噛むことの効用

-噛むことで心も体もリラックスする-
よく噛むことは、脳の活性化につながるだけではない。咀嚼によって得られる様々な効果が、今、明らかにされつつある。
例えば、咀嚼は心身のリラックス作用を引き出す。美味しいものを食べることで、脳の報酬系(歯が互いに接触したり、食物が歯や歯肉に接触することによる刺激)が刺激され、〝快情動〟が引き起こされる。すると、人を心地よい気分にさせる脳内物質「β―エンドルフィン」の分泌も促されるので、リラックス作用につながる。
実際、健康な人にガムを噛んでもらい、そのときの脳波を調べてみると、リラックスしたときに観察される「α波」が増加し、イライラしたり緊張しているときに出る「β波」の低下が認められる。それは、ガムを噛み終わったあとにも持続するという。
ガムなどを噛む効用には、ストレスを軽減し、緊張を和らげる働きもあるのだ。
-よく噛めば、肥満の防止と健康増進-
〝よく噛む〟ことは、肥満の防止になることが分かっている。よく噛めば、脳の「満腹中枢」が刺激され、脳内ヒスタミン神経系が賦活されるので、食欲が抑制される。同時に内臓脂肪が分解されて、体熱生産や放散が促進される。〝よく噛んで〟食事をすれば、肥満にならないということだ。
また、よく噛めば、口の中の粘膜から栄養素を吸収することも分かっている。さらに、食事をとることで上昇した血糖値を下げて正常化する作用があるので、糖尿病の治療効果を上昇させたり、予防的な効能もある。
その他、〝よく噛む〟ことの効用は、身体の運動機能の上昇、視力低下の予防、免疫力の向上、骨粗鬆症の予防などが報告されている。
特に、よく噛むと盛んに分泌される「唾液」の効用を忘れてはいけないと、小林義典教授は語っています。「唾液の分泌を促進すると、虫歯や歯周病の予防につながり、また、細菌の働きを抑えます。その他、食物中の発がん物質の働きを抑えたり、アレルギーに関わる抗原に加え、活性酸素を消失させます。さらに、ウイルスなどを直接攻撃するNK(ナチュラルキラー)細胞を増加させたり、老化を抑制したり、私たちの体にとって、大変重要な働きをしているのです。十分な唾液の分泌を促すためには、歯ごたえのある食物を一口で30秒、または30回以上よく噛む必要があります」
-よく噛んで唾液を出すことの効用-
味覚を助長
美味しさを味わい、脳を刺激してリラックス効果を生む。
消化・吸収を助長
消化酵素アミラーゼがデンプンを分解して消化を助ける。
成長を助長
唾液由来のホルモンが、上皮細胞の成長や神経細胞の増殖・脳細胞の成長を促す。
むし歯や歯周病予防
原因菌を洗い流すだけでなく、唾液に含まれるスタテリンが歯の再石灰化を促し、また歯を強くする。
口腔粘膜の修復
食べ物で傷ついた口の中の粘膜を修復する。
消火器粘膜の保護
唾液に含まれるムチンが、食べ物をオブラートのように包んで食道や胃の粘膜を保護する。
抗菌作用
抗菌作用のある唾液中のリゾチウムやラクトフェリンなどが細菌の働きを弱める。
食物中の発がん物質の発がん性を抑制
唾液酵素のペルオキシターゼが食物中の発がん物の発がん性を弱める。
活性酵素の消失
唾液中のペルオキシターゼが活性酵素を消す
NK細胞の増加
唾液中のラクトフェリンが免疫細胞のNK活性を増加させる。
老化の抑制
唾液中のEGF(上皮成長因子)やNGF(神経成長因子)などのホルモンが、老化を抑制する。
糖尿病の予防と治療効果の向上
唾液に含まれるIGFという物質がインシュリンと同じような働きをして、糖尿病の予防と治療効果を高める。

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