飛沫予防のために口腔外サクション(歯科用吸引装置)の設置

 歯科の治療中は、細かい水や粉じんが飛び散ります。また、治療中に独特のニオイが発生する場合もあります。そのような飛沫やニオイを瞬時に口元で強力に吸引し、診療室内へ拡散させないために、口腔外サクション(歯科用吸引装置、フリーアーム)という機械があります。
 この装置を使用することで、飛沫やニオイを防止し、診療室内を清潔に保つことができます。

口腔外サクション(歯科用吸引装置、フリーアーム)の有無の違い

 研究論文の中に、高速度カメラにて飛沫粒子の捕集率の測定が行われたものがあります。その研究結果によると、飛沫粒子の80~95%がこの口腔内サクションによって吸い込まれていることが分かりました。

 このことから、歯科治療中に口腔外サクションを使用し、強力に吸引し続けることで、飛沫を捕集する効果のほかに、診療室内の空気も同時に吸引することにより、換気の効果も期待できます。
 当院では、口腔外サクションをすべての治療椅子に4台設置していますが、その4台を稼働していると、約20分で診療室内の空気を入れ替えられ、室内換気の効果も、期待できます。

 吸引された飛沫やニオイを伴った空気は、院外にある室外機へと送られます。室外機では、吸引した空気をろ過するために、複数の特殊フィルターを通過させ、クリーンな空気の状態にして、室外へと排気しています。

 当院では、口腔外サクション(フリーアーム)をすべての治療用椅子(4台)に設置しました。口腔内サクションを治療中に積極的に使用することで、水や粉じんが飛び散るのを予防していきます。

 これからも快適な診療空間、安心安全で、清潔な医療の提供を心がけていきます。

歯の根の治療の成功率を上げて、できる限り歯を温存する治療法

歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)を用いた治療風景
歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)によって、治療中の歯の動画(字幕解説付き)
(動画下部の「字幕」をクリックすると字幕が出ます)

歯を温存するために
1.小さな歯を歯科用顕微鏡で拡大をして、精密な治療を行う。
2.直接見えない死角にある患部は、鏡で映しながら治療を行う。
1.2.を行うことにより、歯科治療の精度を上げることができます。
その結果、肉眼での治療では温存が難しい虫歯でも、マイクロスコープによって歯を温存することができる時があります。それらについて詳しく説明します。

1.小さな歯を歯科用顕微鏡で拡大をして、精密な治療を行う。
顕微鏡とは、肉眼では見えないものを拡大して見ることができます。それを歯科治療に応用したものが歯科用顕微鏡です。
つまり、肉眼では見えない虫歯などを見ることができます。見えれば虫歯を取り残すことや、削りすぎることを最小限にすることができます。
よって、取り切りたい虫歯の部分はすべてとることができ、残したい健康な部分は残すことができます。
その結果、歯を温存できる可能性が上がります。

2.直接見えない死角にある患部は、鏡で映しながら治療を行う。
口の中にある歯は、見える部分と見えない部分があります。
例えば、歯の後ろ側とか、深い虫歯の穴の中などです。見えないと治療ができません。
そこで、口の中に入る鏡を使って、死角になっている歯の後ろ側や深い虫歯の中を覗くように見ることができます。
そして、鏡に映った虫歯を見ながら、確実に虫歯を削ることができます。
その結果、歯を温存できる可能性が上がります。

(上の動画解説)
歯の根の中にある神経までバイ菌が侵入すると、いろいろな症状が出てきます。
ひどい場合には抜歯となることも良くあります。
抜歯とならないよう、できる限り歯の根の治療の成功率を上げていきたいところは、患者さんにとっても、歯科医師にとっても共通の望みではないでしょうか。
しかし、歯の根の中は非常に細かい構造になっており、肉眼で治療を進めていくには限界があります。
そこで歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)をもちいます。
これは細かい構造の部分を拡大して見ながら、治療を行うものです。脳外科や眼科などの手術でもよく使われています。
歯科医用顕微鏡を見ながら、歯の根の中で、肉眼では見えないばい菌に汚染された部分を取り除き、歯の症状を取り除いていく治療を行います。
これによって成功率を上げ、できる限り歯を温存することを目標にしています。

歯科医療のデジタル化の現状は、ここまで来ています。

 歯科医療にもデジタルを応用した様々な技術が導入されつつあります。
その中にはまだ実験段階のものがあったり、模型では成功しているが人体にはまだ応用されていないものがあったり、すでに臨床応用されている技術などもあります。
 実際に治療に応用され医療現場で使用されている技術の一つに、空間を3Dデータとして認識できる技術等か ら応用された「歯型を取る」機械があります。
 銀歯などを作るときの型取りは、皆さん苦労された方も多いかと思います。
粘土のようなものを口に入れて固まるまで数分間我慢しなければならないからです。
 このデジタル技術は、その「歯型を取る」ことを口の中に入る小さなカメラで、スキャンをして型を取ります。口の中をカメラで1~2分間スキャンをすると、歯型取りが完了します。粘土は使いません。
 スキャンされたデータはコンピューター内で処理され、写真のように画面上に表示されます。
このデータを元に歯を作ることができます。

テクノロジーによって歯科医療もドンドン変化をしていきます。

矯正治療で歯並びをきれいにするメリットとは?

この写真は当クリニックにて矯正治療を行った治療前後の写真です。患者さんは10代女性です。
大門美咲初診時05
↑治療前 ↓治療後
大門美咲動処後05
矯正治療を行うとどんなメリットがあると思いますか?
まず、見た目が綺麗になることはどなたも感じることではないかと思います。
しかし、矯正治療のメリットはそれだけではありません。
1.歯並びがきれいになると毎日の歯のお掃除が格段にしやすくなります。
掃除がしやすくなり、歯の汚れが取れやすくなれば虫歯や歯周病になりにくくなります。
その結果、予防には非常に有利になり、年齢を重ねても虫歯や歯周病で自分の歯を失う可能性が少なくなるため、入歯やインプラントもやらなくて済むようになるかもしれません。
2.発音がしやすくなります
歯が無くなったり、すき間があいたりすると息が漏れるため発音がしにくくなります。
発音がしにくくなれば相手に通じにくくなり、コミュニケーションが難しくなるかもしれません。
ずっとコミュニケーションが苦手なまま過ごしていくのは辛いことでしょう。
3.咬みやすくなります。
歯並びが悪いと、しっかり噛んでいないため食物をよく噛み砕くことができず
美味しく食事をすることが難しくなったり、ほかの人より異常に食事をする時間が長くなったりとする可能性があります。
食事はいくつになっても楽しくしていきたいものです。
見た目を改善することも大切ですが、それ以外にも改善することによって人生をずっとグレードアップすることができます。
歯並びが悪いと将来、虫歯や歯周病になってその都度治療を繰り返し、高額な医療費が発生しつづけるかもしれません。
矯正治療をすることによって精神的にも金銭的にも有意義な人生を送ることができるかもしれません。
そのため矯正治療は先行投資として欧米では考えられています。
もちろん矯正治療は歯が健康であれば年齢は関係ありません。当クリニックでも50歳代の方が矯正治療を行っていたこともあります。
矯正治療は健康保険適応外の治療になりますが、当院では初回矯正相談は無料で行っております。初回相談でおおよその治療方針と費用についてご説明させてもらっております。その後、ご本人とご家族とじっくりと時間を取って話し合いをしていただき、矯正治療を行うか否かを決めていただいております。
この写真を使用することはご本人の保護者の方のご了解をいただいておりますので、ここで紹介をさせていただきました。

歯科医院でもオーダーメイド

オーダーメイドとは「 製品全般に対する受注生産や注文によって生産する商品、または生産工程を指す。」   とウィキペディアには書いてあります。
オーダーメイドで思いつくものの一つに洋服があると思います。ご自身の好きなデザインや材質や生地を選び、本人の身体を採寸し、ピッタリあった服を作ることができます。
歯も洋服のオーダーメイドと同様に本人にピッタリ合った歯を作るため、歯型を取って作ります。これで出来上がったものは、その方の歯にピッタリ合います。しかし、デザインや材質などから自分の好きなものを選ぶことは、なかなか難しいと感じている方も多いのではないでしょうか?
確かに、ご本人が注文をしたくても「どんな種類の歯があるのか?」「それぞれの違いは何なのか?」などがわからないと注文することができません。実際に作る歯の種類は幾つかありますので、それらの違いをよく把握して、その中から自分の好きなものを選べるようになれば、洋服と同じようにオーダーメイドできるでしょう。

そのため、沼尾デンタルクリニックでは、そのような歯のメニュー表を作ってあります。そして、それらの種類とそれぞれの違いが分かるように説明をさせていただき、ご本人が気に入ったものを選択をして、注文できるようにしています。

一度いれた歯は毎日使い続けるものです。自分に合った歯を選んでもらえることはとても大切なことであると考えています。

小学生中学生高校生のスポーツマウスガードについて(動画あり)

スポーツマウスガード
この写真のマウスガードは小学生中学生高校生などに使用してもらうように、沼尾デンタルクリニックで実際に作られたマウスガードの写真です。
このマウスガードはすべて選手の口の中に入り、スポーツ負傷事故から口や歯を守ってくれています。

コンタクトスポーツを中心にマウスガードの義務化をしているスポーツが増えてきています。
マウスガードの完全義務化をしているスポーツはボクシング・アイスホッケー・アメリカンフットボール・ラグビーの中学高校世代などのスポーツです。バスケットボールや硬式野球などはマウスガードの使用を推奨しています。そのほかにもサッカー、ラクロス、テコンドー、格闘技などでも使用されています。

スポーツをしていて歯・口・顎を負傷して、実際に来院される患者さんも時々います。負傷したスポーツの詳細はアイスホッケー、バスケットボール・フィールドホッケーなどのプレー中に負傷した方がいました。
その負傷の種類は、「歯が折れる」、「歯がグラグラする」、「歯が抜け落ちる」、「歯が陥没している」、「歯肉が切れる」、「歯肉から血が出ている」、「唇を切った」、「口の中を切った」、「歯を支える骨が折れている」、「顎の骨が折れている」、などがあります。

ある統計では学校管理下においての部活動などでも、年間7万件以上の歯・口・顎の負傷事故が起きているそうです。スポーツには怪我が付き物ですが、やはり安全対策をして守れるものは守ったほうが多くのメリットがあります。歯は折れてしまうと骨のように自然にはくっつきませんので、折れた歯は歯科用の接着剤で付けるかプラスチックなどの代用品で歯を作るか、もしくは抜歯となってしまいます。

歯並びも歯・口・顎の負傷事故に関係があります。例えば出っ歯の人はその出ている歯ところを負傷する可能性が高くなります。また、乱杭歯(前後にデコボコしている歯並びの状態)などでは口腔粘膜や舌を負傷する可能性が高くなります。そのため学年が上がる前に早期に矯正治療を開始して歯並びを良くしておく事も予防のひとつになります。

マウスガードはやシリコン状の弾性のある素材で作られています。作成されたマウスガードと作るための歯形の模型の動画をアップします。

マウスガード使用にはいくつか注意事項がありますので列記しておきます。
・初めて使用するときはまず練習で使用してマウスガードに慣れるようにしておく。
・マウスガードをむやみにガムのように咬んでつぶしてしまわないこと。
・使用後は水でよく洗う。お湯は厳禁。歯ブラシや義歯用ブラシを使って磨いてあげることも清潔に使うためには良い。
・マウスガードの保管は保管用ケースにしまっておき、乾燥状態にしておき、高温にならないよう室温で保管しておく。
・定期的にマウスガードのチェックと歯や顎のチェックをする。成長期のお子さんは数ヶ月で顎が大きくなってしまいマウスガードが合わなくなることがしばしばあります。

このようなことに注意しながらマウスガードで歯・口・顎の負傷事故を予防して、楽しく最高のパフォーマンスができるようお手伝いしていきます。

歯並びが悪くなる原因のひとつに、過剰な歯が埋まっていることがあります

正中過剰埋伏歯のCT画像

人間の歯は子供の歯(乳歯)が20本、大人の歯(永久歯)が32本(親知らずを含む)と歯の本数は決まっています。
しかし、時々決まった本数以上に歯があることがあります。それを専門用語では「過剰歯」といいます。

その「過剰歯」のなかでも、上顎の前歯のところに過剰歯があることが比較的多いです。 (正式には上顎正中過剰埋伏歯といいます)
しかも歯肉の中に埋まっていることが多く、生えてくることのほうが少ないです。
では、歯肉の中に埋まっている歯は眼では見えないのにどうすれば見つけることができるのでしょう?

よくある症状としては
・前歯がすきっ歯になっている
・前歯が生えてこない
・前歯が変なところから生えてきた
といった症状のときに過剰歯があるときもあります。(必ずしもこの症状があるから過剰歯があるとは限りません)
無症状であるときも多く、たまたま撮影したレントゲン写真に過剰歯が写っていたため発見されることも少なくないです。

今回ご紹介する例は小学校低学年のお子さんの例です。
乳歯が抜けたのに永久歯がなかなか生えてこないとお母さんが心配して来院されました。
永久歯の確認のため通常のレントゲン写真を撮ったところ、過剰歯を疑う像が見られました。
しかし、通常のレントゲン写真では過剰歯の位置や生え方が詳しく分からないため、歯科用CTを撮影して過剰歯を確認しました。(このときのCTの画像が上にある写真です。)

CTでは大人の前歯の後ろ側にさかさまになって埋まっている過剰歯があるのが良く分かります。写真の黄色の矢印のところに過剰歯があります。しかも、過剰歯が2本もあります。
このままでは歯並び等に影響が出るためお母さんと本人と相談して、日をあらためて当院で過剰歯の抜歯をしました。
抜歯後の治りは順調でした。
今もこの方の抜歯後の経過を見ながら、成長とともに歯並びのチェックや虫歯予防を行っていく予定です。

 (栃木県日光市の歯科 沼尾デンタルクリニックで実際に行われた治療例です。これらの写真は患者さんご本人の承諾を得て公開させていただいております。もちろん個人を特定できるものは一切掲載しておりません。)

総入れ歯で苦労していたけど、新しい入れ歯で今は支障が少なくなりました。

「上の入れ歯が落ちて困る」
「咬むと入れ歯が動いてずれる感じがする」
「話をしていると入れ歯が飛び出しそうになる」
「咬みにくいのでお粥みたいのしか食べられない」
総入れ歯ではこのようなさまざまな悩みをお持ちの方がいらっしゃると思います。
入れ歯を支えている歯がすべてなくなると、今まで使っていた部分入れ歯が使えなくなり、総入れ歯になってしまいます。
入れ歯を安定させるために支えになる歯が1本もないため、部分入れ歯とちがい総入れ歯はとっても不安定になります。
不安定になれば今まで部分入れ歯で食べられていたものが、総入れ歯だと食べにくくなってしまうこともあります。
そのため総入れ歯で食べにくく苦労されている方も、たくさんいらしゃるのが現状だと思います。
そこで、少しでも総入れ歯を安定できるような特殊な作り方をすることがあります。いろいろな方法がありますが、そのうちのひとつを紹介します。
歯がなくなり総入れ歯を使っていましたが、土手が平坦になっており安定せず、入れ歯が使いづらくなっていました。 治療用の入れ歯を使って新しい入れ歯作成を行います。
左上の写真は歯が1本もなくなってしまった方の口の中の下顎の写真です。
歯肉の土手がほとんどなくなってしまい平坦になっています。
今までも総入れ歯を使ってはいましたが、土手が平坦な状態だったので入れ歯は安定せず食べる時や会話する時に苦労していました。
そこで「治療用の入れ歯」を使った新しい入れ歯の作成をこの方へ提案させていただきました。その治療方法に納得していただいたために承諾していただき、治療用の入れ歯を使った治療を行いました。
右上の写真が治療用の入れ歯を口の中へ入れた状態です。
ここで「治療用の入れ歯を使った入れ歯作成方法」について説明します。
まずはじめに上顎と下顎の両方に治療用の入れ歯を作ります。
治療用の入れ歯の下顎の奥歯は写真のように歯の形ではなく平らになっています。平らなため自分の咬みやすい位置で自由に咬むことができます。
この状態で毎日使ってもらうと、平らな部分に自分の咬みやすい位置の跡がついてきます。
また、使っているうちにあたってくる場所を削ってみたり、足らない部分はプラスチック部分を足してみたりなどをして調整をしていきます。話をしたときに舌が気になるところがあれば足したり削ったりして調整していきます。
それによって咬みやすい位置を確立し、使いやすい入れ歯の形を調整しながら、そしてまたしばらく使ってもらい、また調整して、また使って・・・・と繰り返しながらその人に合った入れ歯の形を作っていきます。
治療用入れ歯を用いて使いやすく安定した入れ歯へと作り込んでいきます。
上の写真はしばらく使いながら調整を繰り返した治療用の入れ歯です。
自分の咬みやすい位置に跡が付いているのがわかりますか?最初は平坦だった部分が毎日使うことによって磨耗してくぼんできます。白く抜けている部分がそのくぼみの跡になります。(写真で分かりやすくするために跡以外の部分を黒く塗りました。使っているときは黒くありません。)
また、ピンクのプラスチック部分も調整を繰り返しているため、つぎはぎになっていますが咬んでも痛みがなくなるところまで入れ歯の形が出来上がってきています。また、会話でも気にならないようにも入れ歯の形態を調整してあるため、以前使っていた入れ歯より飛躍的に使用感はよくなりました。
つまり、時間をかけて患者さんご本人が治療用入れ歯の使い込みをして、そのつど不都合な部分を解消してきたため、治療用の入れ歯が咬みやすくて話しやすい入れ歯になってきたということです。
しかし、咬みやすく話しやすい入れ歯にはなってきましたが、咬むところは平坦のままですし、ピンクの部分は補修を繰り返していますのでツギハギになっています。補修に使用したプラスチックは長期間使えるほど耐久性がありません。
そこでこの安定してきた治療用の入れ歯を元に、最終の入れ歯を作成していきます。
安定した治療用入れ歯を元に、最終の入れ歯を咬合器を使って作成しています。
安定してきた治療用の入れ歯をそのままコピーして模型を作り、かみ合わせに合わせて入れ歯を作る機械に装着します。
その模型を装着した機械の上で、新しい入れ歯を作っている途中の工程が上の写真です。
余談ですが、この機械は「カプカプ」と咬む動きを再現できる機械で、「咬合器」といいます。歯のお化けみたいでチョット不気味ですか?(笑
さらによく咬めるように治療用の入れ歯では平坦だった奥歯から、新しい最終の入れ歯は凸凹のある硬いプラスチックの歯にします。
ツギハギだったピンクの部分も、舌触りも滑らかで綺麗な仕上がりになるよう作っていきます。
これらの工程を経て完成した最終の入れ歯を患者さんに使ってもらいます。
治療用の入れ歯で何ヶ月と時間をかけて調整を繰り返してきた入れ歯をコピーして作ってあるので、この最終の入れ歯はほとんど調整することなく使うことができました。
患者さんもいろいろなものが食べられて嬉しいといっていただき本当に良かったと思います。
以前の入れ歯では苦労されていましたが、今の入れ歯に代わってからは話すことやそのほか日常に大きな支障はなく過ごせているとのことです。
ただし、「レバーは硬くて咬みきれそうにもなかったので無理をしないで細かく切ってから食べました。」 とのこと。
入れ歯でも食べられないものを無理をして食べないようにして、食べ方に工夫をしていただくコツも掴んできたようです。
自分の体の一部として入れ歯を上手に使いこなしている感じでした。
ご家族の方からも
「前の入れ歯ときは食べられなくて苦労していたけど、今の入れ歯になってからは何でも食べられてバッチリだよ」
といっていただき、家族みんなで楽しく食事ができると笑顔で話していただきました。
これからは定期的に入れ歯やお口の中の状態をチェックして、日頃の食事や会話などがなにも気にせずできるような生活を続けられるようにしていきたいと思います。
最後に、この患者さんへ今回治療の途中で撮った写真を元にほかの方々への説明用に使わせて欲しい旨をお伝えしたところ、快諾していただきました。
写真を提供していただいた患者さんへ感謝しております。ありがとうございました。

定点カメラで歯科治療の経過をみていきました。ーインプラント編ー

歯科の治療も皆さんは自分の見えないところで行われているので、何が起こっているのはよくわからないと思います。そんな皆様へ治療の経過を同じアングルから写真を撮って見てもらうこともできます。
今回は自分の歯がだめになってしまい抜歯してからインプラントができるまでの記録を紹介します。

 歯肉腫脹,奥歯

( ↑ 写真1)
写真1は銀のかぶせものがしてある奥歯2本の歯肉部分がそれぞれ腫れてきています。青い矢印の部分です。
歯肉が腫れた原因は歯の根が割れてしまい中でばい菌に感染して膿が溜まってしまったからです。
歯を残す治療も試みては見ましたが、残念ながらこのような状態になってしまっては腫れと痛みを繰り返すため抜歯するしかありませんでした。
その旨を患者さんへご説明し、抜歯することへ同意をしていただけました。

歯の欠損,喪失 

( ↑ 写真2)
写真2は抜歯して傷口がきれいに治ったあとの写真です。しかし、歯が2本もなくなってしまったため大きなスペースができてしまいました。
また、上の歯があるにもかかわらず咬み合う下の歯がなくなってしまったので、食べ物をよく咀嚼できなくなってしまいました。
そこでご本人と相談して歯を作って入れることにしました。入れ歯かインプラントによる歯を作る方法を説明し、時間をかけて検討していただいた結果インプラントによる治療を希望されました。
インプラントとはチタン製の人工歯根を顎の骨の中に埋めて、その上に歯を作る方法です。
インプラントについて詳しくはこちらを参考にしてみてください。

インプラント,埋入

( ↑ 写真3)
写真3はインプラントの手術を行い人工歯根が顎の骨にしっかりとくっついた状態です。オレンジの矢印の部分が2本埋めた人工歯根の上に被せてあるチタン製のキャップです。
ここで注目すべき点は、インプラントの部分も自分の歯の部分も歯の汚れがほとんどついていないことです。この方の歯ブラシが非常に上手な方なので歯に汚れがほとんどついていません。そのため、歯肉も健康的なピンク色をして引き締まっています。
歯の汚れとそこに繁殖するばい菌は歯にとってもインプラントにとっても大敵です。毎日の上手な歯ブラシでセルフケアを行うことによって自分の歯もインプラントも長持ちさせることができます。

上部構造,インプラント

( ↑ 写真4)
写真4はインプラントの上に歯を作った写真です。使用感は違和感も無く、いろいろなものが食べられ非常に良いとのことでした。患者さんには満足していただきました。
しかし、歯が入って食べられるようになっても治療は終わりではありません。実はここからが本当の始まりとなります。
写真3のところでも書きましたが、この状態をできるだけ長く持たせていくことがこの治療の成功となります。そのためには毎日丁寧に歯ブラシを行って、歯にこびりつくばい菌を取り続けていきます。さらに定期的に歯科医院を受診してお口の中のチェックをして改善すべき点があれば対応していきます。日々の歯ブラシで取りきれない汚れが蓄積しているとこは歯のクリーニングを行って汚れをリフレッシュしていきます。
今回この方は奥歯を2本失ってインプラントとなりましたが、これ以上自分の歯を失いたくは無いとのことで毎日の歯ブラシを意識して丁寧に行うようになり、その結果インプラントの部分も自分の歯の部分もばい菌の無い非常にいい状態になりました。この状態をずっと継続できるようクリニックでこの方のバックアップとメンテナンスを行っていきたいと考えています。

(栃木県日光市の歯科 沼尾デンタルクリニックで実際に行われた治療例です。これらの写真は患者さんご本人の承諾を得て公開させていただいております。もちろん個人を特定できるものは一切掲載しておりません。)

自分の歯が無くなったときはどうしたらいいでしょうか?

8年前に当クリニックにはじめて見えた女性の方のお話です。この内容は患者さんご本人に許可を頂いて写真等の掲載をさせていただいております。
来院のきっかけは右下の歯が取れてしまったとのことでした。
ずっと前に神経をとって差し歯にしていた歯が、虫歯が歯根の中に進行してしまい差し歯が取れてしまった状態での来院でした。
その歯は虫歯が進行してはいましたが、本人からできるだけ抜かない治療のリクエストもあったためにまずは歯を残す方針で治療を開始いたしました。
しかし、治療途中でお仕事が忙しくなり来院が途絶えてしまいました。
来院が途絶えてから約3年ぶりに来院していただいたときにはその歯は虫歯が大きく進行して、歯根も割れていました。もう既にその歯は使える状態ではないことをご本人に伝えたところ、抜歯を余儀なく選択となりました。残念ではありましたが抜歯をおこないました。
歯が抜けた 歯がない
上の写真のように、抜歯したために歯がなくなってしまいました。
さて、ここで今後の方針についてご本人と話し合いを行い、4つの方針をご提案させてもらいました。
1.ブリッジ : 両方の歯を削ってつなげていきます。金属・セラミックなどの材質が使用できます。メリットは固定式で咬み応えがあること。デメリットは健康で虫歯もない歯を削らないといけないことなど。
2.義歯(入れ歯) : 取り外し式の歯を作ってスペースを埋めます。プラスチック・軟性プラスチック・金属・ワイヤーなどの組み合わせにより作成していきます。メリットはほとんど歯を削らなくてすむこと。デメリットは咬み応えが自分の歯に比べてあまりよくないこと
3.インプラント : 歯肉の下にある骨の中にチタン製のフィクスチャー(人工歯根)を入れてそこから土台を立ち上げて歯を作成していきます。メリットは歯を削らずにすむこと、咬み応えがしっかりしていること。デメリットは顎の骨の中に人工歯根を埋め込む手術が必要で、歯肉を貫通させて歯を作ること。
4.歯を作らない : 1本だけの欠損なので歯を作らないでメンテナンスで現状維持をしながら経過観察していく。メリットは治療にお金も時間もかからず、歯も骨も削らずにすむこと。デメリットは長期的に上の歯が伸びてきたり下の歯が歯のないほうに横に倒れてきたりしてしまう可能性があし、そうなった場合その歯の寿命が短くなってしまうこと。
(そのほかにもそれぞれメリットデメリットはありますが主なものだけを記載させていただきました。院内では下記のような比較表や模型・写真等を使ってご説明しています。)
ブリッジと入れ歯とインプラント
ここでご本人は非常に悩まれ少し時間がほしいとのことでした。もちろん、どれを選択してもメリットとデメリットがあるため悩まれて当然だと思います。

そこで悩んでいる期間を使って、他の歯も同じ運命をたどらないように虫歯や歯周病の治療を行い、治療後は定期メンテナンスを継続して歯の健康を守っていました。
そのため治療終了してから今のところは歯のトラブルはありません。

むし歯や歯周病の治療期間中はなくなった歯のところについて、いろいろなお話や悩みを聞いてご説明・解説などを随時おこなっていました。
提案させていただいてから2年半後、「インプラントをします」とのご決断をなされました。(視点を変えると逆に2年半の間、4番の「歯を作らない」ことを継続していたことにはなりますが・・・・)
インプラントとは顎の骨の中にチタンでできた人工歯根(フィクスチャー)を埋入して、それを土台として歯を作っていきます。
まずは人工歯根が埋められるだけの骨があるかどうかを調べるために、CTによる骨の検査を行いました。CT検査の結果十分な骨があったために人工歯根を埋入する計画を立てました。
骨の中に人工歯根を埋入する手術を行い歯肉を切開したところの治癒を待って経過観察を行いました。人工歯根を埋入する手術とは麻酔をした後に歯肉を切開し、顎の骨を露出させて人工歯根を埋めるためにドリルで骨に穴を掘ります。その穴に人工歯根を埋め込んで切開した歯肉を元通りに縫合して手術を終えます。人工歯根と骨が安定するために今回は3ヶ月間の期間を待つこととしました。
3ヶ月たったところでインプラントから土台を立ち上げるために歯肉の一部を切開する手術をして、土台まで作ります。その土台に合うように白い歯を作成して口のなかに装着しました。
インプラント 白い歯
インプラント術前 インプラント術前
上の写真がインプラント治療後の写真、下の写真が治療前のものです。
2本並ぶ銀歯の手前に白い歯が入りました。装着後はほとんど違和感もなく
「良く咬めて調子がいいです」
とおっしゃっていただき、ほっとしました。現在も、定期的にメンテナンスをしながら自分の歯とインプラントの歯を長く使っていけるよう、患者さん本人とわれわれ医療サイドと一緒になってがんばっていこうと思います。

ここでこの方の治療経歴から振り返って考えてみましょう!

今回はインプラント治療によって歯を回復し咬めるようになりました。不都合に感じていたことから回復できていれば、良かったと思います。
これからは毎日自分でお手入れをして、定期的にクリニックを受診してもらい、このインプラントが長く使っていけるように定期健診とメンテナンスをしていかなければなりません。
たとえば、今回の方が「インプラント」ではなく、「ブリッジ」や「入れ歯」や「歯を入れない」ということを選択したとしても、やはり治療後には定期健診とメンテナンスは必要になってきます。
8年前に受診したとき虫歯が進行したことによって差し歯が取れてそのまま放置したことによって抜歯となってしまいましたが、虫歯が進行して差し歯が取れないようにメンテナンスを行っていれば、ひょっとしたら差し歯は今でも健在していてインプラント治療は必要なかったかもしれません。
このようにむし歯や歯周病が進行してから処置を行うと、このようにいろいろな悩みが生じたり治療期間も治療費も多くかかってしまいます。

そこで

インプラント治療後(そのほかの治療後も含めて)も長持ちさせるためにメンテナンスや予防をしていかなければいけないのなら、むし歯や歯周病が進行する前に予防処置や初期の治療を行い、健康な歯の状態でメンテナンスをしていって、健康な自分の歯のままでいたほうがいいと思いませんか?
これがむし歯や歯周病を予防してメンテナンスを推奨する理由なのです。
いつでも何歳でもかまわないので、今ある自分の歯を失う前に、できるだけ早くから予防処置とメンテナンスを是非開始してください。