患者さんの咬み合わせや歯並びを360度上下左右どこからも見ることができます。患者さんが自分の咬み合わせをPC画面上で見られることは、自分の咬み合わせがどんな状況なのかがすごくよくわかります。

そのような画像データを患者さんと歯科医師が一緒に見ながら、病状の説明や、治療内容の解説などに使っています。

これからは当院でもこのような使い方をして、患者さんへわかりやすい情報を提供できるよう努めていきたいと思います。

歯の根の治療の成功率を上げて、できる限り歯を温存する治療法

歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)を用いた治療風景
歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)によって、治療中の歯の動画(字幕解説付き)
(動画下部の「字幕」をクリックすると字幕が出ます)

歯を温存するために
1.小さな歯を歯科用顕微鏡で拡大をして、精密な治療を行う。
2.直接見えない死角にある患部は、鏡で映しながら治療を行う。
1.2.を行うことにより、歯科治療の精度を上げることができます。
その結果、肉眼での治療では温存が難しい虫歯でも、マイクロスコープによって歯を温存することができる時があります。それらについて詳しく説明します。

1.小さな歯を歯科用顕微鏡で拡大をして、精密な治療を行う。
顕微鏡とは、肉眼では見えないものを拡大して見ることができます。それを歯科治療に応用したものが歯科用顕微鏡です。
つまり、肉眼では見えない虫歯などを見ることができます。見えれば虫歯を取り残すことや、削りすぎることを最小限にすることができます。
よって、取り切りたい虫歯の部分はすべてとることができ、残したい健康な部分は残すことができます。
その結果、歯を温存できる可能性が上がります。

2.直接見えない死角にある患部は、鏡で映しながら治療を行う。
口の中にある歯は、見える部分と見えない部分があります。
例えば、歯の後ろ側とか、深い虫歯の穴の中などです。見えないと治療ができません。
そこで、口の中に入る鏡を使って、死角になっている歯の後ろ側や深い虫歯の中を覗くように見ることができます。
そして、鏡に映った虫歯を見ながら、確実に虫歯を削ることができます。
その結果、歯を温存できる可能性が上がります。

(上の動画解説)
歯の根の中にある神経までバイ菌が侵入すると、いろいろな症状が出てきます。
ひどい場合には抜歯となることも良くあります。
抜歯とならないよう、できる限り歯の根の治療の成功率を上げていきたいところは、患者さんにとっても、歯科医師にとっても共通の望みではないでしょうか。
しかし、歯の根の中は非常に細かい構造になっており、肉眼で治療を進めていくには限界があります。
そこで歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)をもちいます。
これは細かい構造の部分を拡大して見ながら、治療を行うものです。脳外科や眼科などの手術でもよく使われています。
歯科医用顕微鏡を見ながら、歯の根の中で、肉眼では見えないばい菌に汚染された部分を取り除き、歯の症状を取り除いていく治療を行います。
これによって成功率を上げ、できる限り歯を温存することを目標にしています。

口が開かない場合、その原因によっては外科処置の可能性もあります。

口が開きにくい、大きく開けない、などの症状のがあるときは、あごの病気の可能性があります。
口が開きにくくなる原因は、様々な病気があります。
まずは原因となっている病気の特定を行い、その病状に合わせた治療を行います。

まずは保存的療法を行うことによって、症状改善していくことが多いです。

しかし、まれに外科療法(手術)を必要とする原因の時もあります。例えば、顎に癌ができてしまい口が開きにくくなった場合です。

先日、日本顎関節学会第45回学術講演会に参加してきました。今回のテーマは「外科療法について」です。
講演内容では、近年研究が進み、口が開かないことに対する治療は保存的治療で改善することが多くなってきましたが、それでもまだ外科療法が必要な場合があります。

 

歯や口の中の痛みは必ずしも虫歯ではない。

歯や口の中に痛みを感じたことはありますか?
その痛みの原因は虫歯のときもありますが、虫歯以外の原因でも痛みが出る場合はよくあります。
そのような歯や口の中に出てくる痛みについて、研究をして議論をし学んでいく学会があります。
それは日本口腔顔面痛学会というもので、先日その学会へ参加してきました。
歯や口の中だけではなく、顔面や顎などにもおよぶ痛みに関して様々な発表と議論がありました。
痛みの原因を特定することは、時々非常に難しい場合があります。
そのような場合の対応策についても学ぶことができました。
さらに、まだまだ知識や経験不足な面もあることを実感し、今後さらなる研鑚の必要性も感じました。
痛みに悩まれている患者さんへ、より良い医療を提供できるように努めていきたいと思います。
日本口腔顔面痛学会と日本顎関節学会

歯が痛くなっても、歯に原因があるとは限りません。

第21回日本口腔顔面痛学会学術大会 

歯が痛くなると、歯科医院を受診されると思います。
しかし、歯が痛いのに、痛いはずのその歯にむし歯が全くないこともあります。

それでは、なぜ歯が痛くなっているのでしょうか?
それは歯以外の他の場所に痛みの原因がある時に、健康な歯でも痛みを感じることがあるからです。
もちろん痛みの原因が歯にないので、歯の治療をしても痛みは変わりません。

では、他にある痛みの原因とはどんなものなのでしょうか?
それは、筋肉であったり、神経であったり、鼻だったり、血管だったり、ウイルスだったりなど
歯以外の様々な場所に、ある特定の病態が原因となって、歯が痛く感じることがあります。

そのような歯や口の周りの痛みを科学する学会が「日本口腔顔面痛学会」です。
今年もまた口腔顔面痛学会に参加してきました。

痛みの診断をするためには、
さまざまな原因があるので幅広い知識と診断能力が必要になります。
その原因によっては、耳鼻科、脳神経外科、内科、皮膚科などの様々な専門のドクターと連携をとって
治療が必要になることもあります。
そのような知見を得るために、日本口腔顔面痛学会に参加しています。
今回の学会でもいろいろな知識を得ることができました。
これを日々の診療で患者さんへ最大限に還元できるように、していこうと思います。

歯が痛く感じたものが、実は原因は歯とは別にありました

上あごの奥歯が痛いとのことで来院した患者さんがいました。

来院までの症状の経過のお話をよく伺いました。
そして口の中をよく見させてもらい、レントゲンの検査を行わさせてもらいました。

その結果、私の判断は
「歯に明らかな異常がないので、もしかすると鼻の方が原因かもしれない」
というものでした。

患者さんへその理由をお伝えし、耳鼻科受診することに承諾していただきました。

それから数週間後その患者さんが再度来院され、
「鼻が原因だったので治療をしたところ、歯の痛みもなくなりました。」
というものでした。

口の中や歯はとても敏感な場所なので痛みを感じやすいこともあります。
しかし、必ずしも歯が痛い事が歯に原因があるとは限りません。
痛みの原因は様々なものがあります。

マンション杭問題を歯周病に例えて説明をしてみました

重症歯周病の患者さんへの説明をマンション杭問題にたとえてしたところ非常にわかりやすいと好評でした。

 

患者さん 「この歯は抜かずに何とかなりませんか?」

先生 「重症な歯周病なので、この歯を使っていくようにするには難しい状況ですね」

患者さん 「どれくらい重症なのですか?」

先生 「今の状態はマンション杭問題と同じ状態で、この歯の基礎が不安定な状態です」

患者さん 「このままにしておいても大丈夫ですか?」

先生 「基礎が悪いためマンションが傾いてきたのと同じように、歯を支えている骨が溶けて歯が傾いてきている状態です。マンションも倒壊する前に建て替えをするようになっていますが、この歯も何か大きな問題を起こす前に処置をしたほうがメリットは大きいです。処置とはこの場合、歯を抜くことにはなってしまいますが。」

患者さん 「抜かないでこのままにしておくとどうなりますか?」

先生 「杭問題のマンションと同様、将来的に大事故が予想されます。歯肉が急に腫れたり、急に強く痛み出したり、歯がグラグラして痛くて食事ができなくなったりなどが主に予想されます。このままにしておくのか、この歯を抜くのか、選択していただければと思います。」

患者さん 「説明が分かりやすく、状況がよくわかりました。この歯は抜いて下さい。」

 

このようなやり取りで患者さんは現状をよく理解していただきました。その結果、歯を抜くことを自ら選択をしていただきました。